ソープ道入門 2

 酒? 僕はチューハイにするよ。ついでに何か食べるものを頼もうか、何にする?……うん、それにしよう。さつま揚げは僕も好物だ。
 ソープのことは何でも知りたいんだって?……僕の豊富なデータは立派なコストがかかっているのだから、ただで教えるのは何か損のような気がするなあ。
 まあ、飲めよ。
 何が聞きたい? 店の組織はどうなっているかだって? ヘルスと同じだよ。店長がいて、マネージャーがいて、ボーイがいる。別に、オーナーがいてね、オーナーは建物か土地の所有者だよ。経営は店長に任せるというのが一般的のようだ。いろいろ規制があって、金津園では、店長は岐阜市近辺に住民登録がないと警察筋に認められないと僕は聞いたことがあるよ。
 店の男の連中を見ていると、普通の営業部隊という感じで、恐いにいさんが肩怒らせているということはないね。このことは意外だった。
 オーナーは店の運営に口を出さず、店の上がりを貰うだけにしておくのが、店が警察の検挙を受けた時に自分が拘留されないための安全策らしいね。オーナーからすれば、売春防止法違反の罪は一人で背負って店を繁盛させる、腕のいい店長を雇うことが大切なことだよ。
 腕のいい店長というのは、ブティックの店であろうがソープランドであろうが同じで、仕入れの力がポイントだね。いい女を採用しないとどうしょうもないぜ。
 店長は売上が上がらないとすぐに首になるから、辞めさせられると、別の店のボーイになって、どこかの店の店長に招聘されるのを待っている男も多いよ。店長の時は威張っていて、その他大勢の一人になると寂しいもんだけれど、我慢してボーイの下働きをして声がかかるのを待つんだ。
 時々オーナーに見込まれて三十代でマネージャーから店長に昇格するのもいるけれども、店長クラスの男は定まっており、浪人しているのもおれば、店を任されているのもおり、なかなか流動的だね。
 店の男性スタッフが、店の女に手を出すのや、その店の客になるのは一応厳禁で、女と親しく喋り合うことすら禁じられることがあるらしいけれど、店長同士が仲が良いとよその店で適当に遊んでいて、遊ばせる方は入浴料をまけるぐらいはしているようだぜ。
 ボーイ達はなかなか激務で、十一時から翌日の二時頃まで、早番・遅番の分別はあるけれども長時間立ちっ放しで働くから大変だよ。
 客の送迎、呼び込みから、靴・傘などの管理、客の車の格納、飲み物の運搬など、とにかく雑用ばかりしている。客を跪いて迎え、跪いて送る。営業開始前のベッドメイクまでもが担当の仕事になることもある。給料はそんなには貰えないよ。若い衆の入れ替わりはなかなか激しいみたいだねえ。
 女にして見れば、要の仕事は自分達がするのだし、自分達の稼ぎが彼等に流れるのだから、小馬鹿にもするし、腹も立つ。頼んだ飲み物が遅れているときなど、若いボーイに厳しい叱責声を出したりするよ。
 店の男とソープ嬢が関係を持つことはよくあるか、だって?……店長クラスならともかくも、それ以下の場合はあんまり男女関係になることはないようだよ。仕事をしている時は金持ちの男ばかりが相手で、仕事の外で、貧乏で堅実な所得とも思えないボーイに眼が向くかい?
 例えば、飲み物や氷が部屋に届けられる時、女は既に裸体になっていることが多いけれども、受け取る際にバスタオルを捲いた姿は絶対見られぬよう気をつかって、ボーイの姿が廊下から見えなくなってから、ドアの側に置かれた飲み物を取るんだ。
 ソープ嬢は日頃店の男とふざけ話もしている筈だから、一つぐらい自分のヌードを見せてからかうシーンがあってもいいのにと僕はいつも思うんだけれどねえ。
 ヘルスのスタッフが女に対して結構態度が大きいのと比べれば、ソープに勤める男は店の女に腰が低いよ。
 ヘルスの男は、ゴムなしのおちんちんを無理矢理入れようとするルール違反の客や、熱中して店の外で待ち伏せをする客に対する用心棒的な役割を果たし、女からは重宝な存在で、頼られているようだ。
 ソープは、ヘルスと比べれば乱暴で危険な客に出会うことが相対的に少ないから、店の男を頼りにする必要が乏しいんだろうねえ。
 また、ソープの入店志願者は、ヘルスで働こうとする女よりもかなり少ない。売春という一線は越えたくないと思う女が多いからねえ。一方、指名で遊びに来る客の割合はソープの方がヘルスよりずーっと多い。そんなことから、ソープでは、ヘルスに比べて女の地位がボーイよりはるかに高いようだと僕は思うね。
 職場の慰安旅行で、男がソープ嬢をからかったという話は聞かないけれども、恵里亜で嬢たちが大勢でボーイをとり囲み、浴衣に手を突っ込んでおちんちんを引っ張り出して、「ちょっとこれ、私がさわってあげたのに勃っていないじゃないの。あんた、私じゃ、亢奮してくれないの? 誰々さんなら、いいのー? いやーねえ。自分で気持ちよくしてみなさいよ。ねえ、男の人のせんずりとかいうの、見せてよ。私たち勉強するから」なんて強要した話を聞いたことがあるよ。
 ん? 警察の取締り?……ソープ店は警察の手入れを受けて営業停止になることが時々あるけれども、客の方はそんなに心配することはないよ。あんたが未成年者ならばともかくも。
 十八歳未満の雇用、覚醒剤の使用、エロビデオの放映、女の強制拘束、脱税などが僕の聞いた摘発の理由だよ。これらの行為で密告をされれば、警察は手入れしない訳にはいかないからねえ。
 金津園の店の名前はよく変わるんだ。警察の手入れを受けた後や、売上不振で支配人以下のスタッフを替えた時などに、内装を新しくし、場合によっては女も総入れ替えして、店名も改めてスタートする。
 ソープ嬢も店をよく替えるよ。出る店が変われば源氏名も変わる。前の名前が気に入っているとか、前の店の常連客に判るようにしたい場合に、次の店が認めれば、「昔の名前で出ています」ということになる。
 パソコンに登録した源氏名を直さずに済むことと、名刺の流用ができることの二点から、一つの源氏名を五年ぐらいの間で二、三人が使うというのをよく見かるよ。
 せっかくパソコンを導入しても、スタッフが替わるともう使い方が判らなくて、ノートの手書き管理になってしまうケースもあるね。店長の中にはオーナーに売上をごまかしたい奴もいるから、パソコン管理は迷惑なのかもしれないねえ。現金商売だから、売上のごまかしは当たり前だと思うけれどねえ。
 女はどの店も二十人前後は登録されていて、客の入りが少ない月の平日などには、店に出ている女がほんの四人しかいないということもあるけれども、土、日曜日には十名前後が出ているよ。
 女の出勤数が足りないときは、姉妹店でやり繰りすることもある。
「今日は何人出ているんだい?」と訊くと、それは一応店の機密事項だから困った顔をするんだ。
「貴方だから言うけど、今日は四人しか出ていないの。六時間で三本よ、全員でそれだけよ。どうなっているのかしら?」などと答が返ってくるよ。
 客の入りが悪い時に、店の部屋数よりも出勤した女の人数の方が多いと、当然女は不満顔になる。
「休みの日なのに、出るように言われて、お店に来てみたら、公出の娘が私の他に二人もいるのよ。それで、全部で十三人出ているの。部屋の数は十部屋しかないのよ。しかも、今日は土日じゃないでしょ。そんなにお客が来るわけないじゃない。控え室は女だらけ。皆、『店は何を考えているのかしら!』と、ぷんぷんだわ。ひどいでしょー」なんて言うんだ。
 エイズの危険が叫ばれる前までは金津園は大変繁盛していて、女は生理中でもタンポンを入れて働くことがあったから大変だったよ。
 客に気付かれずに性交するために、紐がついていない。生理の液体や男の体液をスポンジがたっぷり吸い込んで膨れ上がると、どうにも取り出しにくくなって、女が苦労した、と聞いたことがあるね。
 友達に頼まれて海綿を取り出そうとしたんだけれど、血だらけの膣の中に指を差し込んで苦労させられてほんとにイヤだった、生臭くて吐き気がするほど気持ち悪かった、と歎いていたよ。
 ソープ嬢が一年で一番暇なのは二月で、強烈に忙しいのは当然正月とお盆の前後だ。学生が休みのことも影響があるけれど、ただでさえ客が多いのに、女の子の方は里帰りして少なくなるからね。正月やお盆ぐらいは帰らないと、親にどんな仕事をしているのかと疑われる。
 残った女の子の性器は大変だぞ。使って使って使って膣が赤剥けしてしまう。
 マイホームの風潮で、クリスマスの日などはかえって暇だよ。
 ソープ嬢の控え室は、二十歳前後から三十歳以上までの女が一緒になるから、もともと共通の話題で和気藹々となるのが難しいんだよねえ。テレビのチャンネル権なんかは当然姉さん達にあるね。
 控え室で若い娘同士で談笑しているところへ一仕事を終えたベテランが戻ると、ぷっつりと笑いが途絶えてしーんとしたりして、そんなときベテラン嬢は、自分はここにいてはいけないのかしらと思い悩むんだ。
 逆に、控え室にベテランが大勢いると、若い女はごろごろと寝ているだけになる。態度の悪い新参者が新しく入ったりすると、もっと雰囲気が崩れる。
 それでも気のあった者同士が集まると、ソープ情報誌を見ながら、皆でよその店の女の品評会をしたり、昔の雑誌の写真と比べて、どこを整形したのか探ったりして楽しんでいるんだよ。
 女は、互いに源氏名だけが名前だし、ソープに来た理由などを訊ねることも、よっぽど親しくならないとしない。指名の獲得状況を聞かれても適当に答えるだけだし、特に、実年齢は仲間から客に洩れるものだから、二十二、二十三辺りを過ぎると、まともには教えない。
 ソープ嬢によその店や仲間の噂を聞くのはほんとうに面白いねえ。「あの店では新人が来ると、パンティを下ろして皆にあそこをご開帳しないと仲間に入れて貰えないそうだから、凄い姐御が大勢いるのね」と聞いたことがあるよ。
 仲間に入れて貰えないということ以外は事実だから、それが他の店にまで伝わっているのには驚いたなぁ。
 売れない女は、指名が多い女が客に特別なことをしているのではないか、店が特別なはからいをしているのではないかと、自分が何の努力もしていないことを棚に上げて、何かと邪推するんだ。女の園にやっかみによるトラブルの種は尽きないね。
 ヘルスでもソープでも男のスタッフは何かと女の控え室に入りたがる。必ずノックをしてから入る男もいれば、いきなりドアを開ける男もいるんだ。
 ソープは風俗歴の長い女が多いから、控え室ではスカートをたくし上げて、くつろいでいる。女が大勢いれば、スタッフが入ってきても、皆平気で股を開いてパンティを丸見えにしている。
 客と会っているときは淑女のように会話をしていても、狭い部屋で大勢の女が仕事にありつくのをイライラしながら、パンティ丸出しで待っていると、およそ客に対して使わない、乱暴な、地の言葉が飛び交う。控え室の会話を聞けば、百年の恋も冷めるに違いないと思うぜ。
「おい、こらっ、邪魔だ。こんな狭いところで寝そべるなよ。一人だけでいるんじゃないぞ。け飛ばすぞ」
「だって、今の客、フェラしてたらちんぼ汁が沢山出て、私、気持ち悪かったぁ!」
「おめえ、若い女が、しけた面してちんぼ汁なんて言うなよぉ。せめて、ちん汁か、先走りと言えよぉ」
 というような柄の悪い会話だよ。
 どうしてそんなことを知っているか、って?……僕は女からそういう話を聞くのが好きなんだ。昔から僕は好奇心が旺盛だからね。
 こっちが興味深そうに聞くから、女もいろいろと教えてくれるんだぜ。恵里亜で聞いた話なんだけれどね。
 とにかく、そんなことを僕は見聞きし、ソープの女の喜怒哀楽に共感しながら風俗の世界にひたり切って楽しんでいるんだよ。こんな話を君にしていると、おまんφがしたくなるなぁ。

 どう、勝手に僕一人で喋っていて面白いかい?……君が興味があると言うならいいよ。もっと話していようか。ほんとうに興味津々の顔で聞いているんだねえ。
 僕はソープでけっこういろんな女とセックスしたことになるなぁ。金津園のソープ嬢の出身地は、僕が会った女でも随分と全国に散らばっていて、九州から北海道まで一通り分布していたよ。金津園は十八歳で働けるから好都合だと思って、遠くから岐阜まで来た娘もいたんだ。
 よそのソープ街から廻って来た女にも結構会っていて、吉原、川崎、雄琴、北陸、福原、博多、熊本、すすき野など、これも一通り相方になっているぜ。
 えっ? 感心するほどのことでもないよ。たくさんの金を消費したというだけのことさ。
 金津園の客は、むちゃくちゃなことをするとんでもない奴がいないから安心できるという話を、よそから廻って来たソープ嬢によく聞いたよ。東京や大阪の客は、女に乱暴なことをしたり横柄な態度の奴が本当に多いらしいね。中京地区の男は相対的にまじめだ。
 僕は長年金津園のソープに通っていても、SMプレイをしたり、花電車をしたり、後ろの穴を使わせてくれる女なんかには、お目にかかったことがない。皆普通のセックスだよ。
 入れ墨を彫った女には、金津園で五人ばかり逢っているんだ。どの女も皆それを後悔しているように思ったなぁ。君は女の入れ墨なんか見たことがないだろう?
 平成の今は少なくなったけれど、昭和の頃は多かったよ。今はね、客が写真で女を選ぶ時、女が背中にまで墨を入れておれば、ボーイが予め客から了解をとることが多いよ。いやがる客が多いからねえ。
 若くてなかなか優しい顔で、意外にも背中一杯に彫っているのが一人いてね、その背を見た時は僕もさすがにぎょっとしたけれど、気に留めずに相手をしていたら、女は入れ墨に驚いた客の思い出を語った。
 女の裸体の後ろ姿を見たとたんに顔がひきつってチェンジを要求した客や、そんなのはへっちゃらという態度をしていても、全く勃起ができなくなった客が幾人かいたということを朗らかに話した。
 背中一面から太股まで本格的に入れ墨が彫られているのは、僕はストリップ劇場で見なれていたけれど、その女のは、藍の単色のもので紅だの緑だのは入っていなかったから、もう一つ冴えなかった。途中で彫るのをやめたと言っていたねえ。
 墨を入れているソープ嬢は性的技巧を身につけているのが多いけれど、その女のテクニックはさほどではなかった。ペニスのマッサージが様になっていなくても、二十二ぐらいと若くて、気立てが良かったから僕は愉しめたよ。
 ソープに勤めようとする女は通常セックスを充分に経験しているんだろうけれど、新規であれば一応「素人ニューフェイス」と呼ぶことになっているよ。
 ソープランドは必ず男とセックスをするということを知らずにソープに来たという素人ニューフェイスの女の話を、僕は聞いたことがあってね、要するに、その女は、ソープランドはマットプレイのようなサービスを売り物にするファッションヘルスの豪華版と思って入ったんだね。
 その女が、初めて取った客にペニスを嵌められそうになって驚き、男の頬を思いっきり張って、「あんた、何するんよ!」と叫ぶから、男はびっくりした。ソープではセックスをするということを、女が本当に知らなかったんだ。あきれて、いろいろ説明したら、女はフロントに電話をかけて事実を確認した。
 その話をした、僕の馴染みの女の桂木が続けてこう説明したよ。
「その子、フロントに確かめて、諦めてちゃんとセックスはしたの。もう四万円ぐらいのお金を男の人に払わせて、それで、お風呂に入れてお喋りして、口か何かでイカせて、それで済むと思っていたなんて、一体何を考えていたのかしらねえ。その子、可哀相なのよ。すぐ次に客が入ったのだけど、もう、またセックスをしなきゃいけないのかと、くよくよしていたもんだから、マットで滑って転んで手の骨を折って、そのまま二ヶ月休んじゃったの。店に出ていきなりよぉ。気の毒でしょー」って。
 男とセックスをするのだということは知っていたけれど、処女のまま自分の意志で金津園に来た女の話を、僕は聞いたことがあってね。
 それを語った恵里亜の夏美という女は、「何か自棄になってソープに来ようと思ったらしいんだけど、処女でここに来るなんて、考えられない! すごいわ」と驚いていた。
 その女の破花を店の男が講習の際に実行したのか、客がしたのか、興味が湧くねえ。いずれにせよ、処女を売り物に特別料金を取り、その後数人の客は初体験のふれ込みで相手をしたそうだよ。
 二十三歳まで大切に処女を守り、惚れた男ができて、その男とだけ四回セックスをして、それから処女を捧げた男にソープに飛ばされて、その後は店でその男に有料でさせていたという女の話も聞いたことがあった。その噂話をあきれた顔つきで語る女の表情が愉快だったねえ。
 僕は、長年金津園に通っているといろんなことが観察できたよ。店長と呼ばれる男で、あまり店には出ていないのや、とにかく講習に熱心な奴がいることにも気がついた。ベンツの車を乗り回して、結構豪遊し、賭博などのいい客の男もいた。
 マネージャーやボーイはそれほど月給が多くないけれど、店長は格段に高給だと聞いたことがあるね。
 本当かどうかは知らないけれども、聞いた話では、店長の取り分が客一本につき二千円で、店の一日の平均本数が三十本として、二千円×三十本×三十日=百八十万円 が店長の歩合部分となってね、この本数は景気の良いときの数だからかなり割り引く必要があるとしても、この歩合給は大したものだね。
 金津園が最盛の頃は、店が二万円程度で調達した制服を女には五万円で支給したりして、差額は店長の懐に入ってね、指名の取れない女でもフリーの客が潤沢で、とにかく客の数が多いから、少々阿漕なことをしても女からそれほどクレームが出なかったんだ。
 そんな余禄と歩合給と固定給を足せば、月二百万円以上が店長の月収になるんだ。店長は、やくざ組織の介入に抵抗するにしても、組織と協調するにしても、どちらにしても気苦労が並のものではない。もし、店が警察に手入れされれば必ず刑事罰を受け、オーナーに累が及ばぬようにして全ての責任を負ってしまう。
 女の採用も管理もなかなか大変だよ。入店希望者がよく店を訪ねてくるけれど、デブやブスばかりで、追い返すことが多いらしい。店の女からは、手取りの少ないことの不平や、客がつかないことの愚痴ばかりを聞かされる。
 それで、オーナーが要求するノルマもなかなか厳しい。その程度の収入では割が合わないと考える店長も多いだろうね。
 現金売上だからオーナーに売上金をごまかすことは容易で、店長の不正は日常茶飯事だと想像できるね。店長やマネージャーが店の金を横領しても警察沙汰にすることはまずないから、誘惑に駆られるだろうな。
 もっとも、店の売上がどんなであろうと、オーナーには毎月定額を納付することにしておれば、売上ごまかしなんていうのは、必要がないけれどね。
 店長は、ちょっと売上が伸びないとすぐにオーナーに首にされる不安定さもあるけれど、高収入を背景に、他の店にも客として頻繁に行っている男もいるぜ。
 一番羨ましいのは、入店した新人の女に仕事の講習ができることだよね。
 新人の講習で本番行為をするものではないという掟もあるけれども、店の男が講習の際に、ついでに無事祝着至極にさせて貰うために、新米嬢にお金を払って本番までしたという話を、僕はよく耳にしたよ。
「講習とはいえ、男のあれをかちんかちんに張らせておいて、それでパンツの中にしまえというのは気の毒よ。そんなの、男の人はたまらないわよねえ。私はちゃんと最後までさせてあげたわよ」と、僕に語った女もいたね。桂木というマスターズの女だけれどね。
 それで、講習については、桂木から聞いた話が一つあってね。
 桂木がいた店の店長が替わって、新たにやってきた店長が女に、「君のマットのやり方を見せて欲しい」と言ったんだ。
 桂木は、冗談じゃない!と思ったが、店長の話では、前の店はコンドームを使わなかったけれど、その店は必ず使うことにしているので、コンドームをどこに隠しておくのかとか、つけるタイミング、装着の仕方なんかを確かめておいて、新人に講習をする時に説明ができるようにしておきたいということだった。
 サックをつけたことが男に全く判らないようにして射精させる女もいるからねえ。
 ベテランのソープ嬢なら、本来は、素っ裸になって店長に仕事の仕方のチェックを受けることはないけれど、そういう希望ならばと納得して、マットプレイの実演に応じた。
 彼女は新しい店長にインサートも射精もさせずに、それでも、正規の料金を要求した。だから、仲間には、ちゃっかりしすぎだ、とあきれられた。
 そう、僕が親しくしている女が教えてくれた。いろいろあるんだよね。
 そういえばヘルスの女で、講習を三回させられたと怒っていたのがいた。マットプレイがあるソープと違って、学習することはそれほどない筈なのに、入店して一週間の間でご丁寧にも三回も講習させられて、いずれもフェラチオで口内射精をさせたと言うんだ。
 ちょっといい女だから店長がその気になったんだろうけれど、口で抜かせて、料金も払わず、それも三回もさせて、業界のことを何も知らない素人娘であるのをいいことにうまく愉しんだものだ。
 一時期、金津園の少なからぬ数の店長が梅毒に罹ったことがあってね、素人娘の講習の際、結合を果たした成果だと女達に噂されていたよ。
 定期的に血液検査をするソープ嬢と違って、乱交を重ねて業界入りする素人は恐ろしい病気に罹っているのがいるんだ。梅毒は、初期であると、本人に自覚症状が明確に出ないことがあるから始末が悪いぜ。
 僕も、業界入り僅か二週間の二十歳ぐらいのちょっといかした女から淋病を貰ったことがある。医者にかかったけれどとにかくこっ恥ずかしくて、あのときは参った。でも、淋病は二週間で治るからいいよ。
 さあ、そろそろ帰ろうか? もう充分酔っぱらったし、君もソープ談義はあきただろう。



 また、ソープの話を聞きたいんだって?……
 君はほんとうに耳学問が好きなんだねえ。三ヶ月前にたっぷりとソープの話をしたのに。確か、女学院の慶子とか恵里亜のマイとかの、僕の思い出深い女の話をしたんだよね。……
 だけど、経験のないことというのは百聞は一見にしかずで、さっさとソープに行った方がいいんだぜ。いつでも連れていくから。
 まだ、金がないって? 余裕ができたら、本当に行くんかい?……そうか、その気になっているのか。
 さあ、乾杯。最初はとこぶしとフランクフルトを頼もうか。とこぶしって知っている?……アワビの子供みたいなやつだよ。美味しいんだ。
 僕は、女から、包茎の客に困ったという話をよく聞いた。
「仮性包茎なんだけど、とにかくくさいの。洗っても洗ってもくさいの。洗えば洗うほど白い滓が出てくるのよ。際限がなくちん滓が出てくるのよ。もう、ほんと嫌だったわ」とか、
「完全な包茎だから、おちんちんの皮をめくって洗うことができないでしょ。だから、『これでは中が綺麗に洗えないから、尺八はしませんよ』って言ってやったの。それで、ゴムをつけて指でこすって嵌めさせたら、ちっともイカないのよ。もう、いやになっちゃった。ほんと、全然イキそうにもないの。途中でベッドはやめちゃったわ。その人、大きくなってもおちんちんの皮の先っちょが寄り合わさって捻れてるのよー。あれで、おしっこが出せるのかしら?」
 なんて聞いたもんだよ。
 包茎と言ってもいろいろあるね。勃起した時にカリ首の四分の三以上の面積が自然に露出しないのを包茎とすると、客の半分以上が包茎だ、と馴染みの女から聞いたよ。そんなもんかねえ。
 別の女からは、四十以下の若い客なら七割以上が包茎だと聞いて、驚いたね。
 週刊誌なんか必ず包茎治療の広告が出ているのに、最近の若者は気にもとめないんだねえ。包茎なんてものは努力すれば治るのに、皆が被りっ放しにしている。
 昔は年長の男が若い者に、普段からちんちんの皮を剥いておけと指導したもんだけれど、最近の若者は同年者だけで集まるから、そんな学習をすることがないようだねえ。
 もっとも僕は特に人からカリ首を露出させるように教えられたわけではなく、亀頭の鍛錬と衛生のため、性教育の本で学習した通りに、高校生の時からトイレに立つ度にペニスの皮をぐいっと剥いて、剥き癖がつくようにしていた。
 剥き出していると、歩くだけでカリ首がパンツから刺激を受けて頻繁に勃起するから、それを気合いで鎮める努力をしていた。ちゃんと学生ズボンのポケットに穴を開けておいたよ。皮が戻ったことに気がつくとその度に剥き上げていた。
 本には、オナニーのやり方についても具体的に書いてあってね、親指と人差し指の二本でペニスの包皮を摘んで、剥いたり戻したりする往復運動で射精するのは、包茎解消とペニスの鍛錬の観点から大変よろしくない、性交のことを考えたら包皮を剥きっ放しにしてカリ首を掌で包むようにして揉みこするのがよい、それが性交に一番近い摩擦で、女が嫌う早漏の防止になる、そういうアドバイスだった。
 僕は童貞でもその通りに実行した。中学一年の時までは、被った皮がペニスの先でねじり合わさっていてね、そんな包茎状態だったから、オナニーは、カリのエラのところに包皮を往復させて、その通過感で快感を得ていたので、皮を根元まで剥いたままにして、アドバイスの通りにこすろうとした。
 でも、高校一年生のカリの柔肌には何せ刺激が強すぎて、ちょっとさわっただけで、ペニスから腰まで電流を流されたようにショックだった。だから、最初のうちは、全く肉面を摩擦することができないんだ。
 こんな責め苦をこらえながらオナニーするなんてとんでもないことだと思って苦労したよ。
 掌で接触面積も広く取って揉むことができる、大人の黒光りする亀頭さんにまで鍛える自信は到底ないぞ、まして、すりこぎでちんちんを叩いて鍛えるなんて!、とピンクの柔肌を眺めてため息をついていた。
 ソープ嬢から見れば、とにかく包茎は、剥いた時痛々しく赤らんでいるのが気持ち悪いし、何よりもくさいのがたまらないんだぜ。嵌頓包茎の男が腰を振る度に痛がったりすると怖くなる。
 入店して間もないソープ嬢に、ある時包茎の客がついたんだ。
 その子は、最初の実技指導で店の男や先輩の姉さんから、「男の人は、あそこを不潔にしている人も結構多いから、初めに椅子洗いでおちんちんの薄皮を剥いて、カリ首の根元の溝の部分をしっかり指で洗ってから、フェラチオをサービスするように」と聞いていたので、そのときも包皮を捲くろうとした。
 ところが、それまでに付き合った男も、店に入ってからそれまでについた幾人かの客も、皆、亀頭を容易に露出することができたから、椅子に座った目の前の若い男のちんちんの薄皮を、何の遠慮もなく力まかせに押し込んでしまった。
 すると、男は「わぁー」と悲鳴を上げ、同時に鮮血が赤い糸を引いて壁にまで迸ったから、女は仰天した。
 シャワーの湯で床に真っ赤な血の海が広がり、凄惨な光景になってしまった。女はすっかりうろたえ、店の男を呼んで、対策を相談したそうだよ。客の方は、スタッフの男が駆け込んできて悲惨だったろうねえ。
 さあ、フランクフルトのセットが出たよ。食べようよ。この細いやつがビリ辛でいいぜ。こちらの色の薄いやつはニンニクがよく利いているよ。
 ははぁ、その調子で知っていること、全部喋れ、だって? 全部話そうとしたら一ヶ月かかるぜ。
 こういう話、面白いかい?……酒、頼もうか?

 強靭な包茎の客の話を、僕は相方の女からしばしば聞いたよ。ソープ嬢はそんな客に、必ず真剣に医者に行くことを勧めるから、皆、心が優しいねえ。
 包茎ではないちんぽこを女が何と呼ぶかというと、「ずる剥け」と表現していたので、笑っちゃったなぁ。
 君はむけちんかい?……
 ズルムケという言葉は、小学生の頃、同級の悪ガキが左手の親指と人差し指で輪を作って、その中に右手の人差し指と中指の二本を差し入れ、引いても抜けない仕草をして、「にほん、はめにか、とれん、とれん、日本、アメリカ、ソ連ソ連、ずるむけ、むけちん、ずるむけだい!」と囃していたのを聞いて以来だね。
 ふとそれを思い出した時、(四年生の頃のことだから、はめるということの意味は何となく知っていても「ずるむけ、むけちん」の意味は多分判っていなかっただろう、でも、こんなことをよく思い出せたな)と僕はにやりとしたよ。
 ところが、この間、ふと思い出してねえ。四年生の頃、もう一つ馬鹿な戯れ歌を遊び仲間と一緒に囃していたんだよ。
 どういうのかというと、
「♪山が火事だ。ししがほえる。猿が、ちんぼ剥いて、キャッキャッキャッ!♪」というやつなんだ。
 変な歌だろう?……ししは、イノシシのことだろう。
 だから、ちんちんが剥けるということは、そんなガキの頃でも理解していたのかもしれないなあ。でも、実際にちんちんの皮をひん剥いたのは六年生になってからだった。
 包茎の男に困ってしまうのはヘルスの女も同じだよねえ。
 そんな男にはコンドームを使って尺八をするんだけれども、部屋にゴムを常備しておくと、その筋から本番をしているのかと疑われてしまう。
 それで、ヘルスではゴムが必要になると、女がフロントに電話して、ボーイに部屋まで届けて貰うんだ。知っているかい?……
 客の方は、女がゴムを請求するのを聞いたら、ちんちんが縮こまってしまうのではないかなぁ。
 包茎は治療できるけれど、医者が直せないのがデカマラなんだよねえ。デカマラには、女は困ってしまうよ。
 日本人でも、ときどき二握りでお釣りがあるのがいる。それで、太さが幼児の腕ほどもあれば、どうしようもない。長年ソープで働くと、巨根過ぎてインサートを断ることを、誰でも一度は経験しているから面白いねえ。
 そんな男はどこの店に行っても女に手でちんちんをこすられて我慢するだけだから、かわいそうなもんだね。まだトルコ風呂と呼ばれていた頃には、そういう客を受け入れることができる巨大な穴のベテラン姐さんが何人もいたそうだよ。
 服を脱いだら女の下着を着けていて、「僕にはこういう趣味があるの。笑わないでね」と言った男や、部屋に入るなり鞄からセーラー服を取り出して、「済みませんが、これを着て貰えないですか」と頼んだ男の類の話を、僕はよく聞いたぜ。
 一通りプレイが終わって服を着ようかという段になったら、「僕、浣腸をして貰いたいんですが」と求めた男がいてね、桂木という女が一旦は断ると、「道具は持って来ているから、お姉さんに浣腸液を入れて貰うだけでいいんです。おとなしく部屋を出た後で、自分で店のトイレで出しますから迷惑はかけません」と、くどくど頼むんだ。
 しょうがないので、桂木は男が取り出した器具で協力してやったけれども、桂木が「おとなしく自分で店のトイレで出しますからと言うのが面白いでしょ」と、愉快がっていた。
 ソープに来る回数がそれほど多くない男は、ソープ嬢に服を脱ぐように求められない限り、会ってしばらくは服を着たまま雑談をするのが多いよ。飢えて焦っているように見られるのがいやなんだろうねえ。
 いかにも遊び人の男で、女が「服を!」と言っても、「まだいいよ、このままで。君はとっても綺麗だから、少しお話しようよ」と返して、気取った会話をされると、女は、(何よ、格好つけてぇ!、どうせ、やりに来たくせに)と思うんだぜ。
 僕は、部屋に入ると、いつもさっさと服を脱いで裸になるので、初対面の女は僕がソープに来なれていると判断するんだね。それを指摘した女が何人かいたよ。
 初会で、僕が部屋に入るなりすぐに服を脱ぐと、それを、「すぐに裸になっちゃって、ムードがないわねえ」とか、「貴方、そんなに焦らないでよぉ」などと咎める女や、たしなめる言い方はしないけれど、自分はなかなか裸にならずにお喋りを続けるソープ嬢は、大概、サービスが悪かったぜ。
 若い男で、エロビデオで見たセックスが通常のやり方だと思って、肉壷の中で発射せず、胸や顔にかけて終えるものと本気で思っているのがいるんだ。顔射をされたり、されかけた話を僕はよく耳にしたよ。
 頃良いところで突然ちんちんを抜いて顔射されかけたので「中で出して」と言ったら、「えっ、中で出していいの?」と驚かれたり、いきなり予告もなしに顔射をされて怒ったら、性交は顔射をするものだと本気で思い込んでいた男がいた。勿論、これは金津園がコンドームを使いだす前の話だよ。
 男が腰を使っていて、女は普通眼を閉じているので、早く終わらないかなと思って他事を考えている時に、さっと顔射をやられたら避けられないことがある。
 それで、ザーメンが眼の中に入ったり頭髪についたら堪らないよ。特に、髪は洗わねばならないとなると、次の客が取れなくなるから、腹が立つことだろうさ。
 同年代の若い客は、ソープ嬢は好みではないことが多いようだねえ。やはり女からは男が子供に見えるし、セックスのことをよく知らないのに背伸びをしたり、がつがつしていたり、偉ぶっていたりするから。
 一生懸命にお金を貯めてやって来たという感じで、よれよれの千円札の束をまじえて支払う若い男なんかは、女は微笑ましく思ったりするよ。
 男が見苦しい身形をして、競馬で当てたなどと誇ったり、いろんな女に入るのが楽しみで、特定の女どころか特定の店に好んで入る遊び方もしていない、と言ったりすると、再度指名で来ることは期待できないから、女の応対もぞんざいになり、股を貸すだけの気持ちになるんだよねえ。
 長くこの仕事をやっている女ほど客が判別できるから、適当に相手すればいいと思えば、そのようにあしらうし、逆に、好感が持てる男で、次は指名で来そうだと判断すれば、それなりの愛想も振る舞い、目一杯特技も繰り出すよ。当然だろう?
 だから、この遊びの基本は、やたらとっかえひっかえいろんな女と遊ぶのではなく、特定の女に継続して会うことと、きちんとした清潔な身形をしてスマートに遊び、ちゃんとした一人前の女性と扱って相手をすることだろうと僕は思うよ。
 ソープ嬢をまるで奴隷か器具のように扱った客の話を聞くと、本当に情けない男もいるものだと思う。
 ストリップ劇場の客は気の弱そうな男が多いような感じがするけれど、ソープランドに通う男はどんなタイプが多いのかと思うことがあるんだ。
 僕は、ソープの常連客は、傾向としては、ストリップの客よりは男性的だけれども、女にもてなくて、性に関する道徳心が欠けていて、性的好奇心だけは強い奴なのだろうと考えていた。
 まわりを見渡しても、ソープ通いをする男は殆どいないから、ソープ通いをする男は、ソープ嬢になる女と同様、やはり特異な人間ではないかと考えていたよ。
 僕は会った女に、「貴女が客として会う男達は、普通の男とは違う限られた層の男性なんだよ。だから貴女達は、言わば、ちょっと毛色の違う男だけと毎日会っていることになる。ソープに来る男の共通項を考えてごらん」と言ったことがあるんだ。
 だけど、長年ソープに通うと、女にもてそうもない、さえない男ばかりが来ているのでもないから、性欲や異性への憧れとか好奇心が多いか少ないか、それが支払う金銭に見合うと考えるのか見合わないと考えるのかの違いが、金津園に来る男と全く来ない男との違いなのではないかと思うようになったね。
 金津園のようなところに絶対に来ない男は、道徳的に非常に堅いとか、病気を警戒して君子危うきに近よらずと思っているのだろうけれど、女が恥ずかしそうな顔でショーツを脱ぐことがないからまるで興が湧かないと思っている男もいるんだろうねえ。
 確かに、風俗の女が恥じらいを浮かべて裸になるなんてことは全くないからねえ。
 でも、僕なんかは、女が恥ずかしそうに服を脱ぐよりも、堂々と服を脱ぎ、素っ裸で部屋の中を闊歩して、ベッドでは、ガバッと股を開いて、私のおまんφ舐めて!というムードの女の方がずーっといいんだなぁ。
 だけど、僕は本当にソープの女が好きなんだよねえ。
 大勢の男と寝ている女に、貴方だけは別格よ、と好感を持たれるのが、僕の趣味なんだ。娼婦を形容して、ロボットのようなとよく言うけれど、確かに、人形を抱くような気分の、どうしょうもない女に当たったことだってある。でも、僕はそんな経験は少なくて、まず女をロボットのようにはさせないぜ。
 女をその気にさせる話術とムードを僕は発揮できるんだ。
 ソープ嬢も彼氏がいる場合だってあるだろう?
 セックス自体は店で嫌というほど充足できるから、心の安らぎが欲しくってボーイフレンドをつくるんだろうけれど、そういう女に、彼氏はセックスを上手にしてくれるのかと訊くと、首を横に振るよ。
 女の肝心な部分にまともに愛撫をしてないならば、彼氏よりも僕の方がその女のおまんφの形をはっきり思い描くことができるんだろうなと思うと、愉快になるねえ。

 暑い日はアルコールがうまいねえ。
 このとこぶしというやつ、美味しいだろう?……繁盛している魚屋ならば時々置いてあるぜ。こりヌメヌメした表皮が、亢奮して濡れて開いた小陰唇の内側のすべすべの皮膚を思いださせるねえ。
 ロールキャベツなんか、どうだい? ここのはねえ、スープも中の具も美味しいし、煮染め具合がいいんだよ。具は、挽肉やベーコンや木耳やらいろいろ入っていて、おいしいことを保証する。そこらのおでん屋のロールキャベツとはものが違うぜ。
 丸めたキャベツの葉の真ん中の、ふくらんだところの形は、クリトリスの付け根を思い出させるなぁ。ロールしてあるから、女の丘のようだ。医学的には陰核茎部と言うんだけれど、二センチぐらいの短い女もいれば、六センチ以上あるような、長い山脈の形をした女もいるねえ。
 僕が継続して通った女の話だって?……半年から二年程度通ったソープ嬢について話そうか。
 金津園に通い始めた十三年前の頃、入浴時間が七十五分のパールヒルトンという店が気に入ってよく入った。料金が二万八千円で、それほど負担な金額ではなかったんだ。
 店の仲間に姐御と呼ばれていた、豊満な肉体のマリアという名の女と、その一の子分の痩せたラムという名の女の常連になっていてね。二人とも、パールヒルトンにフリーで入って相方になり、初対面ですっかり気が合って通うことになった。
 マリアは二十五、ラムは二十三歳、そんな年齢だったよ。二人とも僕より背が高かった。
 マリアは大粒の眼が目立つなかなかの美人で、女ながらも豪放なところがあってね、背が高く、太股はむっちりしていて、バストも豊かだ。肩と腰は幅広でもウエストがはっきり括れていた。とにかく豪快な体型で肉感的だったんだ。姐御と呼ばれるだけあってからっとした性格で、パールヒルトンの女達皆に好かれていた。
 ラムは額が狭くて頬の長さが目立ち、僕はさほど器量良しとは思わなかったけれども、切れ目に細面の、大層女らしい顔をして、同業の女には綺麗だと言われていた。猥褻な用語や、下品な言葉がラムの口から出ることは殆どなく、ソープ嬢にしては上品な雰囲気があった。背が高いからプロポーションは優美だし、うち解けた会話と大胆な愛撫とで僕を愉しませたよ。そのラムはマリアを慕っていた。
 その取り合わせを面白く思って、交互に通ったんだ。特に、別嬪のマリアの気質が好きでよく通った。この二人が、ソープ遊びなんぞはお金の割にはつまらないものだと思わせなかったから、その後僕は金津園に通い続けることになった。
 本当に二人は対照的だったよ。性格も体型も秘部の形と色も。
 東京出身のマリアは肌の色が濃く、僕が攻め始めると息も脇も陰部も仄かに匂ったけれど、いや、おまんφのにおいは強かったかな、岐阜市近辺の出のラムは、陰裂の辺りの色が薄く、どれだけ口唇愛撫しても内部から何も滲み出るものがなくて、殆ど無味無臭だった。
 マリアは僕と友達のような雰囲気で喋っていた。ラムの方は「お客さんには恋人ムードでお相手するのが、私のモットーなの」と言うぐらいだから、ムーディな話し方をした。予約して逢うと嬉しそうな顔で迎えるから、僕は結構その気になっていたよ。
 マリアは店の女を僕に勧めたりした。ラムは仲間の噂話すらしなかったね。ラムはよがり声が殆どなかったけれど、マリアの淫声は吠えるように豪快に響いて、こちらが恥ずかしくなってしまうぐらいなんだ。
 マリアもラムも僕には心安く何もかも自由にさせたよ。特に姐御の方は、大きなクッションの枕に背中で寄りかかり、頭は壁にもたれて上体を持ち上げた格好で、淫らに股を開いていた。
 好きなように舐めさせ、弄らせている僕の動作を盗み見しながら、両手で僕の髪の毛を揉みくちゃにして唸った。びしょぬれで、ビクンビクンとふるえて、とにかく性的反応が奔放で、面白かった。
 しかし、よがり声があんまりやかましいから、すぐ隣のフロントに聞こえやしないかとはらはらしたよ。
 とても愛撫のし甲斐があるから、マリアが、常連で通う初めての女になったんだ。
 掛け布団のない丸裸のベッドの端で、マリアが素っ裸になって股を逆さWの字にしているところに、こちらも丸裸のまま腹這いになって、恥毛の下の微妙な一点にひたすらしゃぶりつくから、その姿を想像すると何やらおかしかった。
 だから、僕は、昔の遊郭のように、掛け布団の中にもぐり込み、腰巻きの中に顔を突っ込んで密かにクンニリングスをするというのをやってみたいと思ったこともあったねえ。
 掛け布団で躯が暑くなり、頬にすれる腰巻きもうるさくて、足で布団をけっ飛ばすと、夜具の中によどんだ生臭い匂いが霧散してスカッとする。同時に腰巻きをはね上げると、膝を立てた女の白い内腿と黒々と広がった恥毛が現れてハッとし、同時に躯の火照りが部屋の空気でスーッと静められる。そんなセックスをたまにはしてみたい。
 そう思うこともあるけれど、やっぱり僕は、本質的には互いが素っ裸になってかかるのが好みなのかなぁ。
 それで、マリアのおまんφの、着色が見事な二つの肉片は、全体に長く分厚い。肉片のフワッと突出しているところが左右で位置が違い、稜線が黒褐色に変色して、何とも猥褻感に満ちていた。ポッテリした扉に囲まれた陰裂は実に縦長で、覗き込むと吸い込まれそうな迫力があったねえ。
 乳首のまん丸の変色地帯がとても大きくて、クリトリスも指先のように育っている。割れ目が人間くさく匂って、全体に絵に描いたように猥褻なんだ。股を開かせてクリトリスを弄うと、マリアは喘いで濡れそぼち、躯を紅潮させて、いつまでも僕に愛撫を許した。
 よがる顔をちらっと眺めながら長々とクンニリングスする愉しみを、僕はマリアによって覚えたよ。
 マリアの大柄の体躯をたたませて屈曲位で抽送し、豊かな太股の間の、赤黒い鳥居の間を灼熱のペニスがお百度参りするのを見ていると、僕は何か原始の本能の世界に身を委ねているような気がしたんだ。
 マリアはあまり物事にこだわらない気質で、性技をするというよりは性技を誘導するような雰囲気があった。一方、ラムは愛撫の技をかなり見事に繰り出してね、フェラチオが上手かった。ラムがペニスを口に含んで、細面の顔の痩せた頬を引き込ませたり、上下に振ったりするのは、僕の欲望をかき立てたよ。
 勿論僕も、優しい恥毛が愛らしく生えているあそこをいつも熱烈な前戯で攻めたけれど、ラムは愛液を殆ど出さなかった。クリトリスの愛撫を長い時間僕に自由にさせるけれども、ラムは秘めやかな反応が僅かにあるだけで、イッているのかどうかは判らなかったねえ。
 ラムのラビアは開いて大陰唇に張りついたような形をしていてね、いつもは閉じているけれども、クンニリングスをすると開きっぱなしになった。
 ラビアの先の方は色がはっきり濃くなっていることが多いけれど、ラムの場合は、それほど稜線が変色せず全体が一様にくすんだ肉色になっていて、要するに、二つの肉片は焦げ茶ではなくて薄茶色で、左右とも内側に横皺がいくつか入っているのが面白いんだよ。
 奇妙なことに、ピンク色の突起に丹念に舌と唇を這わせても唾液以外の濡れはないから、着色の薄い扉と、おしっこの穴が真ん中にぽつんと開いたピンク色の肉の壁が白々とした感じなんだ。
 マリアがストレートの黒髪なのと違って、ラムは枝毛の多い弱々しい髪で、茶色っぽかった。マリアが丸みを帯びた頬にぷっくりした唇をしてるのに対して、ラムは縦皺が眼につく鱈子唇で、頬骨が張っていた。
 ラムは躯の曲線も目立たず、容姿は僕の好みから外れていたけれど、抽送されているときの、全体になよなよとした女らしい仕草が好ましかった。
 痩せたラムの短い谷間に腰を送ると、恥骨が当たって痛いから、いつも僕は、最初に勢いよく突きを入れると「恥骨と恥骨がガッツンコ!」と声をかけておかしがった。
 ヌメヌメした肉襞でちんちんをくるまれているという感じのマリアのおまんφと、ちんちんを膣道の壁にごしごしこすりつけている感じがするラムのおまんφと、二つの味比べをして面白かったねえ。
 二人の肉体で、僕は性の技を強化したんだよ。

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