ゴム着で初めての通い

 私は昭和58年から金津園で遊ぶようになったが、平成4年までここでゴム着セックスをしたことがなかった。平成4年に金津園の店が防具を用いることと決めてからも、私は殆どゴム着セックスをしていない。
 ただ、ゴム着で通った嬢が2人だけいた。2人とも実に個性的な女で、私は興味深く観察していた。その後この2人を凌ぐ変わった個性の女には出会ったことがなかった。
 私は昔から終始一貫して生のセックスでなければ金輪際いやだ。ただ、例外が2人だけある。この2人はどちらかと言えば平凡な器量だった。その頃通っていた嬢でNSでしていたのが何人もいた(基本的には私に対してだけ生)が、ゴム着で、並の器量でも、立派な魅力があったからこそ通った。
 平成5年に入浴した恵里亜のミユキがゴム着でも通った初めての嬢だった。
 ミユキは写真では目がどんよりとしていて冴えない顔立ちだった。でも、大柄で、なかなか色白の感じで写っていたので入浴することにした。
 会うと、ミユキは肌が美しく、背も高くて、惚れ惚れするような曲線美の肉体だった。しかし、見ようによっては23歳のわりに小母さん顔をしていた。でも、顎が優美に尖って顔の輪郭が良い。口元にお色気があり、眼を見ると優しそうな内気な感じで、それで時々お茶目な顔をして愛嬌をふりまくので、私は面白そうな女だと思った。
 ミユキの愛嬌につられて、私も軽口を飛ばして下ネタを連発したら、結構猥褻なことを堂々と口に出して応対した。淫らなことは何もかもわきまえている様子だ。福原、吉原と回って、金津園に来て、恵里亜に出てまだ半年なの……と説明しながら、恥ずかしそうに服を脱ぎ、品を作って微笑んだ。脱いだパンティをたたむ仕草もどことなくお嬢さんぽい。
 その雰囲気が、かなり大胆な色柄の下着をつけて、いささか下卑た感じの眼をしているのと合わないし、セックスの用語をさらっと口に出して、ソープ歴が長いこととそぐわないから、私は、おやっ?と思った。
(こいつ、すれっからしなのに純情なふりをする演技派かなぁ。若いのに風俗経験は多いし、パンティは普通のソープ嬢がつけないような、グリーンが基調の鮮やかな柄物を選んでいるのに、恥じらった顔をして気を惹くようなことを言うから。それで、部屋はえらく暗くしているし)
 そう考えながら、椅子洗いの準備をしているミユキの横顔を眺めていたら、ミユキが話しかけた。
「私の眼って、本当に垂れているでしょ。嫌なの。眼がくっきりしている娘が羨ましいわぁ」
「大抵の男は垂れ目よりは切れ上がった目の方が好みだけれど、別に、貴女の眼は垂れ過ぎてはいないよ。優しい眼だ。君は顔の輪郭と顎の線がとっても女らしいし、肌が白いのがとてもいいなぁ。スタイルもこんなに良くて、それで肌が白いから素晴らしいよ。僕は最近は色白の娘に全く会ったことがなかったもん。金津園ってどういう訳か色の白い女は本当に少ないぜ。だけど、君はこんなに綺麗な肌をしていて、バストがとても形が良くって、立派なプロポーションをしているのに、こうまで部屋の明かりを落とすことはないのじゃない。素晴らしい君の肌が光らないよ。それにね、男が病気を持っていても、これじゃあ見落としてしまうよ」
 部屋を大層暗くする女はいたけれど、大概はマットプレイが済んでから明かりを一段と落とすのであって、最初から暗いのは少なかった。ミユキはきっと顔の鼻から上の部分に相当コンプレックスを持っているのだろうと想像した。
 私の股間を手なれた手つきで洗うのも、マットプレイのためローション液を仕込む姿も、仕草に女っぽさが漂い、とても妖艶な趣があった。
 若さがあまり感じられない一重瞼のどんよりとした目元さえ気にしなければ、面長で色白の顔も、形良い顎の線も、すっきりと前に突き出たバストの線も、柔らかそうな腰の曲線も、どこを取っても男心をそそるものに違いないと思った。
 ミユキが横向きで片膝立ちになって、シャワーで躯を流しているのを眺めると、上体をまっすぐ立て、腋を締めて、伏し目で小首を傾げて、首筋、胸、下半身を流すその姿がちゃかちゃかした動作ではなく、とても優雅でお色気があった。
 ソープの女がシャワーで局部を流すときは、横向きになるにせよ背を向けるにせよ、棒立ちで少し股を開いてするか、蹲踞のようなしゃがんだ後ろ姿が普通で、私は、片膝立ちの艶かしい横向きのポーズで腋や股間を洗浄しているのを殆ど見た記憶がなかった。
 横顔だと垂れ眼の小母さん顔が目立たない、と思いながら腋から太腿を伝う湯の流れを見ていた。
 マットを始めると、ミユキはペニスのさわり方をよく心得ていた。
「僕にはこうして欲しいんだよ」
 私はペニスを刺激する手の使い方や強い愛撫を継続させることについて希望を言った。
「こういうのが貴方の好みなのね」
 ミユキはそう呟いて、まかして!という顔をした。
 白い柔らかい躯を寄せて、口と両手をフルに使い、私好みの濃厚な愛撫を続けた。艶やかな餅肌の肉体のどこかを私の躯にすり合わせながら、カリ首を強く吸うかこすり立てるか、どちらかの愛撫をきっちりとしたのだ。
 休憩となって、私はミユキと会話しながら美点を判定した。
 女の器量を判定するとき、声の質も重要な要素としていた。顔立ちが良くても、喋る声が女らしくないのは全く評価できなかった。ミユキは、声の質、顎の線、頬の肌、白磁のような喉、バストの形、曲線が美しいヒップラインがなかなか良いものだと思った。
 そろそろベッドプレイというところで、ミユキが部屋を暗くしていいかと訊いた。
 私が逆に照度を上げるように頼んだら、ミユキは少しだけ強めた。
「私、今までこんなに明るくしたことはないのよ」
 逡巡の顔だったが、それでも部屋はまだ充分に暗かった。もっと明るくするように求めると「駄目っ!」と返ってきた。
 ベッドに横になるように誘うミユキに「君が先に寝てよ」と頼むと困った顔をした。それまでの奔放な態度からすれば、愛撫されるのは迷惑だと言わんばかりの顔つきが、私は心外だった。
「僕はねえ、マグロ男になるのは嫌なの。マットでは上手にして貰うのが好きで、さっきもマットで、貴女にいろいろと注文したけど、ベッドではそればっかりじゃ嬉しくないんだよ。僕のベッドは、結構、女の子に褒められるからさぁ」
 そう説明すると、ミユキはにっこりして了解したという表情になった。
 私はミユキに寄り添い、胸元から愛撫を始めた。
 すると、ミユキの仕草がやけに作ったように女らしかった。乳房に唇を這わすと、ミユキは顔を傾け、右手で優しく私の背中や脇腹をさすり、男の気分を昂める仕草が板についている。
 惚れた男の愛撫に応えているような応答をするソープ嬢がなかなかいないから、いいぞ!と思うべきか、初対面なのにわざとらしくてイヤだと思うべきか悩ましい。
 ミユキが眼を瞑って笑みを浮かべ、顎をゆっくり揺らしているから、100%の演技ではないようだ、と思いながら唇の愛撫を続けた。
 それで、ミユキの股ぐらに入ってクンニリングスを始めると、ミユキは腰をゆるやかに揺すって色っぽい吐息をあげ、「素敵!」などと呟いている。
 初めての相手なのに快楽の表現がはっきりしていることに私が戸惑っていると、ミユキが、「あぁ、うーん、××××う」と何か言っている。何かやり方に注文でもあるのかな?と思っても、ミユキの柔らかな太腿が両耳に密着して、言葉がなかなか聞き取れない。
 しばらくしてようやくわかった。
「もう、あぁ、溶けちゃいそう。そう、溶けちゃいそう」と文学的な睦言というかよがり声だ。私はそんな文字数の多い述語の淫声を聞いたことがなかった。
(反応もやけに早いし、こんなことを言って、これは演技派だなぁ! 気持ちがいいことをそんなに言葉や身ぶりで表してばかりいたら、疲れてしまうぞ。畜生、こいつは絶対に意識的によがっている!)
 そう思いながら一心不乱にクリトリスに唇を押し当てた。
 肉厚のラビアが左右対称で形良い。割れ目のまわりの着色が薄く、クリトリスも薄皮さえめくればよく突出している。恥毛は柔らかく艶やかだった。その恥毛を押さえつけてクリトリスを縦に横に弄い続けた。
「私にもおちんちん、ちょうだい」
 ミユキが切なそうに叫んだ。
(この女は、前戯なんぞはノーサンキューで、早く勃起させて終わらせたいのかな。随分気持ち良さそうにしているけど、やっぱりこれは演技なのかな。演技だとしたらこれは相当真に迫っているぞ)
 そう勘ぐりながら添臥の形で69の体位になろうとすると、ミユキが顔を上気させて両手で私の腰を招き寄せる仕草をした。私が腰を寄せると、飛びつくように陰毛を掌で押さえ、ペニスが先走り液でべとついているのを委細かまわずにしゃぶりついた。
 私はミユキの商売とは思えないような積極さに演技の疑いを消し、気持ちが一気に昂まった。ミユキを横抱きして再びクリトリスにしゃぶりついた。
 するとミユキは左手で私の尻を抱え、ペニスを一段と奥深く吸い込み、右手で陰嚢をさすった。互いに右腋を下にして横に寝ているから2人とも口が動かしやすいし、手も使える。
 私は両手で割れ目を開き、突き出した舌をクリトリスに当てたまま、縦横無尽に首を振ったり、クリトリスの吸い込みと吐き出しを交互に続ける得意の愛撫をした。
 ミユキもペニスをがっちり咥えたまま首を前後に振る。カリ首を吸い取らんばかりの強烈なバキュームで、卑猥な音がやけに響いた。
 フェラチオしているから声がくぐもっているが、明瞭な喘ぎ声を合間に上げ、時には変化して玉吸いに移る。更に、掌でぎゅっぎゅっと厳しくカリ首を揉み立てながら、首を伸ばして金的の裏面にべたりと舌を当て、そのまま会陰まで舐めた。
 手を替え品を替えいろんな愛撫を心がけて、しかも、刺激が継続的で熱烈だ。熱い鼻息を股間の後ろ側に感じた。ずーっと片足を上げ続けてクンニリングスに協力しているのが嬉しいし、猥褻きわまりない。
(初対面でこんなふうにするなんて、すごい女だぜ)
 私は脂汗を流すほどの気合いで真剣に吐精をこらえ、クリトリスを激しく舐めこすりした。
 どれぐらい濡れているのか確めようと、唇を離し、あらためて適度な距離を置いて全貌を覗き見たら、何度見ても男には実に不思議な形状のその部分は、ラビアが肉厚でピンク色に近かった。アナルもやはり茶色がかったピンク色の、黒ずんでいないもので、その辺り一帯が見事に愛液にまみれて光っていた。
「おい、びしょ濡れだよ」
「気持ちいいもん!」
(いい匂いだぜ。肌の白い女はやはりラビアやお尻の穴の着色が薄いなぁ! こんなに濡らしているなら、これは、是非イッて貰わなくちゃ。熱烈なサービスをしていると達しにくくなるから、この女には快感にひたることだけに集中して貰おう。それに、こんなに強く刺激されたら、口内発射になりかねない)
 そう考え、ミユキの顔前から腰を離した。ペニスは湯気を立てて赤らみ、痛々しいほどだ。
 私は仰向けになったミユキの脚の間に腹這いになって上体を納めた。肘に触れる内腿が白くて柔らかい。下腹の肌も綺麗で、恥毛が優しそうだ。
(この手のタイプはクリ舐めでイクはずだ。イッてもらいたい)
 両手の親指で包皮を引き上げて、クンニリングスに専念した。陰核包皮が深くて舐めにくい、と思いながら、小突起をねぶりまくった。
 すると、ミユキは腰を蠢かせながら、相変わらず、「もう、あぁ、溶けちゃいそう。そう、溶けちゃいそう。あぁ、飛んじゃう」と、文学的によがり続けた。
 これがミユキの自然なよがり声なんだなと納得した頃に、ミユキは一段と喘ぎ声を高めた。
「あぁ、飛んじゃいそう、……そう、そう、そう、イッちゃいそう!」
 背を反らせて綺麗な顎を突き出し、乱れ髪を揺すって、実に魅力的な表情で絶頂に至った。
 ミユキが脚を突っ張らせるように閉じてアクメの余韻にひたっているから、私は上体を起こし、表情を覗き込んだ。その上気した顔は眼を瞑っているので垂れ眼が目立たなかった。
 よがり声がとても女っぽい声で、ぐしょぐしょに濡れた性器はメスの匂いが芬々としている。イッた顔が何とも麗しく、ペニスの吸い込みは狂おしいほど情熱的で、そのような女にはお目にかかったことがない。
 私はミユキの一風変わった魅力に惹きつけられ、完璧に欲情した。単なる喘ぎ声や間投詞や形容詞の単語ではなくて、動詞のよがり声のオンパレードであることと、顔を激しく揺すり続ける際限のないフェラチオに感嘆したのだ。
 ミユキがコンドームを取りだしたので、久し振りにそれをつけて挿入した。亢奮がはなはだしいから、ミユキの肉壷がとてもよく締まっている中でペニスがグイグイとこすれて快い。ゴムの被膜がほどよく射精を遅らせ、汗まみれの実に心地良い抽送になった。
 上体を密着させてキスを求めたら、ミユキはグイッと私の胸を抱え込み、舌を丸ごと送り出して濃密な応え方をした。
 終わってからの会話を明瞭に記憶している。
「僕が舐め舐めをしているときに相舐めを女の子から求められたのは、そんなに経験ないぜ。それも、あんなに厳しく攻めてくれるから、とっても良かったよ。がんがん吸うんだもん。貴女には驚いた。すごかったよ」
「私ね、攻められている最中には、私も男の人のあそこをさわっていたいの」
「へーぇ、ぎゅっぎゅっと激しくこすってくれるからとても気持ち良かったよ。君も良かったかい?」
「うん、上手に攻めてくれるんだもの。じっくりと丹念に」
「君はとても助平なんだぁ。そうだろう。本当に、随分と激しいんだからぁ」
「私、この仕事の前もセックスばかりしていたの。だって、毎日でも男とセックスしたいと思っていたわ」
「セックスって本当に気持ち良いんだもんなぁ。覚醒剤なんかやるよりはよっぽど健全だよ」
「私、そんなのやったことないー。あそこを舐め舐めされるのが一番いいの。セックスしていてね、男の人が私に夢中になってくれていると感じるときが一番楽しいわ」
「でも、最初、何故貴女は先にベッドに寝るのをためらったの?」
「マットで徹底的に私に攻めさせたでしょう。だから、貴方がああいうふうに前戯するとは思えなかったもん」
 ミユキに入浴した直接のきっかけは恵里亜の馴染みの女が強く推薦したからで、面白い女を紹介してくれたものだ、とにんまりした。

 ミユキはいかにも好色そうな、それまで私が出会ったことがないタイプの女だった。
 私がどっぷり通っている女たちにミユキのことを訊くと、控え室では全く前に出てこずに他人の話をにこにこして聞いているだけで、いつも静かにしていると言う。仲間が助平話をしていてもそれに加わらず、恥ずかしそうに微笑んでいて、とても慎ましやかな風情に見せていた。
 初会の客が滅多に戻らない女は幾らでもいるけれども、ミユキは恵里亜に出て間もないのに、皆が驚き不思議がるほど初会の客の返しが良かった。
 確かにあれだけ強烈な抱擁ができれば、マグロ男でない限り誰だって夢中になるだろう。スタイルはいいし、肌はもち肌だし、積極的なディープキスもした。フェラチオするのが大好きというように音を立ててカリ首を吸われれば、少々器量が悪いのは誰だって目をつぶる。
 私はそう思って納得した。
 それまで会った女はベッドでクンニリングスを受けている間、どちらかと言えば、両手をベッドの上に投げ出すか、胸や腹の辺りに置いているようなおとなしい姿勢を続けていることが多かった。
 ミユキは私に強く抱きついたり引き寄せたりして、いつも仕草が情熱的だった。私がミユキの両脚の間に入ってクンニリングスするときは、私の肩口に掌を這わせたりした。
 ミユキのキスは激しかった。お互いに唇のまわりが唾液でべとつくような熱烈な接吻は女と親しくなれば経験することもあったが、ミユキのは歯垢から胃袋の中の空気まで吸い出すような強烈な口吸いだ。長い舌が私の口内を奔放に探り、歯茎を撫でたかと思うと私の舌に絡みつき押し合い、舌の裏側の根元の筋まで弄った。
 そこまで積極的な深い接吻をする女は殆どいなかった。
 確か昭和50年代の前半のことだろうと思うが、俳優の近藤正臣と中田喜子がテレビドラマでキスシーンを演じたのを見たことがあった。
(おやっ、随分と長い口付けをしているなぁ。なかなか激しそうだぜ)
 そう思って眺めていたら、抱き合っていた2人が離れた。
 見ると、女の唇のまわりが濡れて、離れようとする互いの唇の間を、唾液が糸を引いて懸垂線となって渡っていた。その曲線は、スタジオのライトを浴びて光りながら長く伸び、やがて切れた。
 こいつら、本気だぜ!と羨ましくて、まだそのシーンを憶えていたが、ミユキと口付けを交わしていると、ふとそんなことを思い出したりした。
 大都会の幾つかの風俗街で働いていたミユキが語る性体験と放浪の物語は、並のものではなかった。
 ミユキの話は表現力に欠けるし、青春の戸惑いとか未知への憧れとかの情緒めいたものとか、真摯な人間観察や自己内省の姿勢もないので、どんな話だったか私は憶えていないが、聞く度に、何という好色女だ!……とあきれた。
 一つ、私には忘れられない話がある。
 ミユキはクリトリスを刺激されてアクメに到達した後も、続けてそこを愛撫されると更に内股を震わせて悦び狂い、人事不省のような恍惚状態でも同時に、私のペニスを両手で揉むか、音を立てて吸いしゃぶるかして、強烈に刺激し続けた。
 そんな濃厚な69を延々と楽しめる女はなかなかいないから、私は嬉しがった。
 ある時それを褒め讃えると、ミユキは過激なことを言った。
「皆、イッた後はこそばゆいだけなのね。だけど、私はイッた後でも、連続して攻められるとすっごく気持ちが良いわ。それでね、××さんのあれをさわっていると、ずーっとばんばんに張っているでしょ。私にとても亢奮してくれているんだなと思うと、ますますうっふーんとなるの」
 そして、ミユキはソープ嬢になる前の印象深い性体験の想い出を語った。要約すると次の通りだ。
 私の知り合いですごい人がいた。その人は30歳を少し超えて、私より15歳ぐらい年上の美しい姐さんだった。その姐さんと亭主がセックスするのを見ているように言われて、側にいた。
 旦那は姐さんの全身を丁寧に愛撫することから始めた。たっぷり時間をかけて愛撫した後、秘所を吸い始めると、姐さんは壮絶なよがり声を上げ続け、この攻めも長い時間が続いた。
 次に、指3本の挿入から始まってフィストファックになった。男の手が手首まですっぽりと肉壷に入って蠢いていた。
 何ていうことをするの!と驚いたが、姐さんの身悶えはとても激しかった。部屋に響きわたる声を上げ、汗だらけになって艶艶しい髪が額や頬に張りついていた。面長の切れ目の、鼻筋の通ったスリムな体型の美人だから、その姿が女の私から見てもぞくぞくするくらい妖艶だった。
 姐さんがつん裂くような悲鳴を上げたとき、旦那は5本の指をそろりと抜いて、親指の腹でクリトリスを揉んだ。すると、蛇口が壊れたように割れ目から潮を吹き出した。それは一瞬アーチ型になった。
 恐ろしいような呼吸をしていて、あんな深いイキ方は見たことがない。
 旦那が離れてビールを飲んでいたので、姐さんに近寄って脚にちょっと触れたら、悲鳴を上げて大きく脚を振った。その反応が面白くて今度は胸の辺りをさわると、姐さんは背面飛びで躯が50cmはふっ飛んで、ものすごい形相で叫んだ。
「こそばゆいからさわっちゃ駄目!」
 ふざけて、なおも躯に手を伸ばそうとしたら、全身をばたばたさせて蹴飛ばそうとする構えで、「さわるとぶっ殺すぞ!」と怒鳴られた。
 しばらく放っておいたが、姐さんの汗だらけの裸が気になり、もういいだろうと思ってタオルを片手に近づくと、哀願する眼差しで首を振って制止された。姐さんは横向きに、胎内の赤ん坊のように膝を抱えて丸くなって、肌がシーツにさえ触れないようにしていた。
 躯に布地が触れるだけでもつらい、どうにもこそばゆい状態が続き、肉体の亢奮が完全に治まるのはかなり後になった。
 姐さんが、セックスの回数はそんなに多くないと言ったのを納得したけれど、それにしても壮絶な達し方だった。異次元の世界へ行ってしまうような深い深い絶頂だから、後がそんなにこそばゆいのね。……
 ミユキが吉原のソープ店にいたときの話も聞いた。
 店の客に、とびきりの醜男で、歳もとっている男がいた。
 その男は、見るからに気持ちが悪くなるような、歯の色が汚い、皺だらけの、どす黒い顔をした薄気味の悪い親父で、愛撫がとても上手なので、店の女の間で有名だった。
 ミユキの友達にもその男が入った。「絶対にイカされたくない、イクもんかと、私、思ってたんだけど、じわじわとむちゃくちゃ丹念に攻められて、とうとうイカされちゃった」と聞いて、だらしないなぁ、私は我慢するぞ、と思っていた。
 そのうちにミユキにもその客が来て、見たら、見事にヒヒ親父、蛙男とでも言いたくなるような薄汚い爺だった。「イカせ屋」だけあって、乱暴な態度はないけれど、言うことは卑猥なことばかりだ。
 どう見てもとり肌が立つような嫌みな奴で、こんな感じの悪い奴なら絶対にイカないぞ、と心に決めた。
 ベッドテクニック拝見!とばかりにスタートした。ところが、爺さんの唇と舌の動きは予想以上に見事で、何をどうされているのかよく判らないが、すぐに、あれれっ!という気分になった。
 唇を噛んで、感じちゃ駄目!と、何とか抑えようとしたけれど、優しくて丁寧で、何とも微妙な愛撫が休むことなく続くと、そのうちすっかりめろめろになってしまった。
「とにかく全身の愛撫で、あんなに躯が宙に浮いたのは初めてだったわ。誰にも真似のできないやり方だったわよ。ほんと、気持ち良かった」
 その陶酔を思い出しているミユキの顔が何とも淫らっぽかった。
 過激な想い出話をはにかみも見せずにするミユキは、表情になかなか乙女らしい艶やかさがあり、ベッドに上がれば、ストレートの髪を乱して、終始情熱的な相互愛撫を続けるから、本当に女を感じた。
 ミユキに語らせる私の誘導も上手なのかもしれないが、大体、そこまでいろいろとミユキが過去の体験を話した客は私だけではないかと思うと、ミユキの長所、例えば、根っからの好色であること、ミユキなりのコンプレックスから仲間の談笑に加われない弱々しさなどに感動した。
 とにかくミユキは、同性と話すより異性と話すときの方が元気がいいのだ。
 ミユキは、潮を噴いて気をやった後こそばゆくてたまらなかったあの姐さんと違って、珍しく、一度到達した後でも、僅かな休憩を挾めば、更に続けて女芯への愛撫を受け入れた。
 そんな淫欲旺盛な女に会ったことがないから、私は最初ミユキの股の間に腹這いになり、一方的で集中的なクンニリングスの愛撫攻勢で早めに気をやらせた後、いつも互いに逆向きになって側臥し、再度ミユキの股ぐらに顔を突っ込んだ。すぐに交わるのが勿体なくて、濃厚な相互愛撫を愉しむことにしていた。
 ミユキも疲れることなど気にはせず、にんまりとして片足を宙に浮かせ、今度は私にもサービスさせてね!という顔でペニスを咥えた。
 私は、ミユキが気をやった後の、湯気を立てている割れ目が放つ馥郁たる雌の匂いをかぎながら、ミユキの柔らかな内腿に頬を当ててクリトリスを吸った。
 愛液で濡れたアナルを見ながらクンニリングスをして、私も股を拡げて腰を突きだし、ミユキの頬が陰嚢に触れるぐらいの深いフェラチオを誘った。髪の毛が内腿を撫でるのが快かった。
 ミユキが金的をしゃぶりながら熱い呼気を股ぐらに吹きかけ、カリ首を逆手に握ってぐいぐいとこすり、訳の分からない声を絶え間なく出す、狂態のような相舐めをする度ににんまりとした。
 ミユキが片足を持ち上げたまま歓喜の声を上げて、私より大柄な肉体の腰をうねらせるので、私は白い尻を抱えて、スッポンのように秘園の肉の尖りに吸いつき、決してそれを逃がさないように努めた。
 私が一方的にクンニリングスをしていた時には、まだ完全な勃起状態になっていなかったペニスが、相互オーラルセックスをするとよがり汁を垂らして力みかえった。
 もう、嵌めてよ、というサインをミユキは決して出さなかった。
 私がクンニリングスに疲れてインサートしようとしない限り、快感に喘ぎながらペニスをしゃぶり続けた。私は激しい69がいつまでも味わえた。
 残り時間が気になり、口も疲れると、相互愛撫をほどほどにしてサックを着けさせた。すっきり伸びた白い足をの字に突き上げさせ、肉棒が出入りする様を眺めながら抽送した。
 腰を繰り出す度に、ミユキが普段の面相とは打って変わった恍惚の表情で濃厚なよがり声を続け、私が上体を寄せると手や脚を躯に巻きつけてくるので、毎回私は脳溢血でも起こしそうな昂揚を得ることができた。
「私は毎日セックスしてくれる男の人でないと結婚したくない」とミユキが言った。
「そんな男は滅多にいないぜ」と返すと、「絶対いる。いなきゃ、私、困るわ」と寂しそうな顔をした。
(この顔は本気だぜ)と、私はあきれた。
 私はミユキに逢う度に防具なしで性交することを冗談ぽい言い方で求めた。その度にミユキは断固拒絶した。でも、一度だけ純生のインサートを許したことがあった。
 後で私が訳を尋ねたら、「ピル抜きをしても、安全日だったし、やっぱり、生で入れられると気持ちが良いからその気になったの。生はあの時だけよ、今日も駄目、これからも駄目」と返した。
 ミユキは23歳ぐらいだが、理想の男が現れるのを期待し、落ち着いた生活が過ごせるのを待っているという様子がなかった。ミユキは一口に言えば FUCK MACHINE のような女だ。まだひたすら享楽を追い求めているように見受けられた。
 そんな蓮っ葉女だから、私は、(こいつ、もう少し真面目に人間していればいいのに)と思いながら、いつも一歩引いた気持ちでミユキを眺めていた。
 でも、一旦ベッドに上がれば、柔らかで色白の肉体が揺れて淫奔に喘ぐのを見ると、狂ったように亢奮し、性の営みに耽った。そんな時、どんよりとした小母さんくさい眼はほんの瑕瑾にすぎなかった。
 ただ何となく岐阜市に住んで、いつもほんの腰掛け程度に金津園にいる口ぶりだから、逢うと「おい、君はまだ金津園にいたのかぁ」が、私の挨拶言葉だった。
 平成5年の4月から9月までミユキに通った。器量的には満足できないから月に複数回入浴することはしなかった。そのうちにミユキは怪我をして店に出てこなくなった。かなりの重傷で、結局店に復帰しなかった。
 夜通し激しい情交をしてエクスタシーにひたった後、桜紙を股に挟んだまま男に寄りかかって死んだように寝込み、しののめの時刻に、男を目覚めさせぬようにそっと起き上がって、微笑みを浮かべて湯浴みをする、そんな感じの女だと思って私は残念がった。


 初めてシリーズとしているからここで本稿を終わるべきだが、ゴム着でも通った嬢というのが2人しかいなくて、しかも、2人目もやはり平成5年に初会をし、大変個性的で性感豊かな点においてミユキと同じなのでここに披露しよう。
 私がその頃よく入っていた店は恵里亜とマスターズだった。
 私が贔屓していたマスターズの夏木ルイが沙也加を大層嫌っていた。それで、ルイから沙也加についていろいろと聞いていた。沙也加がノーサックでしているとか、昔はSMの店で働いていたとか、アナルまで許すとかの腐しだ。私はアナルセックスをしたことがないから、沙也加がアナルを許すなら是非ともやりたかった。
 店の写真を見ると、沙也加はそこそこの器量で肥えてもいなかっていた。面長の顔に派手なアイメイクで、洒落てはいるが突飛とも言える夜の商売風のロングドレスを着て、いかにも風俗嬢らしい姿で写っていた。
 12月に私はマスターズに予約を入れて、沙也加に入浴した。
 私は沙也加が一体どんな女なのか興味津々だった。でも、切れ目で、きつそうな顔が微笑むと薄笑いしてるように見え、ルイの辛辣な沙也加評からすると、無愛想で突っ慳貪な女ではあるまいかとも思った。
 現れた沙也加は、チョコレート色のシックな柄のワンピースに大きなイヤリングとジャラジャラした腕輪をつけ、太めのネックレスで飾り立てていた。目つきも凛としていて、確かにSMの女王が似合いそうだった。盛り上げたヘアースタイルと派手な装身具も合わせ、はっとするような出で立ちだ。
 すぐに裸になるのに無理に飾り立てなくても……と思った。
 沙也加は話す雰囲気にかなり不良っぽいところがあっても、なかなか愛想が良かった。挨拶の仕方や心安く話しかけるのが、それまでに会った売れっ子のソープ嬢と同じだった。
 沙也加の個性的な装いを褒めると、沙也加は品をつくって嬉しがった。その仕草がジェスチャーも濃厚で妖艶だ。面長の顔も話し方も服装も大人びているし、いかにも婀娜っぽい。ルイから沙也加が21歳と聞いていたけれど信じられず、これは24にはなっているだろうと思った。
 服を脱ごうとしたら、沙也加は笑みを浮かべ、品を作って私の手を押さえた。
「自分独りで脱いじゃだめっ!」
 妖しく微笑んで膝立ちの格好になり、ズボンのベルトを外した。他人のベルトを前から緩めてバックルから外すのは結構やりにくいけれど、沙也加はコツがよく判っていたし、シャツのボタンを外すのも手際がよかった。
 ひざまづいた沙也加から濃い化粧の、鼻腔をくすぐる香水の匂いが漂った。
 沙也加がワイシャツをハンガーに掛けると、私は汗くさい肌着を脱ごうとした。すると、沙也加はまたシャツの縁を掴んだ私の手を押しとどめた。
「ううん、私が先!」
 嫣然と微笑ん囁き、下顎をちょっと突き出すコケティッシュな仕草をして立ち上がった。
 嬢は性器への接触やキスは大胆にしても、抱き合っていない時には無用な接触をしない傾向がある。だから、沙也加が初対面なのに2度も私の手に触れる心安げな仕草をしたことが気に入った。
 沙也加は私に背を向けると、両腕を首の後ろで重ねて長い髪とネックレスをたくし上げた。つやのある髪は腕を越えて密度濃く垂れ下がり、ずっしりとした重みがあるように思った。
 私は沙也加の襟首の和毛を眺めながら微細なホックを外し、ワンピースのファスナーをゆっくりと下ろした。すると、沙也加は肩から外したワンピースを手に持つことなく足下にストンと落とす演出をした。
 服が滑り落ちるにつれて、紫がかった赤色のブラジャーとパンティが華やかに映った。服を1枚脱げば、ソープ嬢は冬でも皆裸同然の下着姿になるから愉しい。ブラジャーとパンティの間の、胴のラインと背の肌が若々しかった。しいて物足りないところを挙げれば、肌が浅黒いのと、腿がやけに太いことだった。
 服を脱がせるのを誘導する仕草が垢抜けていて、そんな気をそそる演出をスマートにする女はNo.1になっているのが多かった、と振り返った。
 沙也加はワンピースをたたんで籠に入れてから、またにっこり笑みを浮かべて私の前に立った。
 センスのいい下着姿のセミヌードを今度は前から鑑賞した。ブラジャーに隠されていない乳房の上3分の1程度がふっくらと盛り上がり、ウエストはきれいなカーブで括れている。私は思わず賞賛の言葉をかけた。
 沙也加が微笑んで応答し、品を作ってストッキングを指さした。
 私は、女に服を脱がさせられて悦ぶ男と思われるのが癪な気がするし、靴下を巻き取るのが面倒だとは思ったけれど、無粋なことは言わずににやけた顔でストッキングに手をかけた。
 沙也加は片足をベッドの端にかけて巻き下ろしに協力した。
 私はストッキングを巻くようにして下ろし、足先から外した。丸まったものをつま先のところで摘み、さっと振って伸ばすのを、沙也加が微笑んで見ていた。
 沙也加に請われるままにブラジャーの前ホックを外してから、両手を尻に回してパンティに指をかけた。眼前に迫った乳首を眺め、左右の中指を潜らせて尻を撫でるようにして薄布を取った。
 私の顔に沙也加はしっかり視線を浴びせていた。
「脱がせ方が判っていらっしゃるのね」
 沙也加がにっこりして世辞を言った。
 私は以前に初対面のソープ嬢の下着を外した時に同じ言葉を囁かれていて、その時女は続けて言った。
「野暮な奴は、靴下は巻いて下ろしたりなんかせず、いきなり足先で引っ張って脱がそうとするし、パンティを脱がせるのにも、前から下ろそうとするの。いい歳をして、わかっていない男が多いのよねえ。本当に多いの。女は大きなお尻があるのだから、前で無理に引っ張るとゴムがゆるむのよねえ」
 沙也加に褒められて、そんなことを思い出した。
 男に下着まで脱がせる入り方をする女に会うのは久し振りだった。相手に強烈な印象を与えるからもっと多くの女がやってもいいと思うけれど、そんなに多くはいない。
 でも私は、常連客になった場合にいつもそれでは不自然だし、そんな程度のことで陶然とする男だ、と女に値踏みされていると思うと、面白くないような複雑な気持ちになる。
 沙也加は衣装も装身具も値の張りそうなものをつけていた。肌はそんなに白くなくても、滑らかで、バストがしっかり張っていた。髪が長く、ウエストが細いのは私の好むところだ。
 初対面の男に自分を印象づけようとする見事な演出と、作ったような愛想の良さが少し引っかかるけれど、態度、気立て、センスは◎、顔立ちは○、髪が茶色っぽいのだけが×だ、と思っていた。
 沙也加にそれまでの経歴を尋ねると、飲み屋で働いた後他の射精稼業は一切経験せずに、19歳でいきなりマスターズに入り、20歳を超えたところだ、と説明した。
 本当に19歳で入ったなら、店での在籍年数に合っている。ルイが、沙也加は21歳だと言ったのとほぼ合うけれど、SMの店にいたというのはどうなっているのかと思った。
「他のピンク産業を全く経験せずにソープにやって来た女に、僕は結構会ったことがあるけれど、度胸がいっただろう?」
「セックスをするだけでしょ。誰でもしていることじゃない。特別に考えるのがおかしいわ」
 擦れた言い方をして沙也加が微笑んだ。
 ルイの話が正しいとすれば、沙也加は一つ歳を若く言っているけれど、沙也加の堂々とした態度から、年齢をもっと誤魔化しているのではないかと疑った。
 初対面の会話は人気のあるホステスのように愛想が良かった。
 眼と口が大きくて、眼のラインが面長の顔のかなり上の方にあり、そのラインより下の長さが目立った。描き眉が細くくっきりと引いてあり、唇が厚いこともあって、微笑むとなかなか妖艶だ。眼から顎までの長さがある割には、足が短くて胴が長い。これまで見たことがない程度の胴長だ。
 沙也加は、私がマスターズのどんな女に入っていたのかを訊こうとはしなかった。
 ほんのちょっとした会話のつもりで、そのような質問がないことを指摘すると、沙也加は、「お客さんがうちの店の誰に今まで入っていようが、そんなことはいいじゃない!」と厳しく返した。
「私は私よ。他の人と比べられてごちゃごちゃ言われたりするのは不愉快。私に入って、他の子がどういうふうだった、あれは良かった、これは良かったなんて話されると、ほんと頭に来る。そういうのは大嫌い。お客さんが私を気に入ったら、また、指名して来てくれればいいの。店の子に、私のことを何だかんだと言われたりするのも本当にイヤ。ほっといて頂戴!と言いたくなるわ。店の娘が、他の女の子のことを何だかんだと批判して、私に相槌を求めたりすると、そんなの、ほっとけよ!と声を出したくなるの」
 お客さんという遠ざけた言い方で語気強く一気にまくし立てられ、私はたじろいだ。
(随分反応が過剰だな。気が強そうな女だ。服を脱がせる時は演技っぽい心安い態度をしていて、落差がありすぎるぜ)
 風呂の支度をする裸姿を遠目で見ると胴長で、その上、太腿が腰回りに比べて異様に太いから、スタイルはかなり見劣りする。でも、ウエストが締まっているのに腿がやけに太いのはエロチックだし、肩から尻までは綺麗な曲線で女らしい。切れ上がった眼と顔の向け方に妖艶さが漂っていて、特に、面長の顔に厚めの唇の取り合わせがセクシーに思えた。
 椅子洗いでは、沙也加の方から積極的にキスを誘った。そのことに私は痺れた。
 ソープ嬢が、初会で、会ったとたんに自分からキスを求めるのはやはり珍しい。それも、歯磨きや口ゆすぎを勧めることなくだ。しかも、ペニスを握られたままだから、気分が昂まる。
 沙也加は口が大きくて、唇も分厚いから、普通に重ねているだけでもねっとりとした接吻だ。そのふくよかな唇の間に舌を押し込むと、嫌がりもせず私の舌先の逍遥を受け入れ、応答を舌で返した。
 それで、私はすぐに気持ちがプラス指向になり、先ほど、気が強い女だな。参ったぜ!と思ったマイナス指向を抑えた。
 沙也加のマットプレイもなかなかのもので、唇を激しく使うのが特徴だ。唇を背中に押し当て、強く吸引しながら、首筋から腰の方にまでじわじわと進めた。背中の薄い皮膚が脂肪層から外れるような快いマッサージだ。
 私は肩から腰まで背骨の両側にそんなに強く吸引されたのは初めてで、気持ちいいものだと思った。でも、ペニスを握られていないのはやはりつまらないので、沙也加に、同時に指でカリ首を揉むように頼んだ。
「しっかりとこすられるのが好きなのね」
 沙也加は媚びるように声をかけ、それからはペニスから全く手を離さない。それが気に入った。
 私が仰向けになると、沙也加のフェラチオは、舌の当て方といい、吸い込みの強さといい、唇で亀頭の溝からしごき立てるこすり方といい、つぼを心得たものだった。
 充分な時間フェラチオをした後、沙也加は右の掌でカリ首を包み、手首を充分にしならせて揉み込んだ。途中で、ペニスを握ったまましなだれかかってキスを求め、今度は沙也加の方から舌を押し入れてきたから、ペニスが一層はち切れんばかりにふくらんだ。
 私は沙也加の性器が見たくなった。69を頼むと沙也加はそれにも気軽に応じた。
 眼前に迫った双臀は、腿が太い割には尻の大きさが目立たなかった。唇が厚いから小陰唇も発達しているかと思って眺めると、やはりなかなか発育していた。それほど突き出してなくてもぽってりとした厚みがあった。
 覗くクリトリスの丸みが愛らしい。恥毛は、元来は多毛なのを手入れして、ハイレグカットの水着が着られるようにしてあった。
 沙也加がフェラチオを始めた。ペニスの根元を人差し指と中指の間に挾んで、睾丸を押して付け根を圧迫するようにしてペニスを含むから、海綿体の生理がよくわかっている。
 私もローションで光る肉色の突起を舌で包むようにしてしゃぶりついた。沙也加の腰が高いので、私はクンニリングスがやりにくかった。首を持ち上げて吸って、そのうちにつらくなり、諦めてペッティングに代えた。
 沙也加は姿勢が楽になったので、私の股間に這う手の動きを盛んにした。手で睾丸を揉みながら、音が出るぐらい濃厚なフェラチオをする。
 私はとことん勃起して、躯の芯まで響くような快感がきらめいた。たまらず沙也加の尻たぶを両手で掴んで、気をやるのを抑えた。
 喘ぎよがりしながら、ゴム尺でないことを悦ぶ言葉を口に出した。ゴム尺をされたことは一度もないけれど、感激したふりをすれば女も気分がいいだろうから声をかけた。
 すると、沙也加はふり返り、したり顔をして、サックを被せてフェラチオをするなんてことは言語道断のソープ哲学を披露した。
 金津園に来てまだ1年経っていなくても、男の躯への愛撫を充分に心得ていて、ローションを活用してペニスや金的を弄うことが徹底していた。
 ソープに来る前に相当セックスにひたっていたのだろうと想像した。
 沙也加に交合をうながされて、いつも気をやるのはベッドだけにしていることを告げると、沙也加があっさりマットプレイをやめたから、拍子抜けした。
 それだけマットプレイで徹底したサービスをする女は、マットでは射精しないと言っても、モノは直立しているのだから女上跨位でインサートぐらいはさせるのがそれまでの経験だった。
 しばしの談笑の間、沙也加に入店までの経歴や常連客などについて質問した。沙也加は殆どはぐらかすような答え方をした。
 沙也加にいろいろと語らせて、ルイから聞いたことを確かめたかったけれど、沙也加は詮索じみたことは一切受け付けず、当たり障りのないことを喋るという態度だった。自分のペースで喋っておれば愛想がいいけれど、何か質問すると正面からの答を返さなかった。
 初会でそんなことが時々ある。沙也加の愛想がいいだけに砂を噛むような気分で、これでは喋っていてもしょうがないと思った。残り時間が充分あったけれども、早めにベッドに上がることにした。
 ベッドプレイの前は他人行儀だった女が、熱烈なクンニリングスに心を許してうち解け、話がしやすくなることが何度もあったから、それを期待することにした。
 沙也加はベッドで見事に私の愛撫に応えた。
 初対面の抱擁で、私が少し乳首を優しく吸ってから女の足の間に腹這いになって、いきなり秘園に唇を寄せると、驚いたり躊躇いの表情を見せる女が多い。沙也加は、そうするのが当然よ!というような表情でゆっくり股を開いて膝を上げ、私の顔を見つめながら両手で茂みの辺りを引き上げた。
 恥毛が掌で押さえられて、よく成長しているクリトリスが晒け出された。
 そんな大胆な仕草を見ると、私はいつも気分が一気に昂まった。
 クンニリングスをされる際に、自ら指で陰裂を開くソープ嬢には何人もお目にかかっている。その時視線はあらぬ方向に向けているのが普通だ。求められたわけでもないのに、ベッドプレイを始めようとするところで、思わせぶりにゆっくり股を開いて、男を見つめながらご開帳する女はなかなかいない。
(こいつは俺をその気にさせたり白けさせたり、ややっこしい奴だな。でも、相当セックス好きのようだぜ)
 私はクリトリスの先をペロッと舐める動作を5度ほどしてから、沙也加の膝の裏を両肘で押すようにして陰裂が開くのを維持しながら、肉芽全体を唇で包んだ。
「ああっ!」
 耳に快い悲鳴が飛んだ。
 腰をよじる明瞭な反応に意欲をかき立てられ、私は、俺の舐め技を愉しめ!とばかりに、熟練の口唇愛撫でテンポよく吸った。
 沙也加はその様を上体を持ち上げて覗き込み、腹を波打たせて、「ああっ、そう、そう!」と叫んだ。
 私はますます気持ちを昂ぶらせ、クンニリングスを強めのものに変えた。立派なサイズのクリトリスを厳しく吸い込んでは吹き出して、唇の間でヌルリヌルリと出し入れすると、沙也加はその熱烈な愛撫に応えて部屋中響きわたるよがり声を上げた。
 初対面なのに、沙也加はまるで昔から肉体関係があるかのように、クンニリングスに身をよじらせ、奔放に喘いだ。シーツの上に下ろした足を引きつけたり伸ばしたりして、ベッドの上を泳ぐように悶えていた。そんな身ぶりの激しい反応を愉しめるのは実に久し振りだった。
 唸りながら、ベッドのコーナーの方へ躯をのけぞって後退していくので、その腰を両手で押さえ、攻撃すべき部分を唇から外さぬように匍匐前進でつき従った。
 沙也加は私の両腕を掴み、絶叫に等しいよがり声を上げて、全身を揺らした。
(久し振りのすごい女だなぁ! こりゃー、いいや)
 廊下にまで響いているに違いないよがり声と、紅潮した肉体の熱気に半ばあきれているうちに、ぐしょぐしょの秘部に唇が滑っていつの間にか刺激のポイントが外れていた。すると、沙也加は私の頬に手を当てて軌道修正を求めた。
(道理で喘ぎ声が低くなっていたぞ。唇の当たる位置を直させるのがいいわい。クリトリスは大きいけれど、まわりがふくよかだから隠れちゃうんだよなぁ)
 にんまりして、厳しく吸えば吸うほど激しくなる淫声とよがり汁に一段と亢奮を昂めていた。
 時間はかかったが沙也加はアクメに至った。ふわーっと女の匂いを漂わせ、背中を反らすような明瞭なフィニッシュを見て、私は感嘆した。
(こりゃあ、見事なエクスタシーだ。おそれ入ったぜ)
「ちんちん、吸って!……舐め合いっこでもいいかなぁ」
 私の卑猥な注文を沙也加はためらいもなく受け入れた。
 互いに逆向きに横寝して、また、股ぐらに顔を寄せた。
 沙也加は飛びつくようにペニスを咥え、熱烈に吸い始めた。初対面では調子の出ないことがよくあるペニスがその日は完璧に勃起し続けた。
 沙也加は既に気をやっていても、69でクリトリスを愛撫されるのがつらいということはなかった。片足を宙に上げ、ベトベトの割れ目をしっかり私の口に預けていた。
 沙也加がクリトリスをしゃぶられる快感に喘ぎながら、ペニスをしごくから、私は相互のオーラルプレイをできるだけ続けたいと思った。でも、あまりに強烈なフェラチオが耐久を粉砕しそうだった。
 インサートを求めたところで沙也加はどうするのだろうと思ったら、意外にもサックを取り出した。異論は挟まずにサックをつけ嵌め込んだが、そこでも沙也加の反応は愉しいものだった。
 私の腰の突きを迎える腰の動きと背に這う手の仕草は、セクシーで、親密感に溢れていた。人形を抱くような交接とは大違いの、なかなかの床上手だ。そこまで奔放で魅力的な抱擁をするとは全く驚きだった。
 沙也加がよがって腰を揺らした。初めは、膣道の中のペニスに沿う、抽送を補助する動かし方だったけれど、次第に支離滅裂なローリングの、悶えるような動きになった。
 私は控え目なサイズのペニスが外れぬように沙也加の腰を押さえつけた。その力んだ手に沙也加の尻の温かみと不随意の動きが伝わって、一層亢奮を駆り立てた。
 ペニスは硬直の状態を持続して、終始ゴムをつけていることを意識しなかった。
 前戯から長いセックスになり、私は大汗をかいて心地のいい抽送を愉しんだ。コンドームをつけるとすっかり性神経が無感動になるから、完璧な充血の性交はゴム使用の場合にはなかなかないことだった。
 自分の荒武者ぶりに瞠目し、最後は、射精を予知した沙也加に両足でぐっと腰を抱え込まれて気をやった。
 雑談の時間を短くしてベッドプレイの時間を長く取ったのが、結果的には正しい選択だった。それにしても、沙也加は男を悦ばせるセックスのしかたというものを見事なまでに心得ていると感心した。両足で腰を抱え込むのが凄い。
(クリちゃんが大きいと、本当に助平な女が多いな)
 あらためて納得した。沙也加の、思いがけない濃厚な応え方に、半ばあきれ、意外な掘り出し物に出会ったとほくそ笑んだ。

 沙也加に好感と興味を抱かせたように思い、きちんと通うことにした。
 沙也加は、何か本人の気に入らない態度を客が見せようものなら、気が滅入ってしまうような厳しい反撃をする不良女の雰囲気があった。でも、私がそのようなことのないように気配りしておれば、にこやかに会話がすすんだ。
 逢う度に沙也加の気の強さには閉口しながらも、ベッドになると、よがり声を絶叫する濃密な乱れ方に毎度亢奮して絡み合っていた。
 3回ぐらい入浴すると、沙也加がリラックスしているときに幼げなところを覗かせることがあるから、私は沙也加がそれほど公称年齢に嘘を入れてないと思うようになった。
 沙也加がアナルを使うのか、SMプレイをするのか、ノンサックでセックスをするのか、店の男と関係があるのか、夏木ルイから聞いたその疑問点について、私は探りを入れ、何れも否定的な結論を出した。
 私から沙也加にNSを申し入れていないから確定的に確かめてはいないが、コンドームは、どの客にも必ず使用しているようだった。沙也加がマットプレイでペニスを膣に嵌めなかったのは、私に射精する気がないなら、コンドームを使ってインサートさせるのが無駄だと考えたのだろう。
 アナルセックスについては、そのようなことを頻繁にしていたらアナルに多少の変形が現れるものだが、放射状の襞と窄り方に形の乱れは全くなかった。肛門の変形が認められないことは必ずしもアナルセックスをしない証拠にはならないが、沙也加は私が常連になってもアナルへの指の挿入すら嫌がった。
 だから、沙也加が店でアナルセックスをしたことはまずないだろうと想像した。また、沙也加はソープ店に安月給で勤める男と関係を持つような性格とも思えなかった。
 アナルプレイをやりそうもないことと、純生セックスを売り物にしていないことには少々がっかりした。
 でも、かなり後になって知ったのだが、沙也加はやはり金津園に来る前はSMの店で「女王」をしていた。男を紐で縛るのは得意技なのだ。マスターズのボーイを実験台にして、あっという間にスーツ姿を首から足まで見事に亀甲模様に縛り上げて、皆を驚かしたことがある、と聞いた。
 確かに沙也加は「S」をするのが性格的に似合う勝ち気な女だ。
 沙也加は夏木ルイがいなくなった後、店のNo.1嬢の座を受け継いだだけあって、私の助平心を煽り立てるほど濃厚なセックスをした。常連客が大勢いて、2つや3つの入浴時間でかなり頻繁にやってくる上客を何人か掴んでいた。
 向こう意気が強くて、胴長で、奇妙なほどに太腿がど太い奇怪なスタイルなのに、月にコンスタントに70本ぐらいは取って、なかなかいい稼ぎをしているから、私は意外に思った。
 確かに、ねちっこい尺八といい、カリ首をねっとりとこする手淫の巧みさといい、抽送されている時の悩ましい喘ぎ声といい、不随意的な腰の揺らし方といい、抜群の床上手だけれども、ソープの客というのは、そういう快感反応や性技を求める男が存外と少ない。多くの男は、相手の女が好みのタイプで、甘いことを言って会話が愉しく、自分が射精できればいい、という程度の望みだからだ。
 雑誌に顔写真を載せずせいぜい中の上程度の器量でも、ソープに入って半年ばかりで店のNo.1嬢になった。閨の技だけでなく、客あしらいが相当際立っていることは間違いない。
 沙也加は稼ぐだけ稼いだら早めに足を洗いたいと言った。
 店には真面目に出勤していたし、男に受けるようにサービスが徹底していて、例えば、ディープキスを拒まなかったし、男が前戯もなしに嵌め込んでも悦びの表情をつくるのが見事だった。
 私は、沙也加が歳の割に大人びた物の言い様をして、気に入らないことをストレートに表現するのが時々気に障るけれど、反面その奔放さが愉快だった。
 ベッドでは強めのクンニリングスをして、沙也加が歓喜の声を上げ、濡れそぼってよがるのを愉しんだ。沙也加に気をやらせてからは、沙也加がペニスに飛びつくようなフェラチオで始まる激しい69で、更に亢奮をかきたてた。
 クンニリングスに疲れたところで、いきり立ったものにゴムを被せ、腰痛と闘いながら腰を送った。コンドームを着けると、カリのこすれ感を求めて、純生の時よりも動きが激しくなった。
 軟弱な腰椎の軟骨がずれそうな気がしても、激しい腰の突きに沙也加が喘ぎ、汁気の多いバギナがヌチャッと音を立てるのが愉しかった。
 沙也加は会う度に服が替わっていて、どれもセンスが良かった。私がそれを褒めてから、「貴女は、稼いだお金をかなり服とアクセサリーに遣っているようだね」と訊くと、沙也加が否定した。
「ううん、皆、スナックで働いていたときに買った物よ。毎日違う服を着なければならないから、全くお金が残らなかったわ。スナックで稼げる金なんて知れているから、完璧に持ち出しよ!」
 沙也加は「雑誌に写真を載せる女は馬鹿よ。まっとうな職業でないのに、何故、そんな証拠の残ることをするんだろう」という考え方をした。
 日本酒だったら2日で1升を空けると言った。そして、「私、ルイさんのお客さんに来られるのはイヤなの」と、何かの折りに呟いた。
 勿論、沙也加は私を例外としてという前提で言ったのだが、ルイを妙に敵視していることと酒豪のことと、沙也加の気性の激しいことが、ちょっと私のタイプではないと思った。私が惚れていたルイが嫌っていた沙也加には、私はどうも気持ちがのめり込めなかった。
 沙也加は、仲間の年上の女に対して控え目の態度をする様子がなかった。20歳そこそこのうら若き乙女なのに、会話の度に何か持論を展開する口ぶりと、非番のときの豪勢な遊び方に引っかかるものがあった。
 いくら沙也加が浮かれ女でも、一歩引いた奥床しさと可憐さがあれば、能動的な絡みをする奔放さには強烈な魅力があっただけに、会うことを決めた理由が何であれ、私は沙也加に目一杯惹き込まれたに違いない。
 でも、沙也加は「逆境に耐える土性骨の強い女」のイメージで、いたわりたくなる可憐な女でも、コンプレックスを包み隠した剽軽な女でも、間違って風俗で働くことになったなよやかな女でもなかった。稼ぎのためと割り切って、沙也加はどの客にも同じようなサービスをしているように思った。
 だから、沙也加からそれ以上情感のある応対をされることがないような気がした。
 6度目の入浴をした時、私は沙也加の心の中に入り込む限界を感じとった。淫奔なセックスだけが魅力なのであれば、それだけ挑めば充分だった。
 私が通うのをやめたのは、沙也加は不思議だったろうと思う。
 沙也加は何かのために纏まったお金が必要になってソープに入り、その仕事を2年もする気はないと言った。その通り、私が通うのをやめてから半年ぐらい経った頃に上がっていた。
 沙也加が大金を必要とした訳は聞けなかったが、相当頑張って本数を取っていたから、少々派手に浪費してもかなりの金を貯めたに違いなかった。
 6回の抱擁のいずれも沙也加が気をやり、愉しんだという表情をしていたから、私は入浴をやめるのがとても惜しい気がして迷った。
 沙也加にのめり込む気にはならなかったけれども、愛撫をしっかりする、尊大ぶらない男なら、奔放な官能を示し、大胆な閨技をする沙也加には、誰でも完璧に亢奮するだろうと思った。

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