ルイ 2

 私は嬢がベッドに誘う仕草をいつも面白く観察していた。
 馴染みになってもいない男に「さぁ、しましょうよ」とずばり宣言する女はいない。話がはずみ過ぎると時計をちらちら見るようになる。かといって、女からそれを切り出すのは避けたいのだ。
 会話が途絶えたときルイが時計を見たので、声をかけた。
「さぁ、ベッドに上がろうか」
「明かりを少し落としていいかしら?」
「うん、いいよ。だけど、あんまり暗いのはいやだなあ」
 ルイが壁のスイッチのところまで歩んで、明かりを調節した。向き直ると微笑みを浮かべて戻り、髪を留めていたピンを外した。長い黒髪がパラリと落ち、流し髪になってより若い顔になったのを見て、私は胸を躍らせた。
 ルイは続けて胸のところで巻き留めたバスタオルを外した。ゆるめて足元にパサッと落とすのではなく、両手で結び目のあたりを摘み、躯の後ろでタオルを広げるように両腕をの字に伸ばして開いた。
 タオルをたたみやすくするために広げたにせよ、立ったまま胸を張って、躯の正面を向けてすぱっと剥いだから、まるで見る者の感動を見通したような動作だ。それは、歳に似合わない放胆な嬌態に映った。
 私の視線を受けとめ、ルイは微笑み返すと、ちょっと首を傾け、ベッドのほうに右手を差し出して、ジェスチャーで私に横になるよう誘った。
 私はにっこりして「最初は僕から」と求め、同じジェスチャーを返した。ルイの、えっ!というような顔と「でもー」と言う言葉に、「僕にも貴女を愛撫させてよ」と、もう一押しした。
 ルイはしょうがないなという顔でベッドに横になった。
 話しぶりは愛想が良くても、抱擁となると客からの愛撫を全く拒んで、射精さえさせればそれでいいとするソープ嬢もいる。私はルイがその手の女であることを懸念した。
 ルイは両手を腰に揃え、足もぴったり閉じて、まるで医者の診察を受けるように行儀よく寝ていた。叢が白い下腹に上品に浮かんでいる。ルイのような背丈のある女の裸体をしばらく見ていないから、乳房から恥毛まで滑らかな肌が続いているのが、間延びした長さのように見えた。
 指を使うか口唇愛撫にするか、どちらから始めようかと迷いつつ寄り添うと、自分がまるで清純な乙女を凌辱するヒヒ親父のように思えた。
「優しくしてね」
「うん、心配しなくていいよ。僕は痛いようなことはしないから」
 ルイの訴える言葉は、それまで初対面の女の幾人かが口にしたものと同じだった。
(何故、どの女も同じことを私に言わせるのか。こんな華奢な感じの美人でも、客にしばしばひどいことをされているのだろうか?)
 微笑んだ顔を見て、そう考えた。
 私はルイの上半身の傍らに座り、乳房から愛撫を始めた。薄い色の乳首がなかなか大きいのに、乳曇は小さく、ふくらみ全体も小ぶりだ。乳首を唇で揉み、時には乳房を口いっぱいに含んだりしながら、私の前戯が果たしてルイに通用するだろうかと考えた。
 しばらくは局所への愛撫を避けていたが、頃合いを見て逆向きの添臥の体勢に変えた。
 ルイは相変わらず脇を締めたまま腕をシーツの上に置き、人身御供のような雰囲気があった。その様子を可愛らしく思い、マットでは見ることができなかった股ぐらを覗き込んだ。
 茂みが優しげに生えていた。ラビアは細身の躯に似合わずしっかり突き出ていた。両扉は小皺を浮かべ、ぶよぶよした感じの厚みがあった。全体に着色が薄くて、割れ目の長さも充分にある。その発達ぶりを見て、ルイの感度はどんなもんだろうか、どう料理をしようか、と考えた。
 左手で乳首を軽くはじきながら、右手で太腿を抱えて顎を柔らかな恥毛に埋め、シャンプーの香りの中に女性器の残り香がありはしないかと追い求めた。陰阜の下に陰核茎部がもっこり突き出て、クリトリスは薄皮を剥くのが容易だった。
 肥えた女にクンニリングスをすると、大陰唇をかき分けて唇を押し入れるようにしないとクリトリスが咥えられないことがある。ルイの躯は豊満ではないから、唇を強く押しつけなくても、また、脚をそれほど拡げなくても、クリトリスを唇で楽に摘むことができた。
 上から逆向きにクリトリスを吸っていると、辺りの地肌や這うように生える恥毛がよく観察できる。アナルは綺麗にすぼんで、そのまわりから大陰唇にかけての毛が薄かった。
 私は顎を陰阜にかぶせる格好でクンニリングスをした。クリトリスを唇と舌で弄いやすくするため、左手の指先を顎の下の窮屈なところに押し込み、恥毛をかき分けて包皮を引き上げた。
 痛々しいような赤らみに舌先のジャブを正確に繰り出し、肉芽を舌で振動させるにつれて、ルイは秘めやかな喘ぎ声をあげ、一筋の濁った愛液を流した。
(おぅ、流れるのが早いじゃないか!)と反応の良さを喜んだ。
 いつもの流儀で、女芯を包む莢を唇で押し下げてクリトリスを吸い出したり、莢ごと芯を、また莢に連なる二つの肉厚の花弁も含めて吸ったりして、優しく愛撫を続けた。
 私はルイの肩先に半勃起したペニスをさらけ出していたが、ルイはそれを愛撫しようとはしなかった。最前忙しく動きまわるマットプレイをしたのとは裏腹に、ベッドでは受け身に徹する構えに見えた。
 ルイが眼を瞑ってじっと快感を追い求め、時々腰を僅かにふるわすから、私は気分が昂まった。周期的な悦楽の喘ぎ声を聞き、頻繁に尻に伝う白濁の愛液を見て、ルイの昇天を期待してクンニリングスに没頭した。
 私は顎をルイの下腹のほうに向けてクンニリングスをしているので、顎や頬にふれる恥毛がうるさいし、同じパターンのクンニリングスを長く続けるのは避けようと思った。それで、ルイの左脚は伸ばしたままで右脚を腹につくまで引き寄せさせ、その腿の裏から顔をつっこむことにした。そうすれば膣口も尿道口も覗くことができる。
 右脚の膝の裏に手をかけて膝を引き寄せようとすると、ルイはそれを拒まないけれど、自ら脚をたたもうともしなかった。
 私は足の重さからルイの羞恥を感じながら腕に力を込めた。クンニリングスをしていたときには半開きだった股が開いたところで、私は躯をルイの足のほうへ少しいざらせた。
 それまで私の顔の蔭になっていたルイの股間に明かりが当たって、内腿の白さと焦げ茶色の小陰唇が豪快に飛び出ているのが目についた。腰幅が狭く、臀部にもそれほど脂肪が乗っていないから、その姿勢はアナルも陰裂も浮き彫りにした。
 私は首筋でルイの内腿を支えて秘園に吸いつくと、起伏の部分が自在に愛撫できた。再び女芯に舌を這わせ、発達を遂げた花弁を一つずつ口に含んでは、柔らかさと伸び具合を調べた。含み甲斐のあることを確かめると、また女芯に戻り、ねっとりといたぶった。
 私の顔と角度が九十度違う肉溝を囲っているラビアを、唇の左端で捉えた肉芽も含めて、ハーモニカのように吸ったりした。柔毛が頬をこそぐる感触を楽しみ、愛液の湿り気を探り、夢中になって秘園を攻め続けた。
 ルイの伸ばしたままの左脚と限度まで曲げた右脚とに挟まれた秘境地帯は、向きの違う脚の張力により長めの陰裂がぱかっと割れ、膣口辺りが愛液で光ってひくひくと息づいていた。
 仰向けのルイの腰の脇から攻めるのは、今一つクリトリスに下からはね上げるような強烈な刺激を施すことができない。だから、また、やり方を変えようとルイの両脚の間に移動した。
 シーツに腹這いになって股間を見ると、濁り液でしとどに濡れて、生臭いけれども懐かしいような匂いが漂っている。割れ目の内側に、赤味がかった肉色の、起伏が激しくてべろべろとした湿地帯が覗ける。もう淫猥この上もない。
 そのまま顔を陰裂と正対させてクリトリスを吸いしゃぶった。更に、ルイの両脚をたたませ、陰裂を上向きにして会陰からアナルまで舌を這わせた。また唇をクリトリスに戻し、間に挟んで唇でもみ上げ、長く突き出した舌の面全体でこすり立てた。
 舌先で下からすくい上げ、顔を左右に揺すって下唇の内側の柔肌でクリトリスを横方向に揺さぶり、次には唇で挾んで揉みしだき、緩急自在に鋭敏なところを弄い続けた。豊満で瑞々しい肉質が力みかえり、確かな実在を訴えている感触を舌で愉しんだ。
 ルイは性体験が豊富でも、そんな様々な体位のオーラルプレイは、私の手で膕(ひかがみ)を押さえられた淫らな開脚の姿勢といい、集中的なクリトリス攻めの執拗さといい、初めての経験らしかった。
 胸を反らせて「あーいぃ、あーいぃ」とよがり、時には腰を細かくふるわせた。眼を閉じた顔に陶酔の乱れを浮かべ、白い躯は荒波に翻弄される小舟のように乱れていた。
 美女がよがって喘ぐ姿はどんな名画にも勝る。ルイの反応の良さが予想外だ。
 残り時間が少なくなっているのに、ルイが性器を弄われ放題にまかせ、ひたすら快感に浸って合体を急かさないのが嬉しかった。股間に立ちこめた女の香りを深く吸い込み、クリトリスを吸いしゃぶる卑猥な音に欲望を更に昂めていった。
 私の脇腹から上腕にかけてルイの火照った腿が密着しているので、ルイが快感の大波に包まれて腰を震わせると、その度に微妙な揺れが伝わった。それが時間をおいて繰り返すから、エクスタシーの頂点を示すものなのかどうかよく判らなかった。
 舌がつらくなって、唇を離して眺めると、会陰から菊座まで水飴がかかったようだ。腰の下のシーツも愛液で濡れそぼっている。嬉しくなり、放射状の小皺を集めた窪みににごり汁が滴になっているのを舌先ですくった。股間の香りも胸一杯に吸い込んだ。
 私は、もうそろそろよかろうと、逆上したようにルイの肉体に乗りかかった。
 ルイは眼を閉じていても何とも悩ましい表情をしていた。その顔を盗み見しながらペニスを指で下げて挿入しようとすると、何故か奥行きが全くなく、壁に阻まれたように突き当たった。嵌入がまるでできない。
 怪訝に思って指で割れ目を開き、膣を覗き込んだ。すると、奥から生々しい肉壁が入り口まで押し迫っていた。
 妙だなと思っていると、ルイが言った。
「あー、子宮が降りちゃっているの。私、よくこうなるのよ」
「ええっ、これじゃあ、奥の大事なところをよく痛めるだろっ?」
「ええ、そのうち戻ると思うけど……」
 ルイの下半身にもよけいな力が入っているように思い、しょうがないので入り口でペニスをもぞもぞと動かしていた。
(何だ、これは。これほど亢奮させておきながら、この女の膣の遮断は一体どうしたんだろう?)
 最初浴槽プレイをして、マットプレイは充分に長く、更にベッドでかなり長い時間クンニリングスをした。さあこれからというところで不可解なことになって、私は、回復を待とうと思っても、時間切れが迫っているから気を揉んだ。
 ルイの両脚の間に座り込んで、カリ首を割れ目になすりつけている自分の姿が滑稽に思えた。途方にくれ、ペニスが萎え始めた。
 もう諦めて手淫させようかと思っていたら、ルイの躯の緊張がゆるんだようだ。膣を覗くと、奥行きが増し、入り口に迫っていた子宮口が見えなくなった。
 訳の分からない生理現象に出くわして、ペニスは沈静していた。その張りを戻すべく、割れ目の内側にカリ首を押し当てて上下に何度も往復させてから、浅めの挿入のまま抽送した。
 肉壺の中はまだ洪水状態で、カリ首に刺激を感じない。接触感がまるでないので、上体を起こしたままペニスの根元を押さえて腰を送った。そのうちに堅さが増して、どうにかこすれる感触が出てきた。
 赤黒い棹がニスを塗ったように光っている。引いたピストン棒を勢いよく突き入れると、ぷわっと淫らな音が聞こえる。
 ペニスが充血を増して嵌めはずす恐れがなくなったので、ルイと胸を合わせ、膣のぬめりを確かめながら大腰で送り込んだ。ペニスの先がまだ少し遮られたが、痛がるような気配がないので遠慮なく腰を振った。
 ルイは目を瞑ったまま、口許に少し変化を見せていた。
 亢奮の後の不安、その後の安心と激しい腰の振り下ろし、私は快い疲労感に包まれ、生身の抽送がとても心地良かった。当時は金津園でまだエイズ対策が問題になっておらず、どの店でもコンドームを使っていなかった。
 私は絞り出すような放出の余韻に酔って躯を離した。
 ルイは照れたような顔をしてティッシュでペニスを拭いた。そのティッシュを新たにティッシュでくるんで、それで股ぐらを押さえたまま、参りましたという顔でよろよろと立ち上がった。
 流し場に向かう後ろ姿を目で追って、私は、子宮降下のハプニングを忘れれば思いもよらない掘り出し物だとほくそ笑んだ。その日、初会のルイの一挙一動を冷静な眼で見ていても、心はかなり動転していた。
 快楽行為の後、迷いながらも感じたことを口に出した。
「貴女のマットは、もっと上手にできるといいのだけれどねえ。僕みたいに、そんなに若くはなくて、美人の裸を見ただけでは勃たない人のためにも。貴女は、玉々さんを刺激したりして随分と積極的で、決して下手ではないけれど、男の性感が判っていないところがあるよねえ。いろんな動作の切替が少し早過ぎるんだ。本当に、一つ一つの技は貴女のような美人にしては珍しく大胆な技で、とってもいいんだけれどね。ちんちんの幹のところじゃなくて、カリ首の穂先のところを重点に、もう少しじっくりと攻めればいいと思うよ」
「そういうふうに言われたの、私、初めてよ。私ね、もっと指名を増やしたいと思っているから、どうしたらいいのか教えて欲しいわ。……今度貴方がいらしたときに、マットのテクニックを勉強させてね。私、他の女の子がどのようにしているのか判らないもの」
 微笑んで返した言葉は外交辞令とも思えたが、好みの女に出会えて嬉しかった。
 愛撫のテクニックと雰囲気が、そこらの店の程度の低いNo.1嬢よりも抜群に素晴らしくなれば、ルイは金津園のクイーン・オブ・ザ・No.1となるだろうから、そうなれば格別の通い甲斐が出ると思っていた。

 膣遮断のハプニングにはうろたえたけれども、私はルイの器量と愛想と性的感度のすべてにおいて全く満足した。毎月逢って、親しくなりたいと思った。
 ルイがマットプレイでペニスをじっくりと愛撫しないことだけがもの足りなかった。淫乱と思えるほどのねちっこい攻め方をルイにさせたかった。だから、しばらくは逢う度にいろいろ注文をつけた。
 ルイはその希望に添うよう努め、実技の確認をその都度求めた。その授業が私はとても愉しかった。
 私が教えたのは次のようなことだった。
○マットプレイは男を俯せにして始める。その時背中や尻や太腿を愛撫されるよりは、いきなりペニスを攻められるのを好む客もいる。マットに寝そべった男の上で、全身を振幅広く踊らせ、うねらせ、肌と肌を摺り合わせることだけがマットプレイだと感違いして、非性感帯ばかり愛撫するのは感心しない。一生懸命努めているように見えるけれど、それではまるで体操で、ソープ嬢は息がはずみ腕が太くなるだけだから、ペニスを徹底して攻めるようなこともしてみるといい。そのためには、ローション液をできるだけ濃く作るのがいい。
○ディープキスやアナル舐めができるなら、同時に、ペニスを力一杯漲らせた上で、その最高唯一の性感帯のカリ首に指技をして多角的に攻めるといい。腿や胸や背中を愛撫するときは同時に必ずカリ首を愛撫する。それも、相手が嫌がらない限り、強く激しくできるだけ長く刺激するといい。カリ首の粘膜は、強度の包茎でない限り、クリトリスに比べて格段に強靭だ。
○セックスには心理的な要素も大切だから、男が眼を閉じていれば「ねえ、見てえ」とか、ぴんぴんになっていれば、「わぁ、おちんちんがこんなにテカテカと光っているぅ!」というように、戯れの言葉をかけるのも立派なテクニックだ。
○マットに腰を下ろしたまま両手と唇で男の股間を刺激し続けると、店の指導者は、マットプレイらしくない横着なやり方だと非難するかもしれない。しかし、どっかりと座っていても、カリ首や金的の摩擦の仕方、舐め上げの所作に強弱やリズムや猥褻さがあって、ペニスが勃起しっぱなしになるように自分なりの工夫をしている女のほうが格段に素晴らしいと思う客もいる。相手の好みに合わせて愛撫すればいい。
 ある程度カリ首が鍛えられており、性愛にはハートが肝心と思っている男に対しては、これは歓迎されるやり方だと私は思っていた。
 ルイは私の望みをすぐ理解して、効果的な手の使い方をするように心がけた。マットプレイでは最初にペニスを勃たせることが肝心で、何も口を使うことだけ考えなくていいからカリ首をいとおしむように愛撫しなさい、というアドバイスの通りに実行すると、なかなか客に好評だった。
 それでルイは、その成果を眼を輝かせて報告した。
「××さんのお蔭で人気が前より高まったと思うわ。私の仕事ぶりを感心してくれるお客さんが増えたのよ。嬉しいわ。ねえねえ、常連のお客さんでなかなか勃たないし、イッてくれない人が、すぐ大きくしちゃって、『これはとってもいいからこのまま手でしてよ』と頼まれたの。そしたらすぐにピュッと飛ばして、その人、びっくりしていたのよ。こんなこと、初めてだぁ、って。じっくりとあれの先を攻めるのは、本当に効くものなのねえ。すっごく効果あるわぁ!」
 そんなに好評ならば、ルイの予約がますます取りにくくなるからおもしろくないけれど、喜んで貰えれば嬉しかった。
 数ヶ月後に、私はルイと初会の想い出話をしていた。
 私が部屋にるなり、喋りながらさっさと服を脱いで裸になったので、ルイは驚いたのだった。
「私、ソープに来なれた人だと思ったわ」
 ルイのような美女に会う客は、部屋に入ったところで腰も下ろさずに、いきなり全裸になることはしないものだと想像はできたけれど、私はいつもの流儀で通したのだった。
 恍惚の表情で濡れそぼち、喘ぎ続けた前戯の感想を尋ねると、ルイは照れてはぐらかすような応答ではなく、気負い込んだ顔でストレートに答を返した。
「すっごく気持ちよかった。一体全体、何?、この感覚は!と思って、あの時はびっくりしたわ。あんなやり方でしてくれる人、いないわよ!」
 私はクンニリングスがかなり上手いとは判っていたが、人と比べたことがないから、ルイに驚嘆の顔をされると気分が良かった。そして、その目を瞠った顔が、照れたような、媚びたような表情に変容すると、何とも愛らしいと思った。
 初対面なのに、会ってすぐルイのほうからディープキスを迫ったことがとても印象に残っていた。
 ルイが乳房の下まで湯に浸かってフェラチオをしてから、腰を上げて唇を寄せようとした時、その顔に一瞬何か勇を鼓するような表情が見えたことを憶えていた。
「お風呂で貴女にいきなりディープキスをされて、ほんとうに驚いたよ。なかなかいないよ、そういう女は。貴女は、初対面の男でも自分からキスをしてあげているの?」
「そうしようと努力はしているんだけれど、なかなかそういう気になる男の人はいないわ。いないものよ」
「へー、僕は合格だったんかい」
「うん、この人だったら、しちゃおーと思ったの」
 初会の日、私は、ルイの美貌と快活さと、淑やかなのに存外濃厚な応対をすることにすっかり気持ちを昂ぶらせた。ペニスが逸って、あきれるほどによだれを流し続けた。
 だから、ルイが腰を上げようとした時の一瞬の表情の変化が、キスをしようと鼓舞するものなのか、それとも、吸い込んだペニスの先走り汁を嚥下することを決断するものだったのか、ルイに尋ねたかった。
 でも、親愛の心を素直に悦んでおればいいのだ、と冷やかしたい言葉を抑えた。

 ルイは売れっ子で予約が取りにくくて、私は月一度指名して逢う程度だった。それでも、ルイは私の顔を見るたびに喜び、半年ほど通った頃には、すっかり心を許したように見えた。
 店での出来事や常連客の珍妙な話を親しく語り、名古屋の私立の女子高校と短大を出たことや、九州が故郷で名古屋に一人住まいし、自宅から金津園まで赤い車で通っていることも、本名についても隠さずに話した。
 ソープ嬢が客と親しくなっても、自発的に自分の出身高校や本名を教えることは滅多にないけれど、ルイは十代の頃の想い出話をしている時に「貴方なら教えてもいいと思う」と呟いて、そういったことを明かした。
 私は、ルイが本名をうち明けても、それでいい気になってやたらと私生活のことをほじくり返すことはできなかった。むしろ、そんな隠しておくべき事項をうち明けてもいいような人畜無害なおやじ扱いか、俺は……とひがむような気持ちすら湧いた。
 でも、月に二度トリプルで入浴する客や、毎週のように来る客には、そこまでの親密さを許していないと明言するから、嬉しくて更に熱を上げていった。
 平成四年の五月に金津園はエイズ対策でコンドームを使うことを決めた。ルイはそれについて私に一言も言わなかった。
 私は恵里亜で金津園の自主ルールを知った。ヴィーナスでも確認した。それでルイにマスターズはルールを守らないのか、と確かめた。
 するとルイが微笑んで返した。
「すてきなエッチをしてもらって、コンドームをつけてくださいとお願いなんかできないわ。他の人にはつけて貰っているのよ。だから、××さんも絶対に危険な遊びをしないでね」
 私はコンドームが大嫌いだった。ルイが他の常連客にはコンドームをつけるように求め、強要されても受け付けなかったと言うから、ルイの好意が嬉しかった。
 その頃金津園の店はユニフォームにしていたところが多かったが、マスターズは嬢に衣装を任せていた。
 ルイはタイトスカートでツーピースの装いか、引き締まった形のワンピースを着ることが多かった。服装も化粧のしかたも抜群にセンスが良いと思った。だから、ルイがエレベーターの中でにっこりして迎える姿を見るのが楽しみだった。
 私は若い女が原色の鮮やかな衣装をつけているのが好きだが、ルイはそういうのものは好みでなかった。いつも渋い中間色の、細かな柄模様のもので揃えていた。原色系のロングスカートでドレッシーに装うのを見たいと思っていた。
 雑誌の写真では化粧がかなり厚かった。ルイは部屋持ちだから個人の物を置き、壁には自分のポートレートが飾ってあった。その写真は、頬がライトを反射して白光りしていた。化粧した顔だけ見ると、鮫肌なのか餅肌なのか、地黒なのか、小皺があるのかないのか判らなかった。
 私はルイをよく「白塗り仮面」と冷やかした。その度にルイは膨れ面をしたが、別に悪く思っていたのではなかった。女は肌が白い方が素敵だし、良いファンデーションを施せば、ベッドで抱き合うと化粧の匂いだけで亢奮してしまう。
 とにかく、ルイの笑顔と女らしい声が気に入った。楽しそうにブランデーのロックを作り、にこっと笑ってグラスを差し出すルイを見ると、自分がとても純真な男に変貌するような気がした。
 粗野な言い方をしないから、育ちが良さそうに見えた。私は、ルイが不愉快な出来事を報告するときの、膨れ面をして同感を求める、媚びるような眼が好きだった。ルイのようにお嬢さんぽい美人が金津園で働いているのが、どうにも怪訝だった。
 ルイは、仲間のあまり美しいとは言えない嬢の噂話をすると、なかなか辛辣な表現で容姿を形容した。その言葉はルイの美しさを少々減殺した。愚痴も多いので、店や客について気に入らないことがあると、我慢ができない質のようだと思った。
 初会の時に私を驚かせた子宮降下の症状はその後も時々あった。でも、最初の時のように激しく遮られることはないから気にならなかった。
 私はルイと親しくなると、金津園へ通うペースが変わってしまった。ルイも、最初の頃は私を風呂に入れるとコップと歯ブラシを差し出していたが、そのうちにそれをしなくなった。
 ルイは毎度逢う度に一緒に風呂に入り、愉しそうにフェラチオした後、求めるような顔で唇を寄せた。ようやく逢えてキスできるのが楽しくてしょうがない、そんな気持ちがにじみ出て、何とも心を揺さぶられた。
 潜望鏡プレイからディープキス、マットプレイ、酒を飲みながらの歓談、ベッドプレイと、いつも決まった儀式のように同一手順だった。ルイが華やかな笑顔で快活に近況を語った後、ベッドに仰向けになって期待顔で股を開くのが、有料遊戯の匂いを飛ばした。
 私はすっかりルイの虜になった。
 ルイはお喋りでも、ソープの仕事に関係しないことはあまり語らなかった。個人的なことをもっと知りたくても、要らぬ詮索をなるべくしないのが客としてのエチケットと思ったので、何も聞き出せないでいた。
 逢えばいつもエロチックな馬鹿話に終始して、ルイについて知りたいことが何も判らないから苛立った。何故助平話しかできないのだろうかと、自分が嫌になったりもした。
 ソープ遊びを充分経験していても、ルイの話は興味深いものばかりだった。
 美人で、二十四歳の若さで、人を飽きさせない会話を続ける女なぞそんなにはいない。しかも、大人ぽく見えたり子供ぽく見えたり、とてもコケティッシュだったり醒めた感じだったり、その姿が複雑で、気分屋のところが何とも魅力だった。
 時々ルイが甘えたような素ぶりをすると、目許、口許が本当に愛らしくなって、そんな姿を眼にすると、普段より自分が無口になるような気がした。
 ルイの女にありがちな、自分本位のようなお喋りの連射が続く中で、私は全ての憂鬱なことを忘れてリラックスし、この女を独占する方法はないものだろうか、などと妄想に耽った。
(ソープ稼業でのルイの喜怒哀楽は充分に聞いた。しかし、普段は何に喜び、何に憂いているのだろうか。たぶん友達をそんなに作らない性格なんだろう。こんなアイドル系の可愛い顔なのに、性根は本当に強そうだ。本当に彼氏はいないのだろうか、何故この仕事をしているのだろうか、いつまでこれを続けるのだろうか?)
 私はルイを横にしてブランデーを傾けながら考え込んでいた。

 ルイは休みが多かった。しかも当日申告の休みである。
 売れっ子だから、前日までに予約を入れた大勢の客に迷惑をかける。頻繁に休めば、たとえNo.1嬢でも店を辞めさせられるだろうが、ルイは店長に気に入られているのか首にもならずに、よく連続して休んだ。
 私も、予約しても、結局当日にルイが出勤しないことがしばしばあった。
 年の瀬に久し振りにルイが店に出てきた。
「私ね、この間ずっと休んでいたでしょ。もう、頭に来ることがあったの。お店に出ずにパチンコばかりしていたの。聞いてよ、××さん。この店の沙也加さんゴム着で初めての通いに登場)に関することなの。私は神崎愛さんとお友達だから、いつも私のお客さんには、『私が休んでいるときには愛さんに入ってあげてね』って頼んでいたの。ところが、お客さんが、私の休んでいる間にこの店で入ったのは、沙也加さんばかりなの」
「沙也加っていうのは、割と最近入った女だろ。それで?」
「どういう訳だか不思議に思って、お客さんに訊いてみたらね、神崎愛さんで予約を入れようとしても、お店の受付係のYさんが『愛は既に予約で埋まっています』とか言って、皆、沙也加さんを勧められているのよ。入ったその時刻を聞くと、愛さんが空いていた筈の時もあったの。ひどいでしょー。それで私、変だなぁ?と思っていたわ」
「ふーん、しかし、神崎愛はよく売れているから、店としては新しい沙也加を紹介したいのだろうね。それにしても、客に対しては失礼なやり方だよ」
「そうでしょ。で、それは置いておいて、私が久し振りにお店に出てきたらね、常連さんがどういう訳か皆、コンドームなしでさせてくれないかと求めるの。それまではちゃんとつけていたのに。私、『決まりですから駄目です』と断ったんだけれど、一人二人じゃないもんだから、どうも変だなと思ったわ。それだけなく、初めてのお客さんでも、『コンドームなしでやらせてよ』と、いきなり要求する人が増えたの」
「それは変だねえ」
「それで、これは何かあるなと思って、私、そういうお客さんに、『この店で私の他には誰に入ったの?』と尋ねるようにしたの。そしたら、皆、沙也加さんに入っていると答えるじゃない。沙也加さんがそういうやり方をするのは自由だけれど、そういうことをする沙也加さんが、お客さんに、『これは私が特別にしているんであって、普通は、ここの店の他の子もよその店の子もちゃんとコンドームをつけてするんですよ』と言ってくれなきゃ、私達が困るじゃない。そうでしょ、××さん」
「そりゃー、一言言葉を添えた上でそのようにするのが当然だと思うよ。金津園は、今年の五月からサックをつけることが決まりなんだから」
「近頃はコンドームを使わない子も増えたようだけれど、私達はやっぱり用心したいの。だから、お店のYさんに『他の女の子がお客さんからコンドームなしを要求されて困るから、お客が取り違えてそのような態度に出ることがないように、お店のほうから沙也加さんに伝えて欲しい』と頼んだけれど、Yさんは『うん、判った』と言うだけで、きちんと対応してくれないの。何度言ってもそうなのよ」
「……」
「コンドームを使う使わないは、私達が決めることよねえ。お客さんが決めることではないでしょ。私が××さんにコンドームなしを認めているように、問題がなさそうな特定の、少数の常連さんに限って、生でするならいいんだけれど、初めてのお客でも誰でもコンドームなしでするなら、それなりの説明を本人がお客さんにしてくれなきゃ困るわ。……××さん、東南アジアの商売女とは絶対にしないでしょ?」
「うん、そうだよ。危険なことはしない」
「絶対に駄目よ。……えーっとどこまで話したのだっけ、あーそうだ。私がずーっと休んで、しばらくぶりでお店に出たら、そういうふうに沙也加さんのことで頭に来ることがあって、また、休んじゃって、それから気を取り直して、お店に出るようにしたの。そしたら今度は本当にひどい客が来たの。その人はマットはしないで、最初からベッドだったの。私にね、『沙也加はサックなしでさせてくれたから、お前もそうしろ』と、いきなり言うの。それで、『沙也加さんはそうしたかもしれないけれど、私は困ります。絶対に駄目です!』と断ったら、がたがたと随分文句を列べていたけれど、一応諦めてくれたの」
「ふーん」
「それでね、バックでしたいと言うから、私、ベッドの上で後向きになったの。そうしたらびっくりしたわ。私、本当に頭に来たの。いきなり後ろの穴に突き入れようとするのよ。いきなりよ、ひどいじゃない、××さん。……私が『痛い!』と叫んでものすごく怒っても、『今まで私はそんなことは一回もしたことがないから絶対に嫌です!』と言っても、済まないというような感じは全然ないの。私、腹が立って、『お金はいりませんから、もう帰って下さい!』と言って、そのまま引き取って貰ったけれど、お尻の穴が裂けちゃって、しばらくは痛くて恐くって、お仕事できなくなっちゃったの。ひどいでしょー。三日間ぐらい、お尻の穴が本当に痛かったわ。本当よ」
「へー。ふざけた野郎だね」
「そいつ、『沙也加はやらせてくれた。いいじゃないか、一度してみろよ』と言うのよ。あの子、実はね、SMの出身なの。だから何でもするの」
「全くひどい奴がいるんだなぁ。それは気の毒だったね」
「まだ続きがあるのよ。このところ金津園の売れっ子が、何人か吉原へ移っているのを、××さん、知っているでしょ?」
「うん」
「私、お尻のことがあってから、もうほんと、泣いて店長に『私、こんなところでもうお仕事できません』って、訴えたの。それまで店長には何も話していなかったんだけれど、沙也加さんのことでYさんにもいろいろお願いしているのに、全然聞いて貰えないことも言ったの。『私、もう嫌だから吉原に替わります』と、真剣に悩んでそれまで考えていたことを打ち明けたの。どんな条件で誘われたかということまで、皆、店長に話したわ」
「何、吉原だってぇ。おいおい、冗談じゃないぜ。僕は吉原まで通えないよ。一人で東京へなんか行ったってしょうがないよ。東京は恐いところだよ。ここよりももっとひどい客が来るぜ。第一、物価が高いし、名古屋まで新幹線もよく乗るんだろうから、実質の儲けが少ないよ。何でまた吉原が出てきたの?」
「ううん、手取りはここよりうんといいわ。金津園は少ないのよ。今、吉原は女の子が少なくて、金津園やすすき野からいい子を抜こうと一生懸命なの。東京からスカウトが来て引き抜いているの。私のところへも来てね、本当にいい条件を出してくれたの。月二十五万最低保証よ。仕事をしようがしまいが。『貴女なら吉原でも絶対評判になる!』と言うのよ。とにかく真剣に説得するの。もう、私、この店が嫌になっていたから、心が動いたわ」
「だけど、そういううまい話は絶対に危険だと思うなぁ。吉原が嫌でこちらへ替わった子だって結構いるじゃないか。僕は何人か会ったことがあるよ。で、要するにやめたんだろ、吉原は?」
「うん、店長が『お前の気持ちはよく判った。俺が何とかしてやる。Yにもきちんと話しておくよ』と言ってくれたから。店長は慰めてくれたわ。××さん、店長は私に何と言ったと思う? Yさんと沙也加、あの二人はできているのよ。だからYさんは沙也加にどんどんお客を回すのだわ」
「へー、そうだったの。ふーん」
「私、ずーっと面白くなくて、お店を休んでいたのだからぁ。私ね、おうちで悩んでいたとき、××さんに、沙也加さんに一度入って貰って、あの子がどんなふうに仕事をするのか、お客さんにどんなことを言うのか確かめて貰おうかとも考えていたのよ」
「じゃあ、今度僕が沙也加に入って調べてみようか。それとも、もう会わせたくない?」
「××さんは、沙也加には入って貰いたくないわ。駄目よ」
「そう言われればやめておくよ。だけど、君があんなに休んでばかりじゃ、沙也加がアナルセックスもオーケーなら面白そうだから、僕も浮気がしたくなるよ。」
「私、これからは心を入れ替えて真面目に働くわ。お小遣いもなくなっちゃったし」
「うん、あんまり悩まずに、ちゃんと店に出てくれよぉ」
 別の日に、私はルイが一体どこで、東京から来たスカウトと会ったのか気になって尋ねた。
「そいつは、君の出勤の途中を待ち伏せでもしていたの?」
「違うわ。何喰わぬ顔をして、お客として来たのよ。この部屋で会ったわ」
「じゃあ、ちゃんと君を味見してから勧誘したのかぁ?」
「違うの。スカウトは絶対それはしないのよ。服も着たままよ、時間まで。本当。いつもそうよ」
 優しく振る舞っていれば楽しい遊びができるのに、金さえ払えば何をしてもいいと思っている尊大な客もいる。本当に馬鹿な男が多い。

 ルイは私を迎えるといつもこぼれんばかりの笑みを浮かべた。
 コケティッシュに首を傾げて来訪を歓ぶ様は、形の整った顎からふっくらとした頬までの曲線が何とも優美に思えた。卵型の顔が輝くように映えていた。
 全裸になって風呂の湯を張りに行く後ろ姿は、項の後れ毛から、なよやかな腰の線、ほっそりした脹ら脛まで後光がさすようで、私はどうにもたまらない気持ちになった。
 ルイが、湯船に沈んだ私の腰を膝に乗せて浮かせ、湯面から突き出た穂先にフェラチオするのを眺めると、愛らしい口許がここまで淫奔に変貌するのかと感嘆した。白い頬と赤い唇と出入りする紫のカリ首の画面が、逢う度の繰り返しでも毎度私の胸に衝撃波を送った。
 ルイの艶技は、いつの間にか初会の時の小刻みでせわしない愛撫からすっかり変わっていた。
 私が俯せになるマットでは、尻たぶを押し開いてアナルを丹念に舐め、また金的を微妙に口の中で転がした。私の希望通りローション液を限度まで濃くしてあるから、オーラルで金的を攻撃しながら、同時にローションの威力を活用して、両手で激しくカリ首をこすり立てた。
 ルイのアナル攻めは、私が教え込んだ通り、舌を強く押し当てぬぐい取るような動きで、玉転がしは唇の吸引が深い大胆な技だった。攻めることにルイも悦びを感じているように見えた。
 実際、私が仰向けになるマットでは、ルイは左手で菊座を揉み、右手で金的を摩りつつ、唇でカリ首の窪みを刺激し、舌で亀頭前面の鈴口を舐め上げるという高々度のマルチ性技を展開した。
 厳しく愛撫していても攻撃箇所を見つめることはあまりせず、時々上気した眼差しで私の昂揚を観察した。
(どう、とても気持ちがいいでしょ。私、貴方が教えてくれた通り、しているのよ)
 と、問いかけるかのような顔は、唇のまわりがローションで妖しく光っている。何とも表現し難いまでに妖艶で、ぞくぞくするほど刺激的だった。
「私、××さんの時は、本当に一生懸命マットをしているのよ」
「ほんとう!、ありがとう……僕は、貴女がしてくれる中で最高なのは、絶妙のカリ首弄りでもアナル攻めでも玉転がしでもなくて、また、インサートそのものでもなくて、心を込めたディープキスだと思うよ。それが一番亢奮させてくれるんだ」
 そう煽ったら、それからルイはしばしばキスを誘った。
 ルイは、ディープキスをしながらカリ首を握ってこすり立てれば、男の怒張度が極限に至ることを充分理解して、私の望み通りそれを実行した。
 私はルイを抱きしめ、かぐわしい匂いを追い求めながら舌をむさぼり、同時に、ローションにまみれたカリ首をルイの掌に握られ、こねくり回される快感に腰をよじった。
 ルイはそれを見て微笑み、更に苛烈な手淫で私を追い込んだ。
 私は気をやりそうになって悲鳴を上げる。
 すると、一旦ペニスを放免し、私の顔を覗きながら標的を睾丸に代え、口に含んでマッサージした。皺の入った茶色の肉袋を咥えて、ぐいっと伸ばしたり中身を転がしたりしながらカリ首をさするのが、何とも極楽の気分を誘った。
 ベッドの抱擁は、私がキスを求めて始まった。ルイもそれを待っていたように応じた。
 私は心ゆくまで舌をしゃぶってから唇を離すと、ルイの白い肌にいくつか浮かぶふすべを眼で追いながら、胸のあたりから股ぐらまでゆっくりと唇を這わせた。
 ルイの乳首は大きい。その含み甲斐のある乳首を愛撫しても、「ねえ、クリちゃん舐めて」と、すぐにクリトリス攻めを要求するから、私の唇が胸に停まることはあまりなかった。
 唇を鼠蹊部まで這わすと、恥毛がか細くて柔らかいだけでなく、上手に処理して広がりを抑え、会陰に近い側まできちんと手当していることがわかる。日本人の女は、大陰唇の下のほうまで毛が密生しているのが通常で、不気味に見えることもあるけれど、ソープ嬢は恥毛をおとなしい形に処理していることが多い。
 ルイはスリムな体型だけに、大陰唇がそんなにふっくらしていなくても、ラビアがしっかり育っていた。股を閉じていると、しわしわの左右の肉片が絡み合っている。指で開けると、茶色を帯びた二つの扉は稜線に丸みがあって、ぶよぶよした感じで、厚みはあるが張りは乏しい。
 陰裂は長いほうで、クリトリスもぽってりと大きい。陰核茎部から菊座にかけての肌がそれほど濃くなくても、まわりが白いから性器全体に着色が目立つ。色も形も湿気も魅力たっぷりで、私はいつも見とれた。
 ルイはマットプレイでは私を快楽攻めすることに熱中したが、ベッドでは期待顔で仰向けになり、自分自身がエクスタシーに舞うことに集中した。
 性感は大層豊かで、ルイは口には出さなくても、私の陰核集中攻撃が大好物だった。私もそれを察して、オーラルプレイに精魂込めた。
 ルイは「バギナ派」ではなく「陰核派」だ。それも、幾度も気をやることができるマルチオーガズムの体質だった。大抵の女は一度アクメに達するとこそばゆくなり、続けて刺激されるのをいやがるけれど、ルイは全く拒まなかった。
 吸陰を始めるとすぐに米のとぎ汁のような愛液を流した。とろりと会陰を伝わり、尻の穴の襞に絡みつつ滴り落ちてシーツを濡らし、地図を描いた。愛液は潤沢だけれども匂いは薄い。
 亢奮して小陰唇がパックリ開き、だんだん間隔が狭くなった上端で稜線がクリトリスに集約している。その肉片が厚くて、幅のある稜線に小皺を集めており、陰核茎部はゆったりと長く盛り上がっている。
 毎度その妖しい形状を確認して私は欲情した。
 そのうちに、ルイは右手で陰阜の辺りを吊り上げて、刺激が伝わりやすいように女芯を剥き出し、左手はシーツか私の手を掴んだ。
 亢奮するとはっきりしこるクリトリスもあるけれど、ルイは海綿体の密度が低いのか、それほど堅くならずブヨブヨしていた。それでも、泉の湧出を呼ぶ機能は優れていた。
 私はクンニリングスの幾つかのパターンを繰り出し、流れ出た愛液を尻のそこら中になすりつけたりして愛撫を楽しんだ。
 ルイが笑って言ったことがあった。
「シャワーのところまで歩く間、なんだかお尻の皮膚がばりばりして引きつっちゃって、何か変な感じで、私、一体どうしたのかしらと思っていたら、××さんが私のお汁をお尻に塗りつけて、それが乾いて、そうなったのね。とっても助平ぽいと思ったわ」
 扉を開くと舟型の窪地がなかなかの広がりで、覗く肉壁は微妙な起伏に富み、濡れて鮮紅色が艶やかだ。中指で膣を探るとつるつるの女も多いけれど、ルイの腟壁は細かく襞が刻まれていて、こういうのを上ぼぼと言うのだろう。
 その肉壷は、亢奮が昂まったときには、指が三本結構存分に動かせた。膣だけでなくアナルにもよく指ピストンをした。そんなことをしてもルイが止めはしないから、私はクンニリングスをしながら指によがり汁をなすりつけて送り込んでいた。
 ルイがクンニリングスで快感にひたりきった様が、何とも私の熱情を駆り立てた。いつも私はクンニリングスをしながら先走り汁でペニスを濡らし、シーツに透明な粘液を垂らし続けた。
 馥郁たる香りに包まれたそこからいつ唇を放して合体したらいいのか、私はいつも悩ましかった。
 女芯を吸い立てるその股間から、枕を宛てがって持ち上がった顔を上目使いで覗くと、見る角度のせいか薄目を開けたように見え、長い睫毛が起立し、鼻孔が僅かに開き気味になって、美しい頤が揺れていた。
 秘めやかな吐息の合間に聞こえる「いー、いー」の滲んだ声がとても悩ましかった。それが時々絞り出すようなよがり声になって迸ると、その音域とリズムが私の耳に心地よく響き、それに呼応した躯の蠢きとともに気分を煽った。
 どんな表情になっているのか正面から見たくなって、唇でクリトリスを愛撫していたのを指の振動に替え、顔を近づけた。
 ふわっと香水だか化粧品だかの香りがした。ゾクゾクするような芳しい匂いだ。
「すっごく気持ちいいの?」
 私が囁くと、ルイは眼を薄開きし、顎も少し突き出して、熱に浮かされたようなボーっとした表情で、かすかな言葉を洩らした。
「いー!」
 乱れに乱れて正体を失った恍惚の表情は、私の情欲を狂おしいほどにかき立てた。
 前戯の最中のルイのキスも情熱的だった。
 私が、ルイのラブジュースを唇のまわりにべっとりとつけたまま、上気した顔に唇を寄せると、ルイは化粧の妙なる香りを放ちながら愛らしい唇をつけ、互いの舌を絡ませ、吸い合い、唾液を渡し合ったり、甘い息苦しさが続いた。
 私は四十代までは、ベッドで女に積極的に愛撫されなくてもさほど不満に思わなかった。ペニスが勃っておればフェラチオを求めなかった。特に意識していたのではないが、自分が熱烈に愛撫している間、女がじっと受け身に徹して快感を味わっている姿が好きだった。
 後から思い出しても、ベッドでルイにペッティングさせたりフェラチオさせたりしたことは全くなかった。ルイがクンニリングスで歓びにふるえ、艶めかしく気をやるのを見れば、いつもペニスは怒張した。
 漲りさえすれば、陶酔のルイに奉仕を求めるのは遠慮した。いつも、ルイがイッてから、先走り汁で濡れそぼったペニスを嵌め入れていた。たとえ半勃ちの時でも、力無く股間をさらしたルイの割れ目を見つめ、自分でしごいて堅くさせていた。

 ある時、ルイが質問した。
「ねえ、××さん、お色気ってどうしたら出せるの?」
「お色気というのは基本的には眼の使い方と首の傾け方がポイントだけれど、これは何か天性のもののようで難しいなぁ。後は、とにかく動作をゆっくりすることだよ」
「ふーん」
 確かに、ルイの動作は、初会の時のマットプレイのせわしない愛撫が物語るように、ちゃかちゃかしたところがあった。でも、通っているうちにだんだんお色気が出てきたような気がした。
 毎度のように昂揚に舞い上がるマットプレイが済んだ後、私はブランデーを傾けていた。先ほどまでルイがローションを駆使してエロチックな愛撫をしたのとは無縁のような、お嬢さんっぽい笑顔を見て、何故この仕事をしているのだろうか?と、いつもの疑問が浮かんだ。
 すると、ルイは立ち上がってベッドの端に座り直した。
「ねえねえ、××さん、昨日からゴム摺れでここが痛いの。赤くなっているでしょ。わかる?」
 大きく股を開いて左手で陰唇を開き、炎症箇所を右手で指す卑猥なポーズをして口を尖らせた。
 全くルイには敵わない。
 ルイは「初めは、偏屈そうな、とっても気難しそうな、何をしても気に入られなさそうな人だと思ったわ」と、初対面の想い出をよく口に出した。「偏屈そうな、とっても気難しそうな」とはきつい表現だが、づけづけ言うのは心を許したことなのだろう、と私は喜んでいた。
 ルイは私のことをどのように思っていたのだろうか。私の家族のことは聞いたことがあるが、私がどのような仕事をしているのかを尋ねることはなかった。
「××さんには仕事を教えて貰ったから感謝しているわよ」
「××さんって紳士で、上手にイカして貰えるから好きよ」
「××さんがいつも濃厚な愛撫をしてくれるから、私がそれに慣れてしまって、××さんのときしかイケない躯になってしまったら、どうしてくれるのよ」
「貴方は慕情を言葉で表現するが下手ね」
「××さんに私よりも気に入った子ができて、ある日から突然××さんが来なくなるという時が来るんじゃないかしら。それが心配だわ」
 などとルイに媚びられたり、冷やかされたこともあった。
 金津園では、女が指名を稼ぎ、巧みに接客をすると「仕事ができる」と表現する。
 私は、ルイが「仕事」で私と会うのが現前の事実でも、二人が個室にいるのは互いの恋慕が故と思って、束の間の時を過ごしたいと願っていた。妻子と平和な家庭があって、ルイよりも二十歳も年上である事実は、ルイと逢っている間は忘れていた。
 エイズが懸念されるようになって、ソープの人気が低下したその頃でも、ルイには前々日以前に予約の電話をかける必要があった。
 私はそれほど暇人でもないのに、いつも早めに予約をした。予約が成立するとほっとした。そして、その日に予定通りルイが店に出ていると嬉しかった。
 ルイにとって、私はとても好い客だった。
 よく逢いに来てくれて、紳士的で、会話のしようがなくて間を持たせるのに苦労するということがない。如意棒は軟弱ではなく、しかも、鋭敏に反応するから、得意の妙技を発揮しやすい。一方では、私から徹底したクンニリングスを受け、必ずアクメ到達まで攻められる。
 気をやるまでクンニリングスをする客は他にはいないから、私の愛撫を待ち望んだ。アクメになって肉体のもやもやを解消し、「ああ、すっきりした!」と呟くことがよくあった。
 私から嫌なことは決して強要されない。いつも冗談まじりの愉快な会話がはずんだし、私と色恋の心理戦争を楽しむことができた。

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