夏美 1

 ネットのBBSを見ていると、つきあいたい女性かどうかの判断で、その容姿が「許容範囲」かどうかの言い方をよく見る。
 これは見た目からの「許容範囲」だが、対面して会話などすれば、女性の振るまい方から性格面、賢さのレベル、慎ましやかさ、陽性度などの希望の程度により、ここでも「許容範囲」の判定がなされる。
 ソープで遊ぶ場合、相方をこの総合的判断から許容範囲外と判断し、場合によっては(このメス豚すべた!)と思っても、ファックはできるのだから、やることはやって裏を返さないということになる。
 ただ、ファックという、人と人とのつきあいの中で別次元的な交流をすると、この総合的判断よりももっと広い面から当該嬢が許容範囲内に転ずることがある。滅多にないことではあるけれど、私はそういう通い女がいた。
 もっと広い面とは何か。それはセックスが面白いということだ。器量と性格で疑問視しても、性的官能が淫らで愉しいレベルなら、女性をその方向に導ける男にとっては、容姿と性格面で最高でも性的亢奮が殆ど得られないような女性やセックスに超潔癖な女性よりはファック相手として素晴らしいのだ。
 私が恵里亜に入り浸りの平成五年にそういう嬢に通うようになった。
 性交という、人と人とのつきあいの中で端的な交流が群を抜いて愉快な所以だ。
 私は金津園の恵里亜で、平成五年の秋に、美貌の梓、純真な由美、天真爛漫なローザの三人の女に通っていた。
 日頃男に気をやらせることに努め、エクスタシーまで昂まることが滅多にない若い女を、熱烈なオーラル愛撫で快感に痺れさせ、その結果、思いがけないほど親密につき合うことができた。
 女もソープ遊びに慣れた私が常連客になり、自らも愉しむことができて歓んでいる、と私は見ていたから、すっかり嬉しくなって、所得不相応に恵里亜に入り浸っていた。長年金津園に通っていても、そこまで親しくなって性的交遊を満喫できることがなかなかないから、ソープ遊びの醍醐味を味わった気分になった。
 掘り出し物は続くものだとほくそ笑み、ついでにもう一人若い女に会ってみたいと思った。
 初美という美女に興味があったので、私は十一月のある日恵里亜に電話をして、いつも会っている三人がたまたま休みだった時に、これは丁度良い機会だと思って予約を入れた。
 ところが案内されてエレベーターに乗ろうとすると、中で待っていたのは写真で見覚えの初美とは別人だった。それほど若くもない夏美が張りのない表情で立っていた。
 初美と夏美とを言い間違えたか聞き間違えられたようだと察して、手違いを呪った。
 夏美には梓の勧めで一昨年一度入浴したことがあった。その時夏美は愛想を全く見せず、話がまるで弾まなかった。私は夏美が自分を嫌だと思っているのではないかとさえ思った。
 金津園に長年通っていると、まともに会話せず、うち解けにくい女を時々見かける。そんな女が上手にマットプレイをした例しは殆どない。やはり夏美はマットプレイをしても気が入っておらず、全く技になっていなかった。僅かな時間乳房や太腿で私の躯を撫でただけで、興ざめするような事務的な動きだった。
 私がペニスを揉むように頼んでも、素直に応じず、背中や胸や腿をさすっていた。夏美のやり方は淫らなものとは程遠く、まるで意地でも陰茎なんかに触らないと思っているかのようで、ペニスが猛々しくなる気配を見せぬまま短いマットプレイが終了した。若くはないのにこれではどうしようもなかった。
 休憩の間、再度マットの仕方をアドバイスすると、夏美はうるさそうな顔をした。私は会話らしい会話もできず、夏美の堅い態度に鼻白んで、この女に入ったのは失敗だった、と悔やんだ。
 夏美は私の助平心を消火してしまうぐらい愛想がなく、私に関心を向けることが全くなかった。
 しかし、こりゃあ駄目だと思っても、ベッドではまめに努めるのが私の遊び方だから、いつもの通り丹念に秘所を愛撫した。夏美はかなり濡らして、よがっていたけれど、終着には到らなかった。
 私はろくすっぽものも言わない女という不快感で、結局、一過の味気ないすさびになった。
 次に夏美の顔を見たのは二ヶ月前の九月のことだ。
 恵里亜の六人の女が定休日に東京ディズニーランドへ出かけるところに、私は名古屋駅の上りのホームでばったり会った。夏美はその一行に加わっていた。
 六人のうち梓と由美は私がいつも遊んでいた。私は馴染みの女のプライベートな姿を見て喜び、列車が到着するまでその二人と談笑した。
 うきうきして語り合いながら、残りの女の容姿を確かめた。
 店で見た写真の顔を思い出して、写真よりも実物のほうが良いか悪いかと一人一人眺めていると、夏美が厳しい一瞥を向けた。
(何よ、この助平親父は。こんなところで私達に言葉をかけて!)
 そう言いたげな、まるで可愛げのない顔をした。夏美は口許がいくぶん突き出ているから、黙っているとふくれっ面のようで、ただでさえ取っつきにくい顔だ。
(私を憶えてはいないな、当然かな)
 夏美の厳しい眼差しに、私は平成三年の初会の味気ない遊興を思い出した。
 駅で私が談笑した梓は二十八歳で長年の馴染み、由美は二十三歳でその年の二月から毎月通っていた。
 十月に私は梓と遊んだ時に、駅で夏美の視線が冷ややかで厳しかったことを話した。すると梓は、あの日新幹線の中で夏美に、私が以前に一度入った客だと教え、それを聞いた夏美が驚いていたと説明した。
 私が一昨年に夏美に入浴したのは、梓が勧めたからだった。
「あの子はほんとにおちんちんをさわってくれないねえ。何故、あの女を俺に勧めたんだよぉ」
「夏美さんってほんとに仕事をしないわねえ。あそこまで夏美さんのマットが下手だと思わなかったもん。この前彼女と一緒に二輪車をしたとき、あんまり何もサービスしないのであきれたことがあったのよ。彼女がマットをするのを見ていて、殆ど何もせずにあっさりと終わっちゃったので『なっちゃん、それだけしかしないの。たったそんだけ? いつもそうなの』と訊いたら、彼女、眼見開いて『うん』だって。それで、『そんなの駄目。私がするのを見ていなさい』と言って、私がマットをして見せたら『わー、そんなことするのー。貴女、すごいのねえ。私にはできないー!』と、びっくりしているんだもん」
「ほんと、あの女は、金銭を対価として女性器を貸します、貴方が私にちんちんを嵌め入れて腰をパコンパコンするのはいいですけれど、私はよけいなことはしません、という女だぜ」
 夏美はもうベテランと言っていいのに、仕事の仕方は全く変わっていないようだ、と私はあきれた。
 そんな会話をした翌月、初美を予約したつもりなのに、夏美がエレベーターの中でお辞儀も会釈もせずに、あれっ?という顔で立っていた。

 夏美に意に反してまた入浴する羽目になるとは思っていなかった。
 予約をするときに名前を言い違えた可能性もあるので、女の変更を言いだしにくい。それに、冗談じゃあないぜと思っても、顔見知りであるだけに、エレベーターの前で顔を見たとたんに女のチェンジを店に求めるほど思いやりのない男ではない。
 女房がいても熱心にソープ遊びをして、恵里亜で毎月三人の女に通うような分不相応の放蕩をしているから「天罰だ!」と舌打ちした。
 梓や由美よりもはるかに凡庸な顔の夏美が驚いた表情になっているのを見ると、クソーッ!と、自分と店と女に腹が立つ。案の定夏美はエレベーターの中の数十秒間を愛敬良く振る舞うこともなく、私は白けた気持ちでエレベーターが止まるのを待った。
 夏美は部屋に入っても積極的に話しかけなかった。
 夏美は、私が梓を贔屓にして恵里亜によく来て、近頃は梓の他に由美とローザにも毎月通う豪気な遊びをし、店にとっても大変ありがたい男であること、それと、かなり以前に一度会ってもその後裏を返していないということを、親しい梓から聞いている筈だ。
 ものにできれば上客になるという打算がベテランなら働くだろう。いつもどういう遊び方をしているのかも聞いているに違いない。
 夏美が、殆ど二年も経った頃に再び訪れた私にどういう態度を取るのか興味があったので、私は夏美にちゃらちゃらと話しかけるのを控えた。控えたというよりは、気落ちして喋る気にもならなかった。何しろ手違いで会っているのだ。
 夏美は、私にあまり視線を投げもせず、「服をお取りになって」などという愛想の良い言葉も出さずに、手ぶりだけでそれを求め、無言で服を片づけた。
 私が半裸体になっても、夏美はまだ服を脱がない。床に座ったまま何をするわけでもなく、澄ました顔であらぬ方向を見ていた。
(相変わらず固いなぁ。この女は店の常連客の中でもとびっきりの上客に商売っ気を出す気もないようだぜ。俺のほうからお世辞の一つも言わなければならないのかな)
 そう思うと、会話もはずまない。
 歳は確実に二十代後半だろうに、十代の娘のように前髪を垂らしているのが何となく滑稽で、初対面の時の味気なさや梓の話を思い出すと、どうにも感興が湧きそうもない。
 何か冗談でも言おうかと考えていると、夏美が口を開いた。
「もしかして、貴方は名古屋駅で会った人?」
「うん、そうだよ」
(会った人?とはどういう言い方だ。二ヶ月前だぞ。それに、「ですか」か「かしら」ぐらいは語尾につけたらどうだ!)

「いつもは梓さんと由美さんに入っているんでしょ?」
「うん」
(微笑みぐらい浮かべて質問したらいいのに!)

「駅で梓さんに聞いたんだけど、貴方、前に私に入ったことがあるんでしょ?」
「もう、殆ど二年も前だよ。僕のことは憶えていないだろう?」
(こっちは、つまらなかったことをはっきり憶えているんだぞ!)

「煙草吸わしてね」
「どうぞ、どうぞ」
(確認する心があるのなら、もう少し愛想良くしたらどうだ!)

 これだけの会話がすんなりと進んだわけでもなかった。
 そして、私は、女が煙草を吸うのを気にかけることはないけれど、長年の経験で、会うなり煙草に火をつけるソープ嬢に、楽しく男を遊ばせようとする気立ての良い女がいなかったことを思い出して、苦笑いを浮かべた。
 何故、この人、今になって私のところに来たんだろう? 今までマットの上手な女ばかりに入っているのに!と考えているのだろうと想像して、顔の正面を見せないまま紫煙をなびかす、決してにこやかとは思えない横顔に視線を走らせた。
 エイズ問題で金津園があおりを食らった後恵里亜に在籍の女はそれほど多くなく、皆きちんと出勤して、控え室で待機している。皆でにぎやかにお喋りし、結構客の話も出て、私は自分のことがよく話題になる、と梓や由美から聞いていた。
 夏美は、梓と由美の二人が自分よりも男の躯をしっかり愛撫することを知っているはずだ。
 私が女にねちっこいフェラチオと手淫を求めることも、夏美のように、股を開いて、ただ男のピストン運動を受け入れるだけの、妙味のない応対で済ませる女は全く好みではないということも、その二人から聞いているに違いない。
 そうだとしたら、私が指名して訪れたことは夏美には怪訝な筈だ。でも、間違いで入浴することになったと教えても何もメリットはない。
 フロントにブランデーを頼んだのがなかなか部屋に届かないので、夏美は会話もそっちのけで大層気を揉んでいた。前髪を簾のように落として、眼が隠れるぐらいにしているのが歳に似合わない。口許が突き出ている顔はカワフグを連想させる。
 二度目だから、夏美から話の接ぎ穂に、どうしてまた会ってくれたの?という質問が出そうなものだけれど、そんなことも言わない。
 愛想のいい会話もせずに扉のほうにちらちら視線を向け、ブランデーと氷が届かぬことに苛立っているのは、親しい仲間の常連客が自分のところに来たことに困惑して、会話も間が持てなくてそのような態度をしているのか、それとも、フロントの手抜かりをひたすら恐縮してそうしているのか、判断しかねた。
 私も生来それほど多弁ではないから、夏美の戸惑った顔を見ていると、何か会話のねたをと思っても話が思いつかない。
 私が素っ裸になっても、夏美はユニフォームを着たまま座っていて、言葉もろくにかけないから、十一月で部屋の暖房が効いていても寒々とした感じがする。
 夏美はブランデーのロックを作り終わるとようやく服を脱ぎ始めた。
 地味な顔に似合わず、カットの深い、大胆なパンティを穿いていた。無言で、背中を向けて脱いでいるから、私は、尻がもっこりと浮き出たストリップシーンを眺めても何の感興も覚えない。
(今日はついていない。ボーイの馬鹿たれが! ハツミがナツミだなんて)
 悔やんでばかりいてもしょうがない。私は夏美の仕事の取り組み方を、いや、私への応対の仕方をその日だけでも変えさせることができるか、やってみようと思った。
(親愛の雰囲気が出そうになくても、会った以上そうでもしなきゃ、つまらない。この女が態度を変えるかどうか試してみよう。頻繁に店に来ていることを知っているからには、俺に興味を持たないはずがない。演技でも愛嬌が出るようにしてやる!)
 まず名古屋駅のホームで出会った時、(何よ、この助平親父は!)と冷たい視線を感じたことを語った。
 夏美は「ほんと、そうよ」と頷いて、いきなり切り込まれたことに堅い表情を少し崩した。
 ソープ嬢という特殊な職業をしている女が、行楽に出かけて仲間同士で愉しんでいる時、女の誰かに客になって通っている男が、常連であることをいいことに駅のホームのような落ち着かないところで何やかやと話しかけて、仲間の一団をしばらく分断するのは、同行の第三者からは許し難いに違いない。
 あの日私は梓や由美と話し合っている時、夏美の睨みつけるような視線を受けて、そう思った。
 次に私は、初会のときに夏美のマットプレイが大層下手くそでがっかりしたことと、それから二年近く経っていても、男を魅了するようなサービスはしていないと想像していることについて話した。
 もともとそれほど愛想の良くなかった由美が、接客の仕方についていろいろと努力をして、最近はなかなか人気が出てきたこと、恵里亜に移ったばかりのローザがとても愛嬌があってすぐ売れっ子になったこと、更に、その二人が夏美よりも稼ぎがかなりいい筈だということも指摘した。
 夏美は、ずけずけと言うのねえ!という表情を見せても、私が恵里亜で存在感のある上客だから、素直に耳を傾けていた。
「私、仕事が上手くできるようになりたい。マットのやり方、教えて下さい!」
 視線をしっかり合わせるようになった夏美が真剣な顔をして、その口から意外な言葉が出てきた。
「よし、僕が本当のマットを教えてやる」
 私は教えるのが好きな性分だ。ソープの仕事のやり方がわからないから教えて、と頼られると、へつらっているのではないかと疑っても、結局その気になってしまう。
 夏美は百五十五センチぐらいの小柄な躯だった。バストも小さく、さほど魅力的な体型ではなくても、私は突然その気になったから、夏美がいそいそとマットの準備をしているのを見ると、ウエストが締まって尻がもっこりしたプロポーションがやけに目に映った。
 肌は滑らかで、乳房も小ぶりながら張っていて、しっかり曲線のついた後ろ姿がなかなかのものだ。丸顔で頭に長い髪を束ねた小柄な女の裸体というのはどこか愛らしく見える。
「君が思いつく一番濃厚な動きをマットの上でしてみてよ」
「うん」
「とにかくねちっこくちんちんを攻めるんだよ。少しぐらい手荒くされたって、僕のちんちんは梓の強烈なこすり技で鍛えられているから大丈夫だよ」
「梓さん、マットが上手だもんねえ」
「いやいや、うまい、下手、の問題ではないよ。ちんちんをさわるのが愉しいと思ってしているかどうかだよ。愉しいと思ってしておれば、自然と男を亢奮させる動きができるものだぜ」
 私は夏美が冴えない表情から生き生きとした顔になったと感じて、マットに腹這いになった。
 最初は黙って夏美のプレイを受けていた。その動作は二年前から進歩が見られず、いわゆる正統的な仕方、「滑って、転んで、つるりんこ」と表現できる、性の素人の客が喜ぶお遊びだった。
 あらかじめ動作のポイントを説明しておいたのに、夏美は棹や金的へねっとりとしたタッチもオーラルの愛撫も全くしなかった。ただ、私の躯の上で小柄な肉体をヌッタリくねらせるだけだ。でも、舌を背中や脇腹に這わせるのは二年前にはしてなかった筈だ。
 私が俯せになるマットプレイで、乳房や唇を私の背中に押し当てている時間は長かった。
「私、仕事が上手くできるようになりたい……」
「よし、僕が本当のマットを教えてやる」
 その会話の後だからこそ、夏美が気合いを入れてやっていることは丹念に背中に這う唇の動きで伝わった。でも、夏美は同時にペニスやその近くを弄ってやろうと気を回すことがない。
 ローション液にまみれたペニスを口に含むのを嫌がる嬢はいる。でも、ローション液のついた尻たぶに夏美が唇を這わすなら、股ぐらからペニスを引き出してフェラチオをして貰いたい。せめて、指でペニスをネットリとかまって貰いたい。ペニスを可愛がろうという心がないのは、金を取ってする仕事にすらならない。
 私は相手が好みのタイプであれば、ベッドでは閨房の技を駆使することによって、特に馴染みになれば愛情も感じたりして、心から欲情し、ペニスが自然に怒張した。
 けれども、マットプレイは私が受け身になるので、たとえ相方がどんなに好みの女でも、ペニスにはっきりした刺激がないと不如意であることが多かった。金津園に通い始めた三十代半ばの頃からそうだった。
 女に淫らにカリ首を刺激されたい願望があって、しっかり勃起するにはローションにまみれた股間に指が厳しく這うか、強いフェラチオが必要だった。女が淫奔に私を愛撫する気持ちがないならば、心も肉体も昂揚しなかった。
 夏美のやり方ではちっとも楽しくない、と不満をこぼして、ペニスの強いこすり方を実演して説明した。
 耳新しいことを聞いたからか、単に迎合しただけなのかわからないけれど、夏美は面白がって聞いた。
 でも、実地にやらせたらやはり下手だ。豆腐を扱うような手つきで、夏美は男の陰部をさわるのがよほど嫌なのか、と勘ぐりたくなる。
 まるで聞き流しているかのように、言う通りのことを全くしないから、私の精力のないのを棚に上げて小うるさいことを言って、この親父は鬱陶しい奴だ!と不快になっているのではないか、と想像した。
 男が快感に痺れるカリ首の揉み方を教えるという、妙な授業を、初対面同様の女にして、どう工夫しても露骨な言葉を言わざるを得ず、気恥ずかしさと腹立ちをこらえているのに、まるで理解不足の実演を返されて、私は不満足の気持ちのまま俯せのマットプレイを切り上げた。
 男が俯せの時は、ペニスの愛撫などしなくてもいいと思いこんでいるソープ嬢がいる。夏美がそう思っていたら、仰向けのマットプレイのほうはもう少し形になるかもしれない、と期待することにした。
 少しでも肯定的に考えようと思ったが、仰向けのマットも似たようなものだった。やはり乳房で私の腿を撫でたり、胸に唇を走らせたりするだけで、ペニスは放ったらかしか、優しく手を添える程度だ。
「先のほうをぎゅっと掴んで、厳しくこすらねば駄目だよ。ローションをつければ、おちんちんはちっとも痛くないんだから」
 しつこく説明したら、俯せのときよりはペニスにさわりやすいので、少しだけカリ首の弄い方がさまになってきた。それでも夏美は、「こんなことされたら痛くないの?」と私に尋ねたりした。
 夏美がやり方を教えて貰いたいと媚びるように要請して始まったマットプレイだから、気合いの入った取組方を期待したが、お座なりとしか思えないような動きで、金的を口の中で転がしたり、菊座を舐めるなどの大胆な愛撫や、延々と丹念に尺八をするようなことは到底やりそうもなかった。
 朗らかに喋ることもなく、飲み込みが悪いというかやる気がないというか、とにかく平凡なプレイしかできない女と、どうして大金を払ってソープ遊びをしなければいけないのか……と腹が立ってきた。
 あまりマット指導ばかりしててもつまらないし、まるで教え甲斐もないし、それだけでなく、ペニスに芯が完璧に通る気配がなかった。私は困った。
(何やかやと言われて、それでちんちんが固くならなければ、夏美は腹も立つことだろう。おまんφを見て、坊やの元気が出るようにしてやろう。クリトリスをさわせながら、ちんちんを握って揉むなんてことを、この女はするだろうか?)
 それまで夏美はフェラチオをしてなかった。もしそれをさせても、いやいやするのであって、唇で圧迫良くしごかず、ただ触れる程度のものだろう。ペニスの先走り汁を吸い込みもしないようなフェラチオならされないほうがいいから、亢奮しやすい相互ペッティングを69の体勢でしたいと思って声をかけた。
69の形になってよ」
 69は女が男の眼の前に尻を持って来て棹を咥えるから、ソープランドでもかなり過激なプレイと言える。ソープ嬢でもアナルを見られるのを嫌がる女がいる。器量の良くない女ほど、往々にして勿体ぶって尻の穴を隠したがるのだ。
 それに、経歴が長いのにペニスをまともに愛撫しない嬢は、よく言えば慎み深さから、別な観点では、性器を愛撫することが悪しきことと思っているから、69を拒絶するとか、しても、開脚はせずに自由な愛撫をあまり許さない。バギナへの指入れもアナルを弄られることも断固として拒む。
 私は、夏美が69のような交歓プレイをしたことがないようだから、逆向きになって乗るのは嫌がるだろうと思った。
 しかし、夏美は意外にもすんなり求めに応じて、私の顔に向かって股ぐらを差し出した。私は夏美が精一杯協力姿勢を出していると思った。
「僕は軽いフェラチオよりは指でグイグイとこすられるほうが気持ちいいから、手でちんぽこの先っちょをグリグリネチネチと揉んで!」
 夏美がローションにまみれたペニスにフェラチオをしたがらないだろうと想像して、声をかけた。
 そう言われたら夏美が意地で濃厚なフェラチオに挑戦することを期待したけれど、カリ首に触れたのは唇ではなく指だった。しかも、そのフィンガーマッサージはやっぱり圧迫が弱く、いかにも頼りない。快感を感じるには程遠いものだった。
 夏美の尻は後ろにぴょっこり突き出て、横から見るとセクシーな感じがする。でも、尻を正面から見ると尻たぶが内側に寄っていて、谷間に汗やら拭き損なった便やら女の下り物の臭いが立ちこめそうで、何ともいやらしい形に思える。
 そう考えれば猥褻感に満ちているけれど、足を閉じていれば、尻たぶの間にアナルや割れ目が全く覗かないのが魅力に欠けるところだ。
 しかし、69の形になって眼前に尻が突き出ると、いかにも谷間に臭いを閉じこめていそうな尻たぶが開き、アナルがしっかりと浮き出た。ローションで毛が張りついた割れ目の上に、くすんだ色のアナルが浮かんで、何とも生々しい景色だ。
 アナルには綺麗に放射状の襞が入り、その変色した唐傘状の円形を囲むまばらな太い毛が、下の陰裂の左右の土手が盛り上がるにつれて段々と数を増し、クリトリスの左右ではかなり濃くなっている。
 その茂みに守られたラビアはパックリと口を開き、膣口も尿道口も開放状態で、ローション液に濡れて鮮紅色に輝いている。
 ガキの頃不気味に思った防空壕のように、膣孔が暗い蔭に包まれている。光線の加減で着色したラビアの稜線が暗紫色に変じているのがとても卑猥だ。間近に見る陰核茎部は長さも幅も短い。クリトリスも小ぶりだ。
 夏美の愛撫がまるで締まらないものであっても、近視の裸眼の前に丸い尻が大きく拡がると、猥褻で、心を許したようで、何とも結構ものであることには違いない。
 割れ目の内側の卑猥な肉襞やすぼんだアナルを間近に眺めて、ペニスはようやく張り始めた。
 私は尻の谷間の眺めを賞味しながら、左の親指で包皮を後退させ、右の親指で露出したクリトリスを攻めた。
 圧迫は弱く、バイブレーションのピッチは早くすると、夏美は更に股を開いて尻をつき上げ、どうにもたまらないというように腰を震わせた。指が這わせやすいように協力して、愛撫をしかと受け入れただけでなく、なかなか気をそそる喘ぎ声をあげた。
(これは、その気になっているぞ!)
 そう判断して、指責めを口唇愛撫に切り替えることにした。
 菊座に指を這わせながら、顔を持ち上げてクリトリスを吸い立てると、肉体の身悶えが、俯す夏美の二の腕や胸や腹から私の躯に伝わる。
 それまでの夏美の硬い態度から、あっさり69に応じ、アナルを晒して徹底的な大股開きでペッティングを受け入れるのは全く予想に反した。かなり白けていたのが、夏美の腰の蠢きを肌で感じ、吐息を聞く度に、徐々に気持ちが盛り上がってきた。
 温熱の湿地帯から菊座のほうまで密生というほどではなくても、黒々とした太い毛が生えている股間に部屋の明かりが当たっている。眼前の双臀の丸みとかなり色の濃い菊座を眺め、逆さまの舟形の造形が濡れそぼち、愛撫に揺れるのを見て、すっかり亢奮してしまった。
 ペニスを口に含むことをしなくても、カリ首を包む指の動きと秘めやかな喘ぎ声は、夏美が乗っていることを示していた。夏美の身ぶりや手の動きや抱きつく様子が、私に好意を寄せているように思えた。
 二枚の花びらがローションで光っていたのが、いつの間にか愛液でぬめり、開花していた。充分に着色した肉片が充血してポッテリしている。鮮紅色の起伏の間で尿道口が開いている。
 夏美のペニス揉みも本人の亢奮が動きを大胆にさせて、カリ首をこするのがちょっとばかり激しくなった。
「いー、上手いぞ。そう、もっと強く!……あっ、あーっ!」
 私は少し大袈裟に、快感で身をよじるふりをして夏美を煽った。
 夏美はいつも客にバギナへ指入れをさせないだろうから、ここまで気分が昂まっても挿入を嫌がるのかどうか確かめたくなった。
 左の親指で膣口をこねるように刺激し、予告の動きを見せてからそのまま親指を差し込んだ。夏美は拒むことなくペニスを揉んでいた。私は両肘を上げて、左の親指で肉壷の前壁を揉み、同時に右手の親指でクリトリスを撫で、中指で菊座を弄った。
 すると、無愛想というか慎ましやかな夏美に似合わぬ何とも艶めかしいよがり声が出てきた。
「あはぁん……あはぁん」
(こりゃ驚いた。「あはぁん」の声がいいじゃないか)
 親指が軽妙にクリトリスをなぶっているのに見とれた。
(俺のフィンガーテクニックはなかなかのものだぜ。これならばクリトリスは気持ちいいぞ!)
 と、充血した肉の突起が羨ましくなった。
 膣に差し込んだ左の親指に、ぬめった肉の壁が絡みついてくる。微妙のようで、激しいような、得も言われぬ指の三重奏に、夏美はいつの間にか膝や肘で躯を支えることを止め、全体重を預けて胸を私の腹にぴったりとつけた。
 私の胸にのしかかっている夏美の柔らかい下腹がリズミカルにふくらんだり平らになったりして、その度に接触面積が変わる。
(腹式呼吸なのかな?)
 夏美はもうカリ首を揉むことを忘れ、ペニスを握った掌を根元のほうにずり落としていた。その手を突っ張らせているから、ペニスが私の左足のほうに傾き、薬指の先が陰嚢に触れている。
 夏美が顔を私の左の内腿に寄せているから、その深い呼気が陰嚢にかかる。表情は見えないけれど、焦点の定まらない陶酔の顔になっているに違いない。
 私は夏美の恍惚の様に、してやったりの気分になった。
 それで、夏美がもともと気を入れた愛撫を決してしなかったので、(ここであんまりしつこく愛撫させるのも無理強いになっては)と思い、唇も指も秘所から離した。
 夏美がシャワーを取りにすぐ起き上がると思ったら、腰を私の胸の上から下腹部のほうにそろりとずらしただけで、俯せのままじっとしていた。
 仰向けの私の両腿の上に自分の腿を重ね合わせ、両手はすがるように私の両足の土踏まずを掴み、股を拡げたまま余韻にひたっている。天井から見たら、裸の女が地面にたたきつけられた蛙のように股を開いて、恥ずかしげもなく大の字だ。
 アナルの窪みの下に、黒々とした恥毛に囲まれた肉溝がカパッと割れて花開き、眼前に無防備に股ぐらをさらけ出して快感の残り火に悶えるのが何とも情欲をそそる。
 私は夏美のこんもり丸い尻から肩への背面のスロープを脚のほうから見ているから、女の肉体の曲線が最大限に映えてセクシーだ。
(うーん、いいぞ。テカテカの割れ目と毛の生えた尻の穴が何とも可愛いぜ。これはベッドで、二人一緒に助平になって、セックスを謳歌することができるぞ)
 夏美は私が望むようにはカリ首のこすり揉みができないけれど、変に恥ずかしがらずに性感にふるえるところが私は嬉しい。
 このところ二十三歳の由美といい二十一歳のローザといい、少し幼い感じのエロチシズムばかりで、大人っぽい女の艶かしいエロチシズムには当たっていない。
 夏美はその二人と違って肩の後ろに脂が乗って女らしく、肌がむっちりしていて尻の丸みが実に素晴らしい。
 尻というのは、どこかに吹き出物のようなものがあったり、腰掛けたときに椅子に当たる部分が肌が荒れた感じになったりすることがある。妙に骨盤の形が目についたり、尻たぶがいびつに垂れたりすることもある。
 夏美の尻は、無傷の水蜜桃のように全く非の打ちどころがなかった。
 ベッドの抱擁を心待ちする気分になってマットプレイを終えた。

 休憩になって、私はブランデーを飲みながら語り合った。
「僕は貴女には大人っぽい色気を感じ取りたいよ。本当はものすごい助平なのに、それを隠して、おちんちんをちゃんと愛撫しないのは間違っている。……もっとお客が来てくれたほうがいいんだろう?」
「私はがつがつ客を取って部屋持ちになりたいと思っていないし、店長に、もっとしっかりやれとお尻を叩かれるほど、指名が取れないということもないのよ。それなりにお客がついているわ。だから、現状に満足しているの。指名は真ん中程度でいいと思っているわ」
 真ん中程度というのは願望だと思うが、それは指摘せずに返した。
「だけど、この店には、入って一年の子もいれば、三ヶ月しか経っていない新人もいるんだろう。その中で三年も仕事をやっていて真ん中なんじゃー、全く駄目と思わなくちゃー。現状に満足だなんていけないよ」
「そうねえ」
「大体、男の大切なところをしっかり愛撫して、それで相手が亢奮して、おちんちんをばんばんに張らせて、感激してくれれば、自分も楽しいよ。男を亢奮させるのが上手になれば、どうしても二回抜きたい男も二度目をまた楽に堅くさせることができるぜ」
「私、本当に男の人のあそこをさわっていないもんねえ」
「男も女も気持ち良くなるところはあそこだけだ。君だっておまんφをさすられて、とっても気持ち良さそうだった。ほんとにさっきは気持ち良さそうにピクンピクンしていたぜ。あんなに感じたのは初めてだろう?」
「……」
「ベッドで僕のおちんちんをきちんと攻めて、助平になるかい。僕がまた来る気になるように」
「うん、助平になる!」
「僕がもう一度来る気になるなら、相当ソープ嬢としてレベルが高いということなんだよ。今まで仕事のできる子には随分入っていて、何しろ普通の女に僕は滅多に裏を返さないのだから」
「貴方、うちの店の子に全部入っているんじゃないの?」
「いや、せいぜい半分だよ。でも、殆どは裏を返していない。そう誰でも気に入る訳じゃないよ。でも、君のお尻はこんもりといい格好をしているなぁ。あそこも、お尻の穴のまわりまで黒い毛が生えていてとっても猥褻だよ」
 会話をする夏美に他人行儀な表情はなかった。

 ベッドプレイが始まった。
 私は、二年前の記憶でも先ほどのマットでのペッティングにしても、夏美が濡れる体質ではあるけれども、アクメになるのが相当遅いようだと判断した。
(乳首などほっといて初めから入念なクンニリングスをしてやろうか。乳房からじっくり攻めなければならないような恥ずかしがり屋ではなかろう)
 先に横になるように言うと、夏美は、えっ!という反応で、私は一瞬鼻白んだ。かまわず夏美に大股開きさせて脚の間に入り込んだ。
「今度は俺がサービスしてやるから」
「痛くしないでね」
「当たり前よ。そういう男に見えるんかい」
 どんな愛撫をする男なのかマットプレイでわかっている筈なのに、そういう注文をしたからムッとするけれども、気分良く助平をしたいからその気持ちを抑えた。
 私はベッドに腹這いの体勢で直ちにクンニリングスにとりかかった。
 夏美は、私がいきなり股の間に入って驚いても、割れ目を指でまさぐったりせず、舌でクリトリスを撫でることから始めたので緊張を解いた。
 夏美が膝を立てて口淫を受け入れるのが、実に私の気分を煽った。おしめをつけるような格好をして、たたんだ足の腿が豊かで女の太腿らしく、尻が腰からふわっと拡がり、これもまた素晴らしい。
 その両腿の谷間の蕾を唇と舌で愛撫するにつれ、粘り気の強そうな透明な愛液が湧き出た。シーツまでなかなか流れ落ちずに、アナルの手前で大きな玉になった。白濁のない愛液にあまりお目にかかったことがないから、面白がって滴りを観察した。同時にそれは、粘り度も大層なものだった。
 膣の奥から出る淫水は白く濁ることが多いが、夏美のは、膣口のまわりから滲み出る愛液なのだろう。
 二年前の初会で私がオーラルの愛撫をすると、夏美はぐしょぐしょになるまで濡れても、アクメまで到達しなかった。
(今日はイクだろうか?)
 と、夏美の反応を冷静に観察しながら愛撫を続け、ふと視線を夏美の顔に向けた瞬間私は発火した。見ると、夏美は両肘で上体を支えて顔を持ち上げ、おちょぼ口を半ば開き、私が唇や舌を動かす様をじっと覗いていた。
 愛撫されている光景を、私がそうせよと求めてもいないのに、ベッドから頭を持ち上げて、自らそれを見たがった女は、そんなにはいない。
 摩訶不思議なほどの快感をもたらすクンニリングスが一体どういう風にされているのか、眼で確かめたいという夏美の亢奮を、そのとき私は感知した。
 いつの間にか夏美はまた頭を下ろしていた。
 夏美は腰の辺りまで届く髪がしっとりと黒いのが長所だ。その髪が枕に広がっている。
「いぃ、いぃ」
 夏美の喘ぐ声が私を煽った。
 私は、夏美がベッドでいつもただ寝そべっているだけで、男の愛撫が早く終わって、自分は何もせずにペニスが隆起してくれることを期待し、さっさと、ちんちん大きくして、サックをつけさせろよ、というような心だろうと想像していた。
 だから、夏美のクリトリスをネットリと舐めながら、同時に夏美にもペニスを愛撫させようと考えた。夏美にソープ嬢らしい仕事ができるようにさせたいというお節介の気持ちと、惚れ込んで通っているのではないから、ペニスを弄われなければ怒張してくれない危惧があったからだ。
 それで、相互愛撫のしやすい添臥の69の形に躯を移動した。
「おちんちん、さわって!」
 そう求めると、夏美がペニスを掴んだ。
 私は夏美の股間に顔を突っ込んだ。
 クリトリスのまわりがふくよかで、しかも側臥の体勢で、夏美が股間を突き出していないから、クリトリスが刺激しにくい。それでも夏美の片足を抱えた手の指先で大陰唇の片側を引き上げて、ひたすらクリトリスを唇と舌でこねた。
 風俗嬢が性行為を楽しんでやっていないと、お座成りの尺八やペッティングをするだけになる。夏美もこれまでそのやり方で通してきたに違いない。最初は、やはり大層ソフトタッチだ。
 マットプレイと違ってローションがないから、強くこするのをためらっているのかもしれないし、先走り汁でべとついているのを気味悪がっているのかもしれない。一体どっちだろうと私は思う。
「もっと強く。助平になって! 気持ち良いんだろ?」
 そう声をかけられて、夏美が濡れたカリ首をためらわずに握るようになった。
「もっとしっかりこすって」
 次第に相互ヘビーペッティングらしくなった。
 互いに横寝したまま、肉棒の先を刺激して私が微妙に反応するのを観察し、同時に自分もポイントを刺激されて快い、その愉しさがわかるようになったのだろうか、夏美のカリ首へのこすり揉みにしつこさと圧迫が出てきた。
「初対面で、心に飛び込んだ感じがする女がいいな。そういう時に男はまた会おうと思うんだよ」
 私がベッドに上がる前にそう呟いたら、夏美が言った。
「壁を作ってしまう子がいるわねえ」
 それを聞いて私は、そう言うあんたがそうなんだよ、と心の中で非難した。でも、夏美が横寝したまま左足を浮かせて股を開き、動きづらい体勢でも精一杯手を動かして、快感を与えようとしているのがわかると、夏美は態度を変えている!とあらためて思った。
 夏美は69の体勢にもかかわらず、ペニスを口に含もうとはしなかった。
(激しい相互ヘビーペッティングなんていう、あまりやり慣れていないことをしつこくさせては、無理があるかな?)
 そう懸念して、夏美の顔の前から腰を離し、仰向けになった夏美の足の間で腹這いになった。眼前の股ぐらが粘りのある愛液でぴかぴか光り、黒々とした恥毛がいくつかより合わさっていた。
 にんまりして肉壷に中指を入れた。するとかなり余裕があったので、人差し指も入れた。指二本をピストンしながら唇でクリトリスを攻めた。
 指の股についた愛液が接着剤のように粘っこい。また、夏美の腰の蠢きと喘ぎ声が艶めかしい。
 それまで教育気分でもう一つペニスが盛り上がらなかったけれど、夏美のよがり声を聞くとようやく性的意欲がかき立てられた。
 包皮を押し開く指先に気合いを入れ、更にクリトリスを舐めこすった。
 しばらくクリトリス攻めに集中しても夏美のよがり方があまり変わらないので、到達はまだ先かな?と思っていると、突然夏美が「イキそう!」と喘いだ。
 私は、ここぞとばかり両手で陰阜の皮膚を引っ張り上げてクリトリスの露出度を高め、舌面全体で愛情を込めてこすり上げ、頂点の快感を呼び起こした。
 夏美が躯を震わせて達する時、逃げようとする腰を両手で押さえて、とどめのクンニリングスを続けた。
 夏美は、「あっ、あーっ」とうなり、苦悶するように身悶えしていた。
 さあ、嵌めましょう、というような余裕が夏美は全くなかった。打ちのめされたような有様だった。
 ペニスは準備ができていた。躯を起こしてインサートを促すと、飛び起きて防具を被せようとする気配がない。
 恵里亜はコンドームを使わせるのが方針だから、夏美の心に感謝し、ご馳走さま、と心で拝んで挿入した。
 一突きする度に呼気に反応があり、ぐしょぐしょの膣が微妙な音を発した。ズッポリズコンズコンのピストン感覚の具合の良さに喘いだ。
 私は、夏美がいつもは、男に肉体を貸し与えているというような、平静な顔で抽送を受けているだろうと想像できた。でも、気をやってから嵌められた顔は上気して乱れきっていた。
 夏美がエロビデオの女のように明瞭な快感の表現をしなくても、生のペニスの動きを愉しみ、燃えているから嬉しかった。マットプレイの途中までは全く白けていたが、そんな展開になるとは意外だった。
 私は初対面の時の排出行為とは雲泥の差の情交感と放出感で激しく果てた。
 情熱の抱擁が終わって、シーツを見ると、染みの面積はそれほど大きくなくても、真ん丸で、なにやらベトベトした様子だ。
 粘り気が強くてあまり広がらないラブジュースの染みが、白いシーツの下に敷いてある色物のシーツにどんな地図を描かせているのか確かめたくなった。
 上の白地のシーツを捲って覗くと、紺地のシーツに、使われなかったピンク色のサックがドーナツ形のまま寂しそうに転がっていた。
「あー、気持ちよかったぁ!」
 笑顔で叫ぶ夏美の一声が何とも耳に快い。
 瓢箪から駒という言葉があるけれど、そう形容できることを今まで経験したことがない。実に瓢箪から駒そのものだぜ!……と感慨深かった。生はとにかくありがたい。

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