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ソープ遊びを語る2

金津園を衛生面から検討
 金津園の店は新人の女を採用すると、梅毒、淋病、エイズから覚醒剤に至るまで、病院で全て検査を受けさせる。この検査は入店後も毎月行い、その筋からは特に覚醒剤の尿検査を厳しく指導されている。
 フェラチオは接触感染の危険度が性交と同等だから、摂食器官を使うヘルスがこういう点では全く野放しで、生殖器官を使うソープランドだけに規制が徹底しているのは何だか変だ。
 ソープ以外の売春とピンクキャバレーはとても病気を貰う危険性が高いと思う。相対的に安全なソープとヘルスを比べると、ソープのほうが客層が良くて、客からの感染の可能性が低いと想像できるし、また、衛生管理が格段に厳格で、病気が蔓延しにくいと思えることから、私はソープのほうが安心して遊べると判断した。
 嬢の受診は、店が指導する以上に進んで医院に行くのを私は大歓迎だ。私が何度も入浴した嬢はそういう手堅いのばかりだった。
 これを書いたとき現在の高級店に相当する店はなかった。高級店のほうが非高級店よりも嬢に対する受診要請が厳しい。生セックスだから当然の姿勢だが、ゴム着セックスであろうといくらでもSTDの感染があり得る。コンドームを使うのは時間的にも箇所的にもほんの一部分の防御に過ぎない。
 だから、嬢が医者に診てもらう回数の少ない非高級店はどうも感心しない。それに、高級店の嬢のほうがSTDに対する関心が高い。
 そもそも高級店のほうが、客層が雲泥の差で良い。高級店と非高級店の客の平均年収の差は結構あると思う。嬢の感染はプライベートセックスで持ち込むよりは客との性交渉で罹患するのだから、そういう点では高級店で遊ぶほうが安心だ。
 非高級店の客には安い買春に躍起な男がよくいる。この手合いが怖い。高級店の客のほうが既婚者の割合が高く、こちらのほうがSTDに感染している客が少ないだろう。私は高級店で遊ぶようになってからこのことに充分着目し、高級店ばかりで遊ぶようになった。
 2ちゃんねるのソープ板には、高級店ではNSだからSTDの危険がいっぱいだという書き込みがよくあるが、あれは高級店の客をやっかむみっともない男の発言だ。ソープの待合室で一緒になった男の服装と物腰を観察して、(こいつはSTDを持ち込まないだろうか)と検討するようにしたらどうかと思う。再度書くが嬢の罹患はプライベートセックスで得るのではない。
 なお、本指名数が少なくて贅沢に暮らしたがる子→医療費を出し惜しみする→受診回数が店の指示する回数かそれ以下 という傾向がある。性格がすべての行動を差配する。
 金津園の女は病気の検査を月に一、二回しっかり受けるけれど、部屋の風呂とか器具の消毒も最後の客を送った後に、存外きっちりとしていた。
 平成五年ぐらいのことだが、恵里亜のローザの常連客で毎週一回必ずラストの時刻に来て、部屋の掃除を手伝うのが趣味の男がいた。ローザが面白がって私に披露した。
「ダブルの時間で入るのに、半分は最後の掃除の手伝いなのよ。そんなことをするぐらいなら二回セックスをすればいいのに、その人、いつも一回しかしないの。風呂場の掃除なんかを手伝えば、私が心の底から感謝すると思っているのよ。お金がもったいないわよねえ。本当に変わった小父さん!」
 消毒はなかなか徹底していて、保健所の指導は我々が想像する以上に厳しい。
 衛生の観点からは洗浄がとても大切だ。ソープ嬢は頻繁に陰部を洗う。だから、股間に唇を這わせると、百人中九十六人まで無味無臭が私の経験だ。秘部を弄われて感じはじめた後ならばともかく、最初は何も匂わない女が殆どだった。
 それで、ソープ嬢が陰部を洗っているのを観察すると、素人の女と違って洗い方が完璧だ。ラビアの蔭になっているところも秘肉の窪んだ内側も、指でかき分け、また、膣に指を入れてしっかり洗っている。しかも、一日に何回もシャワーを使う。
 素人の女は結婚をしない限り、また結婚しても普通そこまで徹底して洗わない。商売上膣を使わないファッションヘルスの女が局所を洗うのを観察するとそれが判る。
 左手にシャワーを持って右手三本の指でごしごし洗い、素人の女よりは丹念でも、ラビアやクリトリスの辺りを肉襞をかき分けて溝の奥まで洗っておらず、恥毛や陰裂の表面を清めているに過ぎない。ソープ嬢のように、陰核包皮を捲り上げたり、膣に中指一本奥深く差し入れ、シャワーの湯を注ぎ込んでかき回すような徹底した洗浄をしていない。
 だから、ヘルスの女十人に秘部へ唇を這わすと、八人ほどは刺激臭か塩味がした。
 若い女は小陰唇の蔭や陰核包皮の裏に恥垢が残っていることが多い。恥垢がついてなくて無味無臭だった何人かのヘルス嬢に前の仕事を尋ねると、ソープで働いていた、と皆答えるから面白い。
 ソープの女の陰裂があまりに無味無臭だから、もの足りなく思うことがあった。でも、馴染みの女の生理が近い時に、陰核包皮を剥き上げて舌を這わせたら、存外と初めから濃い味がして、攻める度にいつもより腰の蠢が激しいと、なるほど、今日は匂うなぁ!と思って納得した。
 アダルトビデオの制作関係者が、ビデオに初めて出演する小娘達の性器の、あまりに洗浄の不完全なことを歎く裏話を読んで、ニヤリとしたことがあった。
 セックス経験は皆豊富なのに、ラビアの裏側も陰核包皮の内側にも恥垢がしっかりついている女ばかりで、アンモニア臭や饐えた臭いに、これではたまらんとシャワーをもう一度浴びさせて、撮影を開始したら、やはり滓が殆ど残っていた、という経験があきれるほど多い。
 そんな小娘に性器の洗い方まで指導しなければならない、と天を仰いで嘆息している。新規登場の素人女の殆ど一〇〇%がくさいおまんφだ、と断定しているのが面白い。
 世の母親は自分の娘に性器の洗い方ぐらいは教えておくべきだ。しかし、その母親の方も、亭主がオーラルセックスをしないなら、日頃まともな洗浄をしていないだろうから、果たして正しい指導ができるだろうか。入浴する度に、あれだけ起伏の激しいところからきちんと恥垢を洗い落としている母親は全体の二割か三割ぐらいしかいないのではなかろうか。
 更に私は考える。
(ちゃんと正しく割れ目を洗う女は、性風俗で働く女と、日頃肉体関係のある相手からオーラルセックスをされている女ぐらいだろう。だから、官能小説やポルノの映像で女が初めてクンニリングスされて見事に昂揚するシーンが、猥褻に、時には、叙情的に表現されていても、同時に、男が女の恥垢と悪臭に困惑するのを描いているものが殆どないのは、どうにも現実離れしている。せいぜい仄かなアンモニア臭を微笑ましく思って唇をつけるか、小便くさいのがかえって男の劣情を誘っている描写が見られる程度だ。それはおかしい。絶世の美女だろうが、まともに洗っていないものをクンニリングスするのは、惚れた女でない限り殆どSMか拷問の世界だぜ)
 金津園で働く嬢には、ヘルペス、コンジローマ、クラミジア、喉淋などの疾病経験者がやはりある程度の割合でいる。
 だから、金津園で遊んでこのようなSTDに罹る客はいる。ただ確率的にはそれほど高いものではないと思っている。
 余談だが、膣の洗浄について素人の女はまるでだらしないことがある。平成19年にViViのルカというベテラン嬢に聞いた話だが、店で講習を担当していて、業界入りしたばかりの新人に性器の洗い方を指導したときに驚いたそうだ。
 膣の洗浄を実演し、生徒が指の動かし方の飲み込みが悪いので、指の使い方を教えるために生徒の膣に指を入れた。すると、下り物の白い塊がボロボロと出てきてびっくりした。処女でもないのに、指を入れて洗ったことがないのだ。
金津園のこといろいろ
 私は金津園の店に長年通ったからソープの世界のことをいろいろと見聞きした。
 通いはじめた当初は多少の努力をしてユーモアのねたも仕込んだ。相手の眼を見て談笑しながら、心の動きを推察し、女が一層うち解けるよう会話に注意を払って、女から様々な話を聞き出して楽しんでいた。
 処女喪失の時期や入店の経緯などは尋ねる男も多いだろうが、これに加えて、入店時に受けたマット指導の内容、親にソープの勤めをどのようにごまかしているのか、店の在籍者の数と当日の出勤者数、控え室の雰囲気、店長のセクシャルハラスメント、売れっ子の意外な秘話、全く売れない女のからかい話、使用したサックの始末の方法、稼ぎの状況、いけ好かない客に早く気をやらせるための努力、店で会った有名人、性病の感染履歴、オーナーや店長の裏話、アンネのときの対応の仕方、このような、客には言いにくいことを親しくなった女から聞き出して面白がっていた。
 一般論で言えば、金津園で働く嬢にこういうことを聞き出そうとするものではない。
 ただ、嬢の気を悪くすることなくこういう会話を展開できる客はいる。人柄が大事だ。それに、こちらが嬢に興味深い話をすれば、相方も興味深い話をするものだ。
 ソープ嬢を二、三年もしていると、何しろ相手をする客が四十代から六十代の落ち着いた男ばかりだから、本人も存外と大人びてきて、体験談を面白おかしく語るようになる。
 大勢の人間に常に一対一で対面し、相手の仕草や表情を見て心理や人柄を推察するという人間観察をしておれば、人の心は成長する。そういう点で、ソープ嬢は決して堅気の女より馬鹿にはできない。若くして人情の機微は判っているような女の話がとても興味深かった。
 一番興味を持ったのは新人が受ける仕事の講習だ。
 講習では、事前準備、挨拶の仕方、仕事の段取り、男の下半身の洗い方、ローション液の作り方、マットプレイのやり方、困った客の対応の仕方など、様々なことを教わる。
 素人の乙女の羞恥心を考えてベテラン嬢に指導を頼むことが多いが、店長やマネージャーが自ら指導に当たることもある。
 講習しているときには射精やペニスの挿入は勿論、勃起させることもよろしくなく、マットプレイやフェラチオの実技指導をしていて、こらえきれずに射精しようものなら、一緒に講師役を務める年増の姐さんに小馬鹿にされ、新人と講習者の二人だけの講習であれば口止めが必要で、社長にばれると首になる、と聞いたことがあった。
 存外謹厳なものだと感心し、しばらくはどの店の講習もそのようにしていると思っていた。
 しかし、女に新人講習のことをよく尋ねたから、店長の中にはやたら講習好きで新規採用の女と必ず本番をする男もいることがそのうちに判った。
 私はいろいろなケースを耳にした。
「貴女、店長の講習のとき、店長にあれを入れられた?」
「ううん、……貴女はどうだったの?」
「私、入れられたけれど、ちょっと動かしただけであれを抜いちゃって、『うん、よし』と店長が言ってたぁ。何が『うん、よし』なのかしらぁ?」
 挿入までされた女とそうでない女があるのは、必ずしも魅力の有無ではないだろう。魅力を感じて嵌入したなら、何もすぐに抜く必要はない。ソープでは客とセックスをするのだと女が判っているのかどうか、躯で確認しただけなのかもしれない。それを口頭で頼めば売春の強要になる。
 講習者が特定の女に挿入したのを好意的に解釈すれば、そういうことかもしれない。
 講習は職業を教える神聖な行為で、ペニスを怒張させるような淫らな気持ちは邪道であるとする考えは理解できる。
 でも、新人にペニスの愛撫の仕方を教えるなら、怒張させないと授業にならない。エロビデオの男優のように容易に怒張し、女に存分に掌と唇の愛技をさせても簡単には噴出しないのが、ソープ指導の心得として一番ふさわしいと思う。
 これを書いた頃と違って金津園では平成10年を過ぎると、非高級店ではどうなっているか知らないが、高級店では店の男が新人嬢に講習した話を聞いたことがなく、引退嬢かベテラン嬢が講師役を受け持つ。昔は嬢に講師代を負担させることはそんなになかったと思うが、今は結構な料金を徴収することが多い。

 私はいつも徹底的にクンニリングスをして、女が濡れそぼって気をやってから合体した。体位は屈曲位か正上位に類するものばかりだった。
 例えば後背位は、女の顔が見えないのであまり好まなかった。女上位の体位も、何か自分が支配されているようで、また、女の上下動する尻の圧迫で金的や恥骨の辺りが痛かったり、カリ首のこすれて欲しい部分が上手くこすれない感じがして、殆どしたことがなかった。
 四十代の頃は、女をベッドの端に寝かせ、私は床に立って、ベッドの端からずり落ちんばかりの尻を腰で押し戻すように抽送する方法が一番気に入っていた。
 下腹のなやましい曲面も、内腿のすべすべの肌も、恥毛の生え際も、愛らしいクリトリスも、変色した小陰唇も、細かな皺を刻んだ大陰唇も、大股開きの淫らさにはにかむ女の顔も、全てを鑑賞できて、女の魅力が一番愉しめるポーズだと思った。
 レビトラを服用して勃起が凄まじくなった平成17年以降では私の体位の展開の仕方が多少は変わった。
 でも、この床上床下男上前位はずーっと一番好きだった。ただ、還暦過ぎて射精するのが遅くなると、この体位でイクことができなくなった。
 マットプレイでは女に愛撫を「される」のが好きでも、ベッドでは私が「する」のでなければいやだった。それに、女が膝を上げ、股を開いて男を迎えるポーズをしている時ほど魅力的な姿はないと執着していた。
 私が好む体位であれば、腰をスラストしながら自由に行為ができる。耳に息を吹き入れたり、ディープキスを迫ったり、乳房を攻めたり、クリトリスに指先を当てたり、抽送の角度を変えたりと。
 女の話を聞くと、男自体に所謂マグロ男が増えて、するよりはして貰うのがいいという手合がとても多く、私のような交歓をする客は存外と少ないらしい。
 で、ソープ嬢は、ベッドに寝た男が挿入可能な状態になると、そのまま女が上の体位、本茶臼とか腹やぐらの形になってフィニッシュさせることが多い。
 ソープ嬢が女上跨位を多用するのも一理ある。それで次の効用がある。
○仰臥した男への愛撫〜ペニスの隆起〜サックの装着〜インサート……の一連の流れがスムースに続けられ、サックの装着行為に中断の違和感が生じない。
○顔が離れているから接吻を避けやすいし、息がかからない。互いの肌の接触も少ないから、衛生的にベターだ。
○女上位で男の腰に跨る形だと、暑苦しくないし、自分で動きを調整できるから、射精させるタイミングを測りやすい。女が自分のペースでした方が、いやなこと、無理なことを客にされにくい。
 こう考えれば、通俗週刊誌のソープランドの紹介記事で、「女は私の躯に乗って駿馬のように腰を振り、髪を振り乱して攻め立てた」という文章を見ると、「阿呆、自分でセックスしろ!」と言いたくなる。
 けれども、これもやはり大変だ。長時間の上下運動で腰を痛めるのはソープ嬢の職業病になる。
 ややこしい体位を駆使する客もたまにいる。躯が柔軟で、ペニスが長くないと、奇妙な体位は難しい。でも、男が腰使いと逸物にさも自信ありげで、いろいろな体位を試み、「どうだ、気持ちがいいか」としつこく尋ね、体位を変える度に射精まで長持ちされると、とても鬱陶しい、と私に語った女が少なからずいた。
 私は女から変わった体位を迫られることがあまりなかったし、私から求めたこともなかった。
 男に愛撫のサービスをしなければ、と女が思っても、巧妙な前戯を受けるとそんな余裕はどこかへ飛んでしまい、陶然として快感に身をよじらせているのが愉しい。
 そこまで前戯で乱れれば、女の顔が見える正上位が最も亢奮できるし、女も、男が腰をパコパコ動かして、自分は無理な格好をせずに寝ているだけの方がいいに違いない。
 ごく普通の体位でいいから、女が丸太のように寝そべって、男が早く気をやるのを待つ感じではない交合が一番嬉しい。私は人一倍そんな願望が強かった。
 私は素人の女と遊びたいとは思わなかった。惚れやすい質だから、限度なく女に狂って家庭を破壊するようなことになりかねない、いくつになっても女に惚れたい気持ちと、人一倍性的好奇心が旺盛なことは、玄人の女と愉快に遊んで満足させておればいいと思った。
 それで、私は馴染みの女には好感を持って相手されていたようだ。女が気をやるまで徹底的にクンニリングスをしてから合体するようにしていたし、下ネタに話が尽きることがなく、一旦気に入れば長く通う遊び方をしていたからだろう。
 テレビドラマに登場する娼婦や風俗の女達が、類型的な描き方や蔑視的な捉え方をされているのに気づくと、親しく逢い続けた女達との逢瀬を振り返って、これはちょっと違うぞ!と思ったりした。
金津園マップ
※ 黒く塗っている店は、平成26年では建屋ベースで閉鎖している。
私が金津園で聞いたこと
 私はソープランドに入り浸っていた。四十代の十年間は、岐阜市のソープ街の金津園に入浴回数の月の平均が四回を超えるほどの熱中ぶりだった。
 それで、いろんなソープ嬢と遊んでみて、ソープ嬢たちの接客の仕方が実に様々だと観察した。
 客を部屋に迎え入れるとすぐに裸になる女もいれば、しばらくは服を着たままで会話をする女もいる。初対面でも朗らかによく喋る女もいれば、チンピラそのままで言葉らしい言葉が出ない女もいる。
 客が服を脱ぐのをかいがいしく手伝う嬢、自分が服を脱ぐ際に客にアシストを求める嬢、何回射精したいのか最初にはっきりと尋ねる嬢、やたらと丹念に客の躯を洗っていかにも潔癖そうな嬢、汗くさい躯にそのまま舌を這わせる嬢、他人行儀な感じがするほど丁寧な喋り方をして、上品を装っているけれど、ちょっと油断すると育ちの悪いがさつな口調がぽろっと出てきて、しまったという顔をする嬢、本当に十人十色だと思った。
 殆ど射精寸前までペニスをこすり立ててからサックを被せて受け入れ、バギナを突かれる時間が最小限になるように工夫する女もいた。
 また、椅子洗いで汚れを落とした後、男がペニスを起立させていると、タイル張りの床の上で男に尻を向けて四つん這いになり、凹の形の助平椅子に座った男の股間に後じさりで尻を寄せ、振り向いて「入れて」と一言簡潔に促し、見事に即物的な交合をさせる女もいた。
 これはたぶん平成3年頃にヴィーナスで入ったセーラだと思う。
 セーラは顔出ししていて(その当時顔出ししているのは少ない)かなりの美人だから記憶している人もいるのではないか。
 私は、初対面の女に股間を石鹸でゴシゴシされた後、そのまま助平椅子から腰を浮かせて、目の前の尻の穴を見ながら嵌め込むと、女が目元涼しげな美人なだけに、まるで自分がチンパンジーかゴリラになったような気がした。
 それではあまりにもただつながるだけの感じがして、やはり女性器や尻の穴を見て欲情するより先に女の全人格に亢奮してから交わりたいものだと歎いた。
 昔はフリーで店に入ると店が相方を選んでつけた。初めて入った店で、対面した相方がソープ情報誌に顔出ししていて、その写真が大変目立っていた女だから、喜んだことがあった。
 写真以上の美人で、笑顔も愛らしいけれど、話し方が少々不良ぽいと思っていたら、椅子洗いの前に事務的な口調で「貴方、何回イキたいの?」と、いきなり訊かれた。
 不器量でも濃厚なサービスを売り物にしている熟女なら、直截な聞き方をされても、それほど違和感を感じないけれど、せっかくの若い美人がそれではラブプレイが性交作業になってしまう、といささか興ざめした。
 それでも即座に女を褒めた。
「男が何回イクつもりなのかによって、プレイの段取りが変わるから、ちゃんとそれを尋ねるのは、ほんとうに君はいい心がけだよ。そんなことは誰も訊いてくれないから、僕はいつも自分から発射は一回だけでいいと言っているんだ。君は物事をはっきりさせたいといういい性格なんだねえ」
 女はそれを聞いてニコッとした。
 私は、内心では、こんな美人がちょっとソープずれし過ぎているぜ、と思ったけれど、心にもないことを言って褒めるのも上手だった。
「ブリーフを穿く男の人が好きよ。あの、もっこりした格好がいいの」
 そう初対面の若い女(ティファニーのエリカ、平成六年)が言った。
 私はブリーフが嫌いでトランクスのものを愛用していたから、何だ!と思っていたら、相当美形の女が続けて喋ったことに驚いた。
「私、ブリーフの男の人だったら、常連さんで、それが汚れていない感じだったら、ブリーフの上からお口を這わせてフェラチオしちゃうの。布をべとべとにしてしまうこともあるのよ。肌にぴったりしたブリーフの中で、あれを固くさせるのが面白いわ」
 ブリーフ越しにしゃぶるなんて、目の前で新品のものに穿き替えて貰わないと、即尺よりもよっぽど不潔だろう。
 金津園の店は部屋が十六畳ぐらいで、関東や関西のソープ店と違って、部屋が広いのが特色になっていた。その部屋を二つに分け、一方は、総タイル張りで浴槽と洗い場があり、もう片方には、ベッドと背の低いテーブルがある。
 ソープ店はビルが軒を連ねているから、窓はあまり用をなさない。部屋の通りに面した側に窓があっても、普通は外光を遮断している。白昼日光に照らされた肌を女は見られたくない。
 女は客を部屋に案内してから、気候などの話を交わすけれど、部屋の中には季節感がまるでない。いつも同じような心地良い室温になっている。
 ソープ嬢は常連客がつくとその男の好みの煙草などを用意するようになる。その他、男性用化粧品、整髪料、耳掻き、爪切り、菓子類などを部屋に備え置くけれど、その気になれば危険なもの、例えば、紐、鋏などは置いてないし、傘も持ち込めない。
 部屋はよけいな物が置いていないからベッドだけが目立って殺風景なので、部屋持ちのソープ嬢は、自分の好きなように部屋を飾る。
 休みのときは他の女が使うので限度があるけれども、部屋を自分だけが好きなように飾れるのは、女だけに気分がいいだろうと私は思った。
 部屋持ちが継続すると完全に専用化されて、縫いぐるみで一杯になったり、自分のポートレートを飾ったりする。雑誌に顔出しする女はプロのカメラマンが撮った写真を持っている。
 マキシムという店で私はある部屋持ちのベテラン嬢に入って、壁に掛けた大きなポートレートとともに思い出があった。
 明かりがかなり落としてある部屋に入って、すぐ服を脱ぎ始めたら叱られた。
「脱いでと言わないのに、何故勝手にどんどん裸になるのよ!」
 皆、それぞれ自分の仕事の手順があるから、伺いを立てなきゃいけない、と私は反省した。それで、それからは何でも女に確認した。秘所をさわろうと思ったときも伺いを立てた。
「ここ、さわっていい?」
「そういうふうに訊かれて、『はい、いいわ』と女は答えにくいものなの。男の人が勝手にすればいいの。貴方はいい歳をして、本当に遊び慣れていないわねえ」
 いかにもどうしようもない男!……という顔でくさした。
 私はソープで部屋に入るといつもさっさと服を脱いでいる。服を脱いで叱られたり、遊び慣れていないと指摘されたのは初めてだった。中間休憩では下着の数の多さを自慢されたことを覚えている。
 万事が終了して料金も支払い、ふと気がつくと、壁に若いとても美しい女の大きな全身写真が飾ってあった。自分の持ち部屋に女の写真を飾るのも珍しい、と思って見とれていたら、いつの間にか横にすり寄って来て、肩に手を乗せ顔を寄せて囁いた。
「綺麗でしょ?」
「誰?」
「私!……」
と、お茶目な顔を作って返事が返ってきた。
「えっ、別人だぜ!」と、私は思わず大きな声を出し、それから口を閉じた。
 推定七、八年前の写真で、普通は二十歳から七年も経てば、色香の出る熟女となり、化粧も上手になって魅力が増す筈だけれど、まるで顔つきが変わるのも珍しいと思った。
 私は、会う女を決めるに当たっては、人気のある女が間違いないと思っていた。
 売れっ子で、雑誌に顔を出していない女は、よその店でその名前を聞いて入ることも多かった。それで、予約を入れようとして空き時間がなければ、立派な接客をすることは大概間違いない。
 誰が本指名が多いかとか、サービスが徹底している女がいるかとかのよその店の情報ならば、女に訊くのが一番てっとり早い。
 金津園の女は、特殊な職業だけに仲間同士で交遊することが多く、ベテランは業界のことについて物知りだ。他の店の女のことなら存外に語る。
「誰々さん知ってるぅ、本当は朝鮮よ」
「誰々さんはこの間一ヶ月休んだけど、あれ、梅毒の治療してたのよ。梅毒は直ったかどうかわかるのに時間がかかるんだからぁ。でも、一ヶ月で出てこれるなんて早いわねえ」
「誰々さんは後ろにやーさんの紐がいるのよ。すっごく巻き上げられているの、気の毒」
「誰々さんは四回整形しているのよ」
「誰々さんは子どもを生んだことがあるのよ」
 人間の常で、本人が触れられたくない話が出てくる。
 金津園でも平成に入ると、客に写真で相方を選ばせることが多くなった。ボーイが六枚ぐらい写真を持ってくると、初めの二人ぐらいは盛んに推薦の言葉を並べる。
 私は適当に難癖をつけて手持ちの写真を全て並べさせ、容姿や若さは二の次で最後に出した写真の女を選ぶことが多かった。
 私は自分が店の人間ならば、指名の取れる女は、最後に紹介するだろうと思った。
 ソープ嬢は休憩時間がないほど客がつけば一日で十万円以上軽く稼ぐけれど、客がつかなければ稼ぎは零で、差が激しい。
 ソープ嬢の悩みは、嫌な客と、客枯れと、エイズ問題と、容貌が明確に三十歳を超えたときにどうするかということだろう。
 嫌な客の代表は、「酔っぱらい」「不潔」「しつこい奴」、困る客の代表は、「フロントで払う料金で全てだと思って、部屋で女に払う料金の持ち合わせがない奴」「勃たない男」「射精しない男」の三つがベストスリーだ。
 千ずりのし過ぎでペニスが麻痺しているのか、完璧に勃起しても射精ができない男が増えて、私は女からそんな客の話をよく聞いた。
 若い男がいつまでもピストン運動しているから、女がイヤになって「いつもこんなに遅いの?」と訊くと否定しない。
 ならばと、ローション液をかけて手で猛然とペニスをこすっても射精させられなくて、あきれてしまった経験のあるソープ嬢が多い。
 ペニスの幹のところを三本の指で強く挾んで往復させる千ずりばかりしているから、普通のこすりでイクことができなくなっている。
 マスターベーションは、ペニスの先走り汁をカリ首に塗って、掌でくるんでマッサージするのが性交の感触に近くて、これが正しいオナニーのやり方だと私は思っていた。
 幹をしごくやり方はよくない、と本に書いてあって、高校生の時からその通り実行していた。
 私から見て腹の立つソープ嬢は、無愛想、愛嬌無し、全くペニスにさわらずに勝手に勃ってという態度の女だ。どんな美女でもお札をドブに捨てた想いになるけれど、こういう女も時々見かけた。
 単に、勃たせ方を知らないだけなら教えてやればいいけれど、男の亢奮を昂めたい意欲がないのはどうしょうもない。
 一応ソープ店が採用するからには、不器量でも、逃げ出したくなるような不細工な女はいない。それで、指名が少ないなら、要するに本人の心構えとサービスが悪い。
 私は、つまらない女の筆頭は気をやらない女だと思っていた。目一杯女の鋭敏な突起を可愛がっても女が全く感じないと、どんなに美人であろうと、どんなに愛嬌があろうと、白けてしまった。
 自分を迎えたときは、女が店ではイクまいと抑える心をしまい込んで、淫らに股を開いて腰を震わせ、自由奔放に歓喜にむせぶなら、私は何度でも会いたくなった。
 そういう女とは、泊まって、起きがけの息の匂いを嗅いでみたいものだと妄想していた。
 起きがけの息の匂いとまではいかないけれど、そのかわり女を一日貸し切る豪気な遊びをする、どこかの社長もいた。
 でも、私は、そんなことが情緒という点において昔の遊郭の泊まりの遊びに匹敵するとは思わなかった。
 貸し切りの料金は、六回分の入浴として二十四万円程度になり、これと比べれば、遊郭の泊まりの料金は随分安くて、当時の物価としては高級旅館の宿泊料ぐらいではなかろうか。
 そうだとすると、二十四万円に対して五分の一から三分の一程度で済むことになり、格段に安いと思った。
 私の行きつけの店で、一時期三回分以上の指名で客が女を店の外へ所定の時間だけ連れ出せるシステムにしていた店があり、指名ベストフォーまでの美貌の四人が店外デートを経験していた。
 ところが、その全員が店の外でセックスもペッティングもキスもさせたことがないと聞いて、私は愉快だった。
 女は客を映画見物のような、抱擁どころか会話もする必要のないものに誘って、それで時間を過ごした。客が期待するようなことは何もせずに、皆所定の期限よりもかなり早い時刻に店に帰ってきて、まるで詐欺まがいの応対をしているのだ。
 勿論、その男が店で普通に入浴しているならちゃんと性交をしているのだから、結局、常連客が一対一の恋人まがいの逢瀬をソープ嬢としようとしても、女に惚れられるぐらいでないと、店外デートしても警戒され不快がられるだけだと私は感じた。
 私は女からいろんな客の話を聞いた。
 お坊さんで、店に到着する時間を指定し、タクシーでさっと来て、待合室にも入らずにすぐ部屋に入るのがいるとか、産婦人科医で、診療では何万のおまんφを見て何の感慨も起きなくても、ソープに来ると初めて女陰に亢奮できる客の話とか、愉快な話が出た。
 入れ墨が立派なおっかないやくざでも、裸で懸命に腰を動かしている姿は存外可愛いもんだわとか、同級生が現れて困った、などと若い女が喋ると、そんなちょっとしたエピソードでも私は興味深く聞いた。
 そういう話は週刊誌の記事で見たことがあるようなものばかりだけれど、現実にそういうことを体験した女から想い出話をされると、とても面白かった。
 東海地方のソープ情報誌としてP誌、S誌、M誌の三つが出回っていた頃、私がM誌の写真を見て指名した女がいた。(ムーンライトで平成元年ぐらいだったような記憶だ)
 逆さまの添臥のスタイルで私が精魂込めて愛撫している間中、その嬢は十八歳にもかかわらず、ずーっとカリ首を三本の指でナットを回すような動きで微妙に弄い続けていたので、すっかり感心した。
 親に秘密で働いているのかと尋ねると、やはり内緒の仕事だった。
 妙齢の娘がいるのに、父親の部屋にはP誌が開けたままよく放ってあるとおかしがっていた。
 それなのに、雑誌に写真を出して大丈夫なのか?と私が訊くと、自分の写真はM誌にしか出さないし、父親はP誌だけを見ているから心配していないと答えた。
「もし万一、M誌を見られても、しっかり厚化粧をして顔を変えているから、多分気がつかないわ」
 そう語っていたが、一仕事して素面に近づいた顔を見ると、写真の顔とそんなに違いがあるとも思えないので、私は相方の可愛い顔が親父に張り倒されるシーンを想像した。
 高級店は大体エレベーターがあるから、ソープ嬢には重宝なことがある。初会の客は、ドアーの蔭に隠れて確かめる。
 ある女が、初会の客を迎えようとして男の顔を見たら、女の叔父さんだった。
 慌てて両手で×の印を作ってボーイに知らせ、エレベーターの閉のボタンを押して、とにかく胸がどきどきした、と私は聞いたことがあった。
 どこの店のどういう名前の女からそれを聞いたのか全く憶えていないが、「叔父さんはエレベーターに乗ろうとして止められ、店から女の変更を突然言われて驚いただろうけれど、叔父さんとセックスなんかできないわよねえ」と相槌を求める顔がおかしかった。
 私は初対面の女が扉の裏に隠れてスタンバイしているのを見る度にそれを思い出した。
 ソープ嬢は若い女だから、痴漢や強姦の事件に結構遭遇する。
 ムーンライトで初対面の女が、「昨日は警察へ行っていたのよ」と言った。
 私が訳を訊くと、数日前の仕事帰りの深夜に、自宅の近くで若い男に襲われ、強姦されかかって、その事件の事情聴取ということだった。
 女は遭遇から撃退までの顛末をなかなかの表現力でリアルに話した。
「私、あのときは命の危険まで感じたんだけど、必死に抵抗して犯されるのだけは防いだのよ。だけど、私の仕事が仕事なだけに、警察は、何か嫌味な質問の仕方だったわ」
 そう言って話を終えた。
 私は事件の当事者の話など直接聞いたことがないから、恐怖の体験を声高に語るのを興味深く聞いた。
 犯されることには慣れている女が、結構小柄な躯なのに、暴漢の襲撃から必死に操を守ろうとした心にも感心した。
 襲われて揉み合っている間に、男がズボンの前をもっこりさせているのを観察しているので、さすがソープ嬢だと思った。
 また、ビルの陰で強姦しようとする男は、あまり美人とは言えない、背が低くて小太りの女に、殴りかかる時点で既に勃起させているのかと、男の元気さにも驚いた。
 まだ童貞だった頃、週刊誌の記事などで女を襲った男が怒張不足で強姦未遂に終わった話を読むと失笑したけれど、性交がわかるようになると、強姦で勃起できる自信は全くなかった。
 マスターズで素人ニューフェースの触れ込みにそそられて会った女が、ソープに来た訳や、店長に誘われて営業中に皆に内緒で二人だけで競輪に行ったという裏話を、私の問いに乗って思わず知らず語った。
 店の、当日の客の総数などを聞いてから、入店したときのマット指導で、相手の店長にインサートされたのかと訊いたら、頷きかけてから、女は突然我に返った顔で叫んだ。
「私、貴方にそんなことまで話さなければいけないのかしら? 私、お客さんには絶対に話してはいけないことを、貴方には今まで随分喋っていたような気がするわ。初めて会ったのに」
 その女が若くて色白で、見応えのあるプロポーションをしていたから、裸体のままハッとした表情がとてもコケティッシュに見えた。
 私が熱烈にクンニをすると、だらだらとシーツに愛液を流して昂揚した。
「私、先にイッちゃっていい?」と息も絶え絶えの声で尋ねてから気をやった。
 女はあまりの快感でイッたことに感激して、店がコンドームの使用を決めていても、まるで歓迎するように純生合体を認めた。そのサービスが嬉しかったし、更に、アクメの了解を求めるのが面白かったから、妙に記憶に残った。
 これは平成六年のことで女は早見優という名前だったが、十年後は光月麗奈という名前ですっかり有名になった。
 私は、「私、お客さんにこんなことまで話したことはないわ!」とか、「貴方、どうして私に何もかも喋らせちゃうの!」とかの感嘆を、一、二度程度しか会っていない女からもよくされた。
 ここで書いたものは平成2年から6年ぐらいに聞いたことが多い。20年も前のことなのにこのように文章にしたから今でも相方のことが少しばかり記憶が蘇る。
 最近でもよく客についての興味深い話を聞くが、私の遊興歴が長いだけにまあ以前どこかで聞いたようなことばかりで、文章にはなかなかしていない。
 そんな中でそこそこ興味深い話───類似の話を(何かのエロ雑文で見たことがあっても)聞いたことがないもの───が次だ。

 私が相方に出勤の時に穿いていたショーツを出すよう求めると拒まれた。その後何故か、少し以前についた初会の男の勃ちが即のベッドからかなり脆弱で困った話をしだした。
 いかに勃ちが悪かったかを楽しげに?念入りに描写して語るから、どうしてそんな話を?と私は思いながら聞いていた。
 客がきまり悪そうな態度を見せたまま小休止することになった。飲み物などを用意した後、嬢が何かを取ろうとして戸棚の扉を開けた。すると丸めてしまっておいたショーツが飛び出してきた。
 客がこれに反応し、手に取ろうとした。嬢はそれが出勤の時に穿いてきたもので、尻たぶを大きく覆う全くの普段使い用だから拒んだが、拒む理由を聞いて男がますます興味を示し、股ぐら部分の僅かな変色まで確かめられてしまった。
 で、その後ペニスの勃ちがとたんに良くなった。そのことを愉快そうに私に報告した。
 使用済みパンティが大好きでこれだけに反応する男がいるという実例だ。
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(千戸拾倍 著)