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驚嘆のマットプレイ

 私は女に性技を徹底的に繰り出すのが好きだから、平成10年頃からマットプレイをさほど受けなくなった。嬢がベッドでマットプレイのように私の股間を時間をかけて攻撃し、これを卑猥にやってくれるならば、ベッドにたっぷり時間をかけて嬢の性技を楽しみ、快感に浸ることにした。
 でも、そのような遊び方になる前はいわゆる『マット好きな客』だった。そうなったきっかけの嬢がいて、それがヴィーナスの玲子(仮名)だ。マットの達人というと、古くからの金津園ファンは『すずめの宿のユキ』を挙げるだろうけれど、私はそれを上回る達人が玲子だと思う。
注:嬢は通常マットでは自分が客を攻め、ベッドでは客が自分を攻めるものと考えている。
 だから、ベッドでは勃たせるためにフェラチオし、勃ったら合体させ、そんなにしっかり男の股間を愛撫しまくる必要はない、という意識だと思って良い。
 要するに、ベッドでは、男をよがらせるためにカリ首を粘着的に刺激したり、アナルや陰嚢まで広範囲に刺激する意識がやや乏しくなる。
 玲子が超一級のソープ嬢だと噂を聞いたのは、昭和63年、私が41歳の頃だった。
 オレンジハウスで初会のローザとソープ嬢談義をして、ヴィーナスの玲子のことを聞いた。玲子はもう桁違いの猛烈なマットプレイをすると言うのだ。玲子の稼ぎは固定客が支え、店がフリーの客をつけることは殆どないということだった。
 丁度その頃、ヴィーナスに即尺、即ベッドをするソープ嬢がいることも何かで知った。私は股間を洗わぬままフェラチオされる経験がないので、是非即々のプレイというのをされてみたいと思った。玲子が圧倒的な売れっ子なら多分玲子が即尺即ベッドの大胆なサービスをするのだろうと期待した。
 それで私はヴィーナスに何度も電話を入れた。
 電話をかける度に、店の男に丁寧な口調でまたの機会の予約を求められ、しかも、別の女ではどうかと請われることがなかった。それが大変不思議だから、玲子は、指名する客に代替の女が念頭になくて、店もそれを認めている別格の女らしいと思った。
 玲子は前日に予約する程度では全く間に合わないという人気で、(インターネットのない時代に)ソープ情報誌に写真を出さずに売れっ子になるのはかなり珍しいから、間違いなく本物に違いない。そう思うと、私はどんどん期待を膨らませた。予約がなかなか成立しなくても、とにかく入浴したかった。いつもなら、縁がないなと諦めるけれど、よその店の女までが噂するマットプレイを体験したいから短気にならなかった。
 5回ぐらい空振りしてようやく予約することができ、わくわくして玲子に会って人気の高さを納得した。
 美女というほどの器量よしではないけれども、愛想がいいし、大柄な躯が熟れきった女の曲線を描いていた。胸も尻も実に格好良く、躯の凸部が明瞭でも決して太ってはいない。幅広の腰骨からキューンとウエストが締まって、気をそそられるグラマーだ。
 それで、裸になってから服を着るまで、玲子が終始カリ首や金的を熱烈に刺激し続けたから驚いた。それまでに経験したことのない、至れり尽くせりの愛撫で、閨房技術の神髄を垣間見たような気がした。即尺即ベッドのプレイではなかったから残念だったが、そんなことは全く問題にはならなかった。
 それから私は玲子に長く通うようになった。玲子はとにかく予約を取るのが難しいので、通う回数がそれほど多くないけれども、昭和63年から平成4年頃まで入浴していた。2ヶ月も逢わないでいると、巧妙な手淫を受けたくなって、予約の電話をかけていた。
 私が同じ店の女に玲子のことをどう思っているのか尋ねると、何しろヴィーナスでは別格のNo.1、金津園でもトップクラスの売れっ子だから、仲の良い女は玲子をソープ嬢の神様のように讃えた。仲の悪い女だと、「あんなの変態よ。お客を皆変態に変えてしまう。まともなセックスじゃないわ」などと非難した。
 通った期間で玲子が1年ぐらいヴィーナスに出なくなったことがあった。その時、私が店の男に玲子に代わるいい女を紹介してくれと頼むと、マネージャーの返事が奇妙なものだった。
「いつも玲子さんに入るお客さんには、他の子は紹介できません。とにかく彼女は格が違います」
 まるで遊び甲斐のない女を言葉巧みに勧めるのが店の男の遣り口だから、スタッフも立派だと思った。
 玲子は黒髪が艶やかで、肌の色も薄く、それなりに美人顔だ。「それなりに美人顔」と判定したが、表情によってはかなりの美人に見えることもあった。眼はくっきりして、顎の形が女らしくすっきり纏まっているから、化粧が決まっていれば結構鑑賞できた。
 ただ、湯気の中で動き回ってメイクがゆるむと、一重瞼の顔がのっぺりして、頬骨やら顔の大きさやら、少々の出っ歯が目立つようになった。鼻も高く良い形をしているのに、何故のっぺりした顔に見えるのかしらと考えると、頬の面積が広くて額が狭いからだ。笑うと口許が広がり、欠点が減殺されて美人になった。
 仲間に変態と非難されるほど過激な仕事ぶりを思い出す。
 2階の待合室から3階の部屋まで玲子は私に腕を絡ませて階段を上がる。玲子のほうが私より背が高くて体格もいいから、にこにこして語りかけなければ、私はまるで婦人警官に連行される痴漢のようだ。
 部屋に入ると、玲子はすぐ私の衣服を脱がせ、ブランデーを用意し、私も裸になる。そして、鏡に向かって後ろ姿でゆっくりと頭髪をまとめ、歯磨きをする。
 いずれも腕が上がる動作なので、上げた二の腕から、胸、腋、腰、脚と続く女らしい華麗なシルエットを私にしばらく愉しませた。
 支度が済めば流し場に導き、玲子ならではの椅子洗いが始まった。
 石鹸液を使って、笑みを浮かべて陰嚢から菊座まで丹念に指先を這わせる。シャワーで流すと、かがみ込んで気合いよくフェラチオをする。
 口に含んだカリ首の感触を玲子が愉しんでいるようだから、私は毎度気をそそられた。
 ペニスをしばらくねっとりと吸って、充血を確かめると、玲子は立ち上がり、艶めかしい視線を向けて私の手を取った。
 10本の指を1本ずつ肉壷に誘導する壷洗いとかいう技で、指で探ると、玲子の膣道が長年の頻繁なこすれでツルツルの状態になっていることがよくわかる。
 私は、玲子に指1本を摘まれて導かれる度に、眼前にすくっと伸びた玲子の健康そうな太腿に対して、私の指があまりにも華奢なことが気恥ずかしくて、いつもじーっと玲子のへそを見ていた。
 裸になってすぐのプレイでも、玲子の表情には、貴方をたっぷり愉しませてあげるわ、という気合いがあった。ペニスや金的をまさぐっても、そこを眺めているのではなく、私の顔にやわらかな視線を投げた。
 仕草に成熟した女の情緒があって、なおかつ、ペニスの手揉みが強烈だ。痺れるような快感で、私の感受性の高い部分は毎度青筋立てて力み返った。
 椅子洗いが終わると私を風呂に案内し、玲子も入る。私の伸ばした脚の間に入り込み、尻の下に両膝を潜り込ませて腰を迫り上げ、ペニスだけでなく金的まで湯面の上に突き出させる。
 椅子洗いでは唇でカリ首を削ぐような厳しいフェラチオをしたが、風呂では舌先をレロレロとふるわせたり、筆の穂先で撫でる感じで、玉から鈴口まで触れるか触れないかの、くすぐったいような舌使いから始めた。
 ペニスが完全に怒張すると、堅さを愉しむように、すぼめた唇をリズミカルに往復させたり、舌でカリ首の背から鈴口までを強く舐め上げたりした。また、漲ったものを手で揺すって、くびれを唇でしごいたり、金的を口に含んで転がしたり、舌を大きく突き出して、その面全体で金的からカリ首まで舐めたりした。
 実にそのこすれ具合が絶妙で、男の快感を完全に理解した愛撫だった。
 更に玲子は、同時に、指先で別のところを刺激するように工夫をしていた。怒張が一層昂まるように、隆起したペニスを逆向きに倒したり、ひねりを加えたりして、唇を前後、左右、上下と様々に動かした。
 とにかく玲子に会うまでに経験した全てのフェラチオが玲子1人で体験できた。
 程良いところで、玲子は歯磨き道具を私に渡し、マットの準備にかかる。ローション液は金津園のどの女よりもたっぷりと使い、とろとろと濃く仕込んだ。
 これをマットにかけてから、玲子は俯せになってマットの端をつかみ、それを支えにして全身を大きくうねらせて、ローションを自分の躯とマットに塗り拡げた。膝から足先を上に跳ね上げ、腰と乳房を豪快に振って、まるでオホーツク海のトドのようにダイナミックにマットの上で舞った。
 浴槽と直角にマットを敷き、他の女ならば頭をこちらへ足先を向こうにするところだが、玲子は逆で、豊かなヒップの間で、鉈で割ったような深い峡谷が、風呂に漬かっている私からよく鑑賞できた。
「さあ、いらしてぇ」の声で私がマットに俯せになると、最初は、乳房や唇で、背中・脇腹・尻・脹ら脛なんかをさする。
 大概のソープ嬢は、俯せの男の背中や脹ら脛に自分の肉体を長々とすり合わせているだけで、棹や金的はあまり弄わないのに、玲子は、私の躯の上で身をよじらすのは僅かの時間だし、その僅かな間でも男の股間に必ず手を伸ばした。
 玲子の肉体が見事に瓢箪型にくびれているから、通常のマットプレイをしても、乳房や太腿が躯にべったりと触れるのはとても心地良い。だから、肌と肌とがねっとり触れ合う動作がすぐに終わってしまうと勿体ない気もする。
 しかし、性感帯が背中や臀部にある訳でもないので、玲子は早めに脚の間に入って、棹と金的に攻撃を集中する。それがとことん徹底していた。
 最初私は脚を伸ばしている。隆起したペニスはへその方を向く。これを玲子は反対に腰とマットの間から自分の方へ曲げ傾けた。逆方向へ向けられるので、付け根が耐えられなくて、思わず腰を浮かさざるを得ない。当然それは限界まで怒張した。
 玲子はカリ首の本当に先だけを、何とも説明ができない方法でこすった。
 自分で手淫しても、ここまで微妙に、かつ、激しく、カリ首の一番鋭敏な一帯を嬲り続けることは、途中で思わず知らず脳が指に動作の中断指示を出してしまって、到底継続できないだろうと思った。
 玲子は3本の指やら唇やら掌全体で強弱をつけてこすり、私が刺激に慣れて反応が鈍くなると、別の変化技に移る。その間、空いた手や口が必ず近隣の性感帯を攻めた。
 そのうち、俯せの私を四つん這いの尻を突き出すポーズにさせる。脚の間に座り込み、菊座を舌で強く掃きながら、掌でカリ首を包んで揉み込む。また、後ろへ引き出したペニスを口に含んだまま菊座に指先を這わせ、同時に、もう一方の手の親指と中指でUの字を作って、指先で金的の付け根をすーっとさすり、私にぞくっとする感触を楽しませる。
 更には、左手を乳絞りのようにいやらしく動かし、亀頭を握り潰すか、ねじ回すように揉み立て、右手は菊座に指を1本挿入して、微妙に動かした。
 すべての愛撫が感心なまでに同時進行で、しかも、カリ首への圧迫がよく、猥褻極まりない。
 菊座に挿入した指は、「第一関節までよ」とか、「第二関節まで入れたわよ。わかる?」とか解説付きで、玲子は含み笑いをしながら徐々に動きを強めた。
「すごいわ。根元までよ、ふふっ」
 直腸の腹部の側をごりごりと擦られると、私は腰の奥に異様な感触が走り、射精の予感がする。「もう、いいっ!」と叫び、そこでアナル責めをストップさせた。
 亀頭冠を包む掌が滑らかに動きにくくなると、玲子はマットの上に溜まったローションをすくって塗りつけ、カリ首の裏筋の辺りを中心に、更に絶妙な揉み込みを続けた。
 私はカリ首をますます膨らませて悶絶し、躯を突っ張らせ、顔だけ見たら苦痛だか快感だかわからない。私が大腿筋も腹筋もこわばらせ、肺腑を絞るような喘ぎ声をあげて、腰をふるわせるのを見て、玲子は神秘の笑みを浮かべている。
 少しSMの味がした。
 玲子は私を俯せにしたまま、信じられない体位で怒張したものを受け入れた。玲子が頭を私の足先に向けて、四つん這いの格好で尻を下げて後ずさりし、私の股間に陰裂を寄せる。
 私が膝をついた姿勢で、腹を下げて腰を突き上げれば、玲子は股を開いて腰を沈め、ペニスを掴んで引き寄せると、やや上向きになった陰裂に斜め上から没入する。
 灼熱のペニスは股間から後ろへ向かい、無理な角度になって金的を圧迫する。玲子はますます怒張が激しくなった肉塊を肉壷でがっちりと受け止め、スローテンポで腰を動かす。犬のような体位だ。股間に玲子のローションまみれの尻が当たるのが愉しい。
 私は続けて玲子の指技を楽しみたいから、ここで吐精しない。

 次いで、玲子は私を仰向きにさせると、その体勢でまた、ありとあらゆる指技、口技を繰り出した。
 とにかく火照った股間に終始濃厚な愛撫が続き、私はカリ首がものすごく気持ち良いから、脂汗を出してよがり続けた。
 玲子は二重にした容器の間に熱い湯を満たして、内側の盥に入れたローション液が冷めないようにした。右手で温かい液体をすくい、左手で怒張したペニスを握り、垂直にして、尿道口に狙いをつけてローションをたらたらと垂らした。
 人肌より少し熱い粘液の直撃に、私は、それだけで新しい感触を味わった。
「貴方、強いのねぇ、立派! 他には、そうはいないわよ。これだけ、こすり続けて遊べるのは」
 そんな感嘆をしながら、玲子は私の悲鳴を聞いても「うふふっ」と含み笑いをして、ローションまみれの指で肉棒を攻めまくった。
 刺激になれて私の腰が玲子の攻撃から逃げなくなった頃、両足をたたませる。赤ちゃんがおしめを替える格好だ。その尻の下に膝を潜らせ、上を向いたアナルを攻めながら、同時に小水の出る前面の一番鋭敏なところを掌でこねたり、裏側までさらけ出した金的を口に含んで揉んだりした。
 ネチョネチョと卑猥な音が出る徹底した亀頭攻めに、私はとことんペニスが伸びる感覚がする。射精を我慢するのが苦痛めいた快感で、その頃には意識が朦朧としている。
 鋭く激しい攻撃に耐えかねて、閉じようとする股や逃げようとする腰や、玲子の指の動きを封じようとする私の手を、玲子は大柄な肉体のどこかで残酷なまでに押さえて防ぎ、逃さないわよ、という視線を浴びせて、更に執拗にカリ首を攻めた。
 ローションの温水にまみれたその掌はもうふやけて白ばんでいる。
「あぁ、おぉ、うー、いー、どっちが女かわかんねぇ、うぉー!」
 私が唸り声を上げて落ちかねない様子になると、感よくそれを察知して、非射精促進の性感帯の方へさっと矛先を移した。
 そのうちに、玲子は、私をおしめを替える赤ん坊の格好をさせたまま、上向きの尻に跨るようにして腰を落とし、ペニスをぐいっと手前に引き寄せて、膣に嵌め込んだ。
 力みかえったペニスがとんでもない方向へ向かって突入するから、付け根が緊張する。精一杯腰を浮かせて玲子の熱演に協力した。
 玲子が私の宙に浮いた両足首を掴んで腰を上下に揺らすと、大柄な体型だから、私はまるで躯をプレスされているように見える。とにかくペニスをはめ込んだままで、足の位置を組み替えて、のけぞったり、回転したりして多彩な体位を実演した。
 ソープ嬢はローションがべっとりついたふわふわのマットの上で、立ったり2本足で移動することをまずしない。玲子は上手くバランスを取って難なくこなした。でも、客の前で何度かすってんころりんをしたことがあるから、マットの空気圧を弱めにしていた。
 私のペニスはそれほど大きくないし、躯も堅く、特殊な体位についての知識もないので、それまで変形体位の交接を殆どしたことがなかった。
 だから、玲子が流麗に繰り広げる松葉くずし他様々な女上位の体位はどれも初めて試みるもので、何とも淫猥極まりなく、ひたすら驚くばかりだった。
 マットプレイの最後の体位は、私が腰を浮かせ、玲子が蹲踞の姿勢で受け入れた。中腰で手を後ろについて、結合部がよく見えるようにして、嵌め方にも工夫があった。カリ首の穂先だけ微妙に出入りさせたり、ゆったりとスローな動きで大きく抜き差ししたり、深く受けてひねったりした。
 玲子が淫靡な連結を悩ましい眼つきでじっと見つめ、時々私に流し目を送るのが、いやらしいほど婀娜っぽかった。
 私はマットに仰向けで動かしにくい腰をゆるやかに上下動させ、快感の発信源になっている結合部に貼り付いたように視線を送った。
 マットの枕が大きくふくらんでいるので、頭が持ち上がって、玲子が前面を向けても背面を向けても、途轍もなく猥褻な結合部が衝撃的な画面となって眼に飛び込んでくる。
 玲子のぐーっと張り出したセクシーな腰から視線を上げると、下腹は柔らかな曲線でこんもりと盛り上がり、ウエストがグワッと狭まって、その上で豊かな乳房が揺れ、口を僅かに開けた顔が見える。笑みを浮かべてふんわりと腰を動かしているのが、何とも妖艶だった。
 大股開きの豊かな太腿の間で、玲子の薄めの春毛がローションの粘りでより合わさって肌にへばりつき、性器が平たい饅頭のような丸みを露わにしている。出入りしているペニスは、滲み出る潤滑液とローションが合わさった粘液の泡にまみれて怒っていた。
 性的亢奮は生理的に人から視野を奪う。
 部屋の天井も壁もシャワーの設備ももはや視界から去り、薄明かりに照らされている筈の浴室が何故か闇の中に包まれている。ただ、玲子の顔と躯と結合部だけが、まるでスポットライトが当たったように、狭くなった私の視野に浮かんでいた。
 玲子が薄笑みを浮かべながら、流れるような巧妙な動きで体位を変え、淫らなローションまみれの結合部を中心に、肉感豊かな白い躯をゆるやかに動かすのを見ていると、その姿は神々しいまでに荘厳だった。
 とにかくその挿入の角度は、存在を誇っているそれを通常の向きより60度から100度くらい変えるものばかりで、怒張が120%の飽和に達し、無理な角度で嵌めているからカリ首が肉壺を滑る快感は接触表面からだけでなく芯からも響き渡った。
 しかし、勃起が強過ぎても、ローションのお蔭で、また、吐精をこらえる意志のため、如意棒から潤滑油のよだれは出ても、エキスは簡単には噴出しない。
 私は恍惚の気分のまま極限の状態が続き、マットプレイが終わると、日頃あまり使わない筋肉が強ばっているのを感じた。
 神に捧げる生殖の儀式を思わせる女上位の交合の後で、私の躯についたローションをシャワーで洗い流す動作一つを取っても、玲子は他の女と違っていた。
 誰でもマットに寝そべった男の股間からローションのぬめりを流すけれど、玲子は脚や腹、胸からシャワーをかけた。その間シャワーを持っていない方の手は必ず肉棒をさわっている。噴出を耐えに耐えて赤らんだものは名残惜しそうに優しい眼差しで最後に洗った。
 玲子はプレイの最中あれやこれや喋らない。顔つきで会話をした。その表情が私には懐かしい。
 私は玲子に通いだして半年間、会う度にそれまでにされたことのない愛撫が繰り出されるから、レパートリーの広いことに驚いた。毎度前回とは違うやり方で股間を刺激されて、驚嘆すべき究極のソープ嬢だと思った。
 千変万化の交合の体位は流れるように続き、腰が柔軟にねっとりと動いていた。深浅自在に腰を動かし、ペニスが外れぬよう接合部に視線をやって、腰を動かす振幅を確かめているような玲子の眼差しは、崇高なまでに慈愛に満ちていた。
 私は玲子を前にすると、まるで自分が性の求道者になったような気がした。誠に何から何まで性技の女帝王、性道の神様だ。私の貧弱な性体験では想像ができないような愛撫と交合の動作を体験すると、玲子がこのような特殊技能を一体誰に教育されたのであろうか、と不思議でならなかった。
 玲子がマットプレイの全ての技を出し尽くし、延々と奉仕をして、それで吐精を耐えられる男は私以外には殆どいない。
「貴方にマットをしていると、手がふやけてしまう。これっ!」
 玲子が、私の眼の前に手のひらを差し出して含み笑いをしたことが何度かあった。
 私は眼鏡を外しているし、快感で朦朧としているから、手のふやけ具合は確かめられないが、温いローション液が乾くことなく、それだけ長時間手を使ったらふやけるに違いないと納得した。
 私が、大方のソープ嬢がしているような、ただ肌と肌とをすり合わせたり、背中や腿などのしょうもないところへ唇を這わせてばかりいる、まともにペニスを弄わないマットプレイを引き合いに出して、その強烈なペッティングを褒めると、玲子はにっこり笑った。
「皆、滑って転んでツルリンコのマットだもんね」

 マットが終わると、玲子は私にブランデーを勧める。私が床にバスタオルを敷いてあぐらを組み、酒を飲みながら談笑しようとしても、玲子はあまりついて来ない。
 何か落ち着いた雰囲気のある女で、休みの日には何をしているのか、どんな客が来るのか、店の仲間とどのような会話をしているのか、そんなことを饒舌に話したりはしなかった。
「何故、貴女はお話ししないで、僕のちんちんをかまってばかりしてくれるの?」
「私、お話しするの苦手なの」
「どうしてぇ?」
「お話しするより、これの方が好きなの」
 そう言って、横座りの脚を崩し、フェラチオを始める。
「マットで亢奮し過ぎたからパパ少し休ませて、と息子が訴えているよ」
 玲子はかまわず、中途半端に崩していた脚を投げ出し、床に腹這いになって、ますますぺろぺろとカリ首に舌を這わす。
 私は、ベッドインの前の、煙草を吸ったり酒を飲んだりして寛いでいる時に、床に腹這いになって愛技を振る舞う女に会ったことがなかった。だから、毎度感嘆してあぐらの脚を広げ、玲子が愛撫しやすいように上体を後ろに反らして、更に飲んだ。
 ペニスをしゃぶっているのが私によく見えるように、玲子が私の腹の上に垂れた長い髪をかき上げると、その横顔が何とも凄艶だった。
 ストレートパーマの艶々した見事な黒髪が背の中ほどまで流れ、そこからぎゅっと括れたウエストが続いて、その向こうには丸々とした豊かな尻がある。肩のほうから眺めているから、ウエストの双曲線が深く、華麗なラインに見える。ゆるみのない肌が若々しい。
 しどけなく床に伏して無心に這わすその舌先を見ながら、私は玲子の乳房の先を弄う。
 玲子がペニスを咥えると、何か自然にしているという想いがした。目許が優しい。そこまで徹底して奉仕されると、何だか恥ずかしかった。
 毎度のそのシーンが、思い出す度に懐かしい。
 それで、「今度は僕に攻めさせてよ」と求めて、玲子にベッドの端に座らせる。床に敷いたタオルの上に座っていた私は、そのままベッドの方に向きを変える。
 玲子の脚の間に入って、両手で秘めやかな谷間を開けた。秘所はふっくらしていて、開脚するだけでは陰裂があまり開かない。
 大柄な肉体の割には、舟形の窪地は短かく、クリトリスも守る包皮も随分と奥まっていて、覗くクリトリスも小さい。それに続く茶色がかったピンク色の肉片が薄くて短い扉だ。大陰唇下部には殆ど毛が生えていないから少女のような割れ目に見える。明らかに出産経験は認められない。
 包皮を剥いてクリトリスを吸い出そうとしても、なかなか吸い出せない。唇で摘むことは到底できなかった。正面からぺちゃぺちゃと舐めるのが精一杯で、思い切り突き出した舌は根元がすぐに痛くなる。そんな沈み方だからか、玲子は愛液もあまり出なかった。
 私がクンニリングスをすると、頃合いを見て、玲子は相舐めに誘導する。ペニスを口に含んだとたん強烈に唇でしごくので、私はすぐにインサートに移らざるを得なくなる。
 マットではあらゆる体位を試みた玲子も、ベッドでは私が上の正上位で導いた。私は持続させたいと思っても、もう玲子の尺八により前立腺から溜まり袋へエキスが滲み出ている状態で、また、バギナの締めつけもきついから、ペニスが陰門に往復する様を鑑賞する間もなく花火を打ち上げた。
 実に強烈な、気を失いそうな射精感だった。
 私は玲子に気をやらせたことは一度もなかった。玲子は「陰核派」ではなかった。クリトリスへの刺激ではなく、ペニスの抽送ならイクことができるけれど、相当の時間を要する、と言った。
 イカないことを私が咎めると、「簡単にイケる娘は羨ましい」と呟いた。
 クリトリスを刺激しても気をやらせられない。かといって、肉壷に指を入れてGスポットを攻めても反応がない。こういう女はインサートでイクことも難しいだろう、「簡単に」と言うのは単なる飾りの接頭語のようもので、玲子はイッたことが殆どないのではないか、と私は思った。

 店の批判、店の仲間の悪口、常連客のいけ好かない男の愚痴、このような話を玲子は滅多に口にしなかった。いつももの静かなことが、長所でもあり欠点でもあった。
 私は、玲子が私にうち解けているようで、個人的なことを殆ど話題にしないのが不満だった。でも、それがこの女の性格なのだろうと理解した。
 女にしては多弁ではない玲子が長く喋るのは、けったいな客を取ったのを報告するときだった。
「完璧な包茎で、皮を押しても、先っちょに直径が1センチもない小さな輪ができて、中身が覗ける程度だったのよ。くさいし、それじゃぁ、もう、ゴムをつけなきゃ尺八もする気にならないから、ゴム尺で勃たせて、それで入れさせたら、腰を動かす度に痛そうなの。『貴方、大丈夫?』と訊くと『うん、大丈夫』と言うけど、やっぱり痛そうなの。『貴方、本当に大丈夫なの。痛くないの?』と、もう一度尋ねても、『心配しなくていいよ。いつもこういうふうだから』と言うの。それで、ときどき腰を引く仕草があるの。見るとその人、顔から躯から脂汗を流しているのよ。驚いたわ。そのうちに、『もういいですから』と止められたのだけれど、サックを取ったら何だか先が赤いの。『あんた、血が出ているんじゃない?』と言ったんだけれど、そんなので、どうしてここへ来たがるのかしら? その人、イッていないのよ」
 玲子は私生活のことを進んで語ることは殆どなかったが、ソープ稼業のことについてはたまにしみじみと想い出話をした。
「今はソープの新人の講習を男の人がすることが多いけれど、私が素人で入った時は皆店のお姉さんに教えて貰ったの。あの頃は私も若かったのよ。まだソープランドではなく、トルコ風呂と言っていたわ。それでねえ、講習でローションを使って女同士の肌がこすれ合うのは、とっても気持ち良かったわ。女の人のおっぱいやお尻って、男の人よりもずーっとすべすべして、マットで互いに躯を合わせていると本当に素敵なのよ。何だかぽーっとしちゃうの。でも、よく考えると、その頃はまだ透明なローションではなくて、石鹸液を使っていたわ。私って、古いのねえ。だけど、やっぱり講習は、女の人から指導を受けるだけでは、肝心なことがもう一つ飲み込めなかったわ。私達、男の人を相手にするんだものねえ」
 玲子が個人的なことを一度だけ呟いたことがあった。
 要するに、自分は愚かな贅沢をしてソープの稼ぎを無駄なことに浪費するようなことはしない、休みの日も存外と堅実な行動をしている、普段は洗い晒しのジーパン姿だし、その格好で大きな麦わら帽子を被って結構長い距離をちゃんと自転車を使ってプールに行き、美容と健康のため泳いでいる、でも、プールに通って脚をスリムにしようと思っても、そんなに自転車に乗っていたら逆効果かもしれない、という趣旨のことをにこやかに私に語った。
 私は、いつもすぐにフェラチオにかかる玲子がそのような語りかけをしたのが意外で、また嬉しくて、そんな些細なことでも記憶に留めていた。
 玲子が別の店に行っていて、1年後にまたヴィーナスに戻り、久し振りに逢った時こんなことを言った。
「あちらの店は綺麗な若いアイドルみたいな娘ばかりを揃えて、写真をじゃんじゃん雑誌に出して、それでお客さんを呼んでいるの。仕事なんか誰もわかっちゃいないわ。お客さんも若い人ばかり。金津園へ半年に1回来る程度の人よ。ソープの楽しみ方を皆知らない。それでは私も仕事ができないの。ろくにさわらせても貰えない。こんな小母さんが行く店じゃなかったのね。若い娘に仕事を教えたりすると、『えーっ、そんなことするの!』と言うんだからぁ。結局ここに戻って来ちゃったわ」
 玲子にしてはいつになく言葉数が多かった。

 玲子は癖のない性格だし、とにかく閨の技が抜群なことが何とも私を魅了した。
 しかし、あまり話をしないので、愛人のような甘い雰囲気が欠けていて、いかにも金銭を対価とする性的奉仕請負人と感じることがあった。
 だから、私はもう一つ「惚れた」という気分が湧かなかった。それに、玲子が気をやらないから2人でセックスを愉しんでいるという充実感がなかった。
 玲子の淫奔な性戯がいかに魅惑でも、それに慣れてしまうと、逢いたい意欲が薄れた。通った4年のうち後半の2年は逢う回数が落ちていた。
 玲子に愛撫されると、カリ首のエラやら溝やら鈴口やら微妙なところをがんがん攻められる。私は玲子に恋いこがれていたのではないから、ペニスは、いわば強制的に充血させられているようなものだ。
 その刺激があまりに強過ぎて、他の女の普通の愛撫が全くもの足りなくなってしまった。
 それで、優しい愛撫ではペニスが不如意になることがあって、危機感のようなものを感じるようになった頃、エイズ対策で、玲子がコンドームを使うようになった。平成4年の5月に金津園は全部の店がゴム着用と決めたのだ。
 そうなると、玲子の強烈な物理的刺激に慣れた私のペニスはゴムの緩衝があれば隆起が不充分になる。玲子の得意技の、マットの上で女上位でする様々な体位を愉しみたくても、ゴムが外れやしないかと玲子が気にしているのを見ると、私は今一つ感興が損なわれるような気がした。
 それで、未練の気持ちはあったものの、とうとう通うのをやめたのだった。
 玲子が新人の時のことを「トルコ風呂と言っていたわ」と「石鹸液を使っていたわ」と説明した。
 トルコ風呂という言い方を避けるようになったのは昭和59年らしい。金津園がトルコ風呂と言わないのが浸透したのは恐らく昭和60年だろうと思う。
 マットプレイで石鹸液ではなくローション液を使うようになったのがいつだったか全く覚えていない。ひょっとしたら昭和60年だったかも知れない。
 となると、玲子が業界入りしたのは昭和59年が可能性として最も古い年になる。玲子がもしこの時に20歳ならば、私が最後に玲子に入浴した平成5年には玲子は26歳、平成24年には47歳となる。
 こんな計算をしたのは、実は、平成24年でも玲子が現役の可能性があるからだ。だから仮名にしている。仮名にするのがもったいない業師だ。
金津園遊びの実録  初会の金津園遊び  ソープ嬢を愛しむ  トップページ
(千戸拾倍 著)