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初めての月4回入浴

 平成四年の頃私は恵里亜のとマスターズの夏木ルイに熱心に通っていた。
 平成五年の二月一日に半日休暇をとって夏木ルイに会う予定だったが、恒例のドタキャンを喰らった。
 それで仕方なく恵里亜の由美(仮名)に入ったが、それが同一嬢に月に四回入浴するという珍事を生むことになった。それまで同一嬢に月に三回入浴したことはないから、瞬間発火的ベタ惚れ状態に突入したことは間違いない。
 平成五年二月私は名古屋駅まで出て、マスターズに予約確認の電話を入れたらドタキャンを喰らった。どうしようか考えた時、平成三年の初夏に一度入浴したきりになった恵里亜の由美のことが頭をよぎった。
 由美との初会は何やら物足りなくてそれっきりになったけれど、あの時由美がちょっとクンニリングスしただけであっけなくアクメに至って、トローンとした顔をしていたのが記憶にあった。
 女をイカせるのが趣味だから、由美でもよかろう。由美は若いし、性感がとても良い。私はそう思って恵里亜に聞いてみることにした。店に電話すると由美は出ていて、希望時間が空いていた。
 岐阜に向かう電車の中で私は由美との初会を振り返った。
 古馴染みの梓が店の女をよく紹介したので、唆されて何人かの女に会った。しかし、どの女も梓の魅力には及ばないから、心を動かされることはなかなかなかった。
 梓の勧めで一年半前由美に会うことになったときも、梓以上に気に入る女が現れるはずがないと思っていた。
「一度由美ちゃんに入ってあげてよ。本当にいい子だから。××さん、きっと気に入るわ」
 梓が何度も頼み込むように勧めたので、私は由美に会うことにしたのだった。
 由美は確か二十一と言った。だから、もう二十三になっているかもしれない。梓より四つ若い筈だ。痩せた顔の中で大きな眼が目立ち、眼と口許が引き締まって利発そうに見え、なかなか気を惹くところもあったという記憶だ。
 でも、私は割とグラマーか背が高いとか、お喋りで間が持ちやすいとか、性の技がとても上手いとかの、はっきり特徴のある女に通うので、その時由美がいずれにも該当していないから少々がっかりした。
 ヘアースタイルがまるでかまっていないように見えた。眼、鼻、口と、素材はまともな形をしているけれど、会って二言三言喋る間までに、ヘアーメイクから眉の作り方、喋り方まで、もう少し美しく見せる工夫があるだろうに、と思った。
 売れっ子は初対面でも何やかやと愛想良く話しかけるものだ。由美にはそんな愛想がなかった。私が黙っていれば由美も黙っていた。体型は痩せ気味で、体つきも性格も少し子供ぽく感じた。愛嬌が乏しく、マットプレイの愛撫も下手で、時間も短かった。
 マットが済んで休憩している間、どのように愛撫したら男が感激するのかについて語っても、由美はそんなことには関心がない様子だった。投げやりな感じがしないでもない。
 でも、冗談を言えば愉快そうに聞いているから、そのことに好感を抱いたし、全体に可憐な感じ、素人っぽい風情は、もう一回会おうかと思わせるものがあった。
 そう考えつつも、梓が、こんな素人ぽい、ソープに来て月日の経っていない、技の下手な女を勧めるなんて!と怪訝に思いもした。
 梓は、私がフリーで店に入ると、「経験の浅い女は嫌だよ。仕事のできる子がいい」と店の男に注文をつけることを知っている筈だ。
 カリ首をねっとりと揉んだり、フェラチオで濃厚に吸い立てる女を好むのを判っていて、そんなことを全くしない由美を推したのを咎めるべきか、本当に癖のない素人ぽい女を、こんな女の子もどう?と紹介した好意を愛でるべきか、私は判断に迷った。
 ベッドプレイになって驚いた。
 由美は並外れたくすぐったがり屋で、乳首や脇腹に指先ですーっと触れると身をよじって拒んだ。
 乳房や尻がそれほどふくらんでいない未発達の体型なのに、クリトリスがぴょっこりと飛び出して、それまでに相手した誰よりも鋭敏で、軽く吸っただけで、「それ、きつい!」と言った。
 優しく正面から女芯に舌を這わすと、「いぃ、いぃ」とよがりながらあっけなくアクメに至った。ガクンと躯を震わせた後恥ずかしそうにしていたが、これほど敏感ならどんな客でも気をやるぞと思うと、少々醒めた気分だった。
 私はペニスの充血が完全でないまま挿入し、さほど心が燃焼せぬまま気をやった。
 その日由美は最後まで口数が少なかった。だから、私は瞬間恋愛の気分が昂まらなかった。早漏気味に果てたのを照れ隠しするように、由美に、マットのやり方が不充分だからもっと愛撫をしっかりやるように、とアドバイスをして入浴を終えたのだ。
 後日梓に逢うと、梓は既に由美から私が入浴したことを聞いていた。
「ねえ、由美ちゃんはえらく敏感な娘だねえ。脇腹もおっぱいも、こそばゆがってどこもさわらせてくれない。あんなに感じやすい娘には会ったことがないよ。それで、クリちゃんをちょっと舐めたら、あっという間にイッちゃうんだもん、びっくりしたぜ。……しかし、技と化粧がもう少し何とかならないものかなぁ。それに、あの娘は痩せすぎだぜ。骨盤が浮き出ていた」
「でも、いい娘でしょ」
 梓はニソッと笑った。また由美に会いに行ってやるようにと言っていたけれども、私は由美に裏を返すかどうか随分迷った。
 クンニリングスであれほど早く気をやった女はいないから、それはとても愉快だ。由美のセックス好きなことと若さには惹かれる。でも、口数が少ないのは面白くない。私の抽送を受け入れる顔も無機的なものに思え、情が通えない小娘のような気がした。
 それから梓と逢う度に由美の名前がよく出てきた。
「もう一度入って見たらぁ。由美ちゃん、××さんが印象深かったようよ」
 そう梓に煽られても、足が向かなかった。
「ねえ、由美ちゃんに会ったらぁ。彼女、変わったわよ。私、由美ちゃんを応援しているんだからぁ」
 どうして梓がそれほどまでに由美を勧めるのか怪訝だった。
 由美も梓から、「ねえ、××さん来たぁ? 背の低い、眼鏡をかけた人。むちゃくちゃ気難しそうな顔の人よ」と尋ねられていた。そのことは後になって聞いた。
 結局ずーっと再訪してなかった。でも、由美があっけなく気をやったのがどうにも印象的で、予約が潰れた穴埋めに、梓の頼みも念頭に置いて再度由美に入浴することにした。
 由美は性的なサービスが上達しているかもしれないと期待して、私は予約の電話を入れた。
 由美との初会を振り返っているうちに電車の岐阜駅到着が迫った。いろいろ迷った末に再度の指名をしたけれど、既に初会から一年半経っていて、今更会うのも由美に悪いような気がした。どういう表情で迎えてくれるのかな、と私は考えた。

 由美は私を憶えていた。梓が時々私のことを由美に話したので当然とも言えるが、憶えていたことに安心した。
 由美の顔を見て、私は由美の化粧があまり上手になっていないと思った。初対面の時の幼っぽい雰囲気はさすがに消えていた。裸になると、胸や腰の辺りに少し脂肪がつき、女らしくなった。
 由美は衣服の収納から煙草と酒の出し方まで手際がよく、接客稼業が板についていた。最近のはやり具合を尋ね、梓がもう一度会うように何度も勧めたことなどを語ると、由美は笑顔で応対した。
 明らかに前回より口数が増えて、梓との愉快なやりとりや、コンドームを使うようになって客が減ったという愚痴を、笑みを浮かべて語った。金津園は前年の五月から全店コンドーム着用に変わっていた。
 本指名だから心安げなのか、ソープに来て二年目だから応対にそつがないのか、それとも梓からいろいろ耳にして意欲をかき立てているのか、と疑問が湧くけれど、由美の快活な様子を見て、この女を予約したのは正解のようだと思った。
 由美のマットプレイは少し上手くなっていた。躯をすり寄せて器用に泡踊りの動作をした。でも、ペニスを攻め続けてパンパンに漲らせたままにするような、私が望む、濃厚でねちっこい愛撫がなかった。
 フェラチオはまるで吸引が弱いし、咥えている時間もあっさりと短かい。ペニスへの指や掌の使い方もやはり穏やかすぎた。
 亀頭を愛おしげに揉むような気をそそる指使いは全くなく、私は隆起するタイミングがつかめないようなもどかしさを感じた。ソープ嬢を二年近くもしている女の技巧を期待したのは的外れだった。
 マットの後の休憩時間も、由美は初会とは違って笑顔で私の質問に答えた。
 好感の持てる応対をしているので、私は由美が少しましになったと思い、前に会った時は愛想が悪くマットのやり方ももの足りなかったことを婉曲に言った。
 すると、突然由美が顔に哀しみを浮かべた。
 一体どうしたのか怪訝に思って由美の話を聞いていると、応対の仕方を精一杯工夫し努力しているのにお客がなかなか来てくれない、顔立ちが良くて沢山の指名が入る仲間が羨ましくてしょうがない、P指名もまるで入らないからみじめな気持ちになる自分が情けない、という悲嘆だった。
 親しくなってもいないのに、由美がそんなことをはっきり口にし、意外な長セリフの後には涙を浮かべたから驚いた。
 由美が本指名を三十本以上取るようになりたいと願っているので、私は次のように話した。
「貴女のしている工夫は正しいのだけど、まだちょっと足りないなぁ。マットの実技指導は今度来たときにしてあげるから、今は基本的な心構えだけ教えるよ。いいかい。本当の売れっ子は、顔やスタイルがいいだけじゃあないよ。+αが必ずある。
 一つは、恋人ムードに徹し甘い言葉も口に出し、雰囲気を作って男をその気にさせる。『貴方みたいな人、好きよ』なんて、演技でもいいから囁いてみる。そして、できるだけ相手の眼を見つめて、話上手か聞き上手になる。男は、皆純情なんだから、すぐにぐっとくるよ。これは要するにムード派だよ。
 もう一つは、徹底的に技を磨くこと。貴女のようにお尻の穴を舐める、こういう、他の子があまりしないことを上手にしっかりやる。しかも、手や唇の使い方に適度な圧力があって、充分に時間をかけて大胆にさわって、おちんちんを勃たせ放しにする。これはテクニック派だ。こちらの方が上達するのは簡単だから、ちょっとそのつもりで心掛ければすぐ上手くなるよ。僕は金津園でトップクラスの女の技を知っているから、それを教えてあげる。大体貴女はマットにかける時間が短か過ぎるよ。マットが好きな客にはもっとじっくりとマットでサービスをしなきゃ。今度会ったとき男が悦ぶマットの技を教えてあげよう。決して難しいことではないからぁ」
「うん。じゃあ今度来たときに教えて。それとね、梓さんにね、『お客さんに来て貰うにはどうしたらいいの?』って訊いたらね、『あんた、助平になるのよ、助平に。由美ちゃん、助平になりなさい。それにあんた、化粧がいけない。もっとちゃんと化粧しなさいよ』と言うの。化粧は何とかするとしても、助平になれ、と言われたってどうしたらいいのかよく判んない」
「そう、梓が言う通り人気が出るこつは、自分が徹底的に助平になる、つまり、派手にイキまくるとか、攻められたとき演技でもいいから声を出すとか、エロ話に上手に付き合うとか、おちんちんをしゃぶるのが大好きだという顔つきになることだと思うよ。もし、自分が助平になれないなら、その代り相手を徹底的に助平にさせる、心から発情させて完璧に気持ち良くさせる、この二つのどちらかができるといい。これが大切だと思って、相手を助平にさせるにはどうしたらいいか、いろいろ工夫しなきゃあ。何しろ結果がすぐ判る。おちんちんがぴんぴんになっているかどうか、その場でたちどころに成果がわかるんだから」
「ふーん、何で、かちんかちんになってくれないのかって思っていちゃ駄目なのね。ぴんぴんになってくれないこと、多いんだもの」
「そうだよ、相手がかちんかちんにならないときは、何かが足りないと思うべきだよ。もともと勃起するのが好きな男がここへ来るのだからぁ。それで、いろんな刺激の仕方を試してみて、張り具合が強まったときは、どういうふうにしたから固くなったのか、よく観察するの。それとね、貴女達が店に入った時、古手の姐さん達に、仕事でイッては駄目などと言われたことない? もし、そういうことを聞いたとしたら、それは間違い。昔の赤線なんかと違って、貴女達はいいものを食べて、休みもしっかり取っているのだから。本当に躯が痛んでいるなら別だけど、女の躯は男と違って大丈夫な筈。イケるときはイッて、男をその気にさせなきゃあ」
「そうよ、そうそう。私もそれ、何年もやってるようなお姐さんに言われたわ。そのときは、そんなものかなと思っていたんだけど」
「やはり、そういうことを言う姐さんがいたの。性のプロは客とではイカないなんてね。それとね、ここの店もよその店も最近はゴムをつけて尺八をする娘が多くなったけど、口でエイズなんて簡単に移らないから、ゴム尺はしない方がいい。四万円近くも出してそれでは、生尺のファッションヘルスに皆逃げてしまうよ。ゴム尺は、唇の圧力が弱いとゴム長の上から足をかくようなものだもんね。キスもしなきゃあ」
「ゴム長の上から足をかくようだなんて面白いわねえ。ゴム尺のことはこの前ミーティングでも言われたわ。前はね、尺八も必ずコンドームをつけてするようにって言ってたの。だけど、この間は、はっきりとは言わなかったけれど、尺八ぐらいはできれば生でしたらということだったわ。お客さんも、何だと言う人、多いもんねえ。私もどうかなーって思っていたの」
「僕なんかは、女の子に気持ち良くなって貰うために、クリちゃんをちゃんと生で、しっかり舐めてあげるんだよ。皆、嬉しがっているのに、自分がするときは、コンドームをつけなきゃ尺八ができないというのは、けしからん話だ。それなら、自分のクリちゃんにもコンドームをつけろと言いたいよ」
「ははっ、クリちゃん用のコンドームはないもんねえ」
「それと、ムード作りという点ではね、お客さんとお喋りするときはね、テーブルの向こうに腰を下ろして、向かい合って座るんじゃなくて、横にぴったりと座った方がいいよ。JRの列車の向かい合った座席に、恋人同士がどういうふうに座るか考えてごらん」
「そうねえ、こういうふうに横に座った方が雰囲気がいいよねえ。でも、お店がねっ、お客さんと向かい合って座るようにって指導しているのよ。馴れ馴れしいのは良くないって」
「へーぇ、そんなことまで言ったの。全くわかってないんだねえ。初対面と、二回目、三回目は相手の仕方を変えなきゃあ。テーブルの向こうにいたんじゃ、キスもできないぜ。大体店の指導なんて、ろくなことを言っていないことがよくあるよ。マットでおちんちんをあまり手でこすっちゃいけない、手で出させるつもりみたいだ、なんてね。手でさわってはいけないって、言われなかったかい?」
「うん、そう教えられたわ。おちんちんには尺八をしなさいって」
「やっぱりそうなの。ローションがあるということは指も使えばいいということだよ。包茎なんかの敏感過ぎるおちんちんは別としてね。恐る恐るさわる娘がいるけど、プロなんだからそれじゃあ駄目だなぁ。幹の方に指を往復運動させるのではなくて、丸くなった先のところだけをきっちりと刺激して、気持ち良くさせなきゃ。発射するかしないかは、慣れれば見当がつくのだから。大体僕なんかはフェラチオよりも指でして貰った方がよほど好きだ。吸い込みや唇の圧力が弱い尺八だと、勃ってくれないことがあるよ。要するに、あの部分、先のところに掌や指や唇を絡ませて、きっちりとねちっこく刺激し続けてあげればいいんだ。わかる?」
「うん」
「マットにしたって、この店の指導は、これまでここの女の子に入ってみて、あんまりいい指導を受けているとは思えないよ。梓を除けば、皆誰でも、男の躯の上で女が体操をしているようなやり方で、背中やら脚やら性感帯ではないところばかりをすりすりしている。肝心なところへちっとも来ない。そういう、見た目に派手なだけのマットは、本当に人気のある娘はあんまりやらないよ。No.1やNo.2を引く娘は、どの店の女の子も皆おちんちんのさわり方が上手だもの。由美さんは、この店の娘では珍しく、お尻の穴を舐めるけれど、店から教えられたの?」
「ううん。お客さんがそういうことをしなさいって教えてくれたの。やってみると皆、『あんた、すごいことするんだねえ』って言ってくれるから、これはいいんだなぁと思って」
「やっぱり、店の指導じゃなかったんだね。ああいうのはやった方がいい。お客が嫌な奴でなかったら、どんどんしてあげなさいよ」
「うん。だけど、××さん、そんなにいろんなところの売れっ子に入っているのぉ?」
「経験豊富だからわかるの。お尻の穴を舐めることができる娘は、マットが上手になる素質があるって。マットでおちんちんを上手に刺激するのは簡単なことだから、今度教えてあげる」
「うん、わかった。どうやったらいいか、絶対に教えてね、うふふっ」
 私は由美に「マットの実技指導は今度来たときにしてあげるから、今は基本的な心構えだけ教えるよ。いいかい……」と話し始めた時は、由美が二年近くもソープ嬢をしているのに、ペニスの愛撫の仕方がまるでわかっていないことに嫌気がさしていた。
(また来る気はないくせに、こんな言い方をしてぇ!)
 そう思って、座興の気分で男へのペッティングのやり方を教えた。
 でも、長い指導の最後に由美から次回のマット指導を念押しされた頃にはもう心が浮き立っていた。
 私は、由美が「だけど、××さん、そんなにいろんなところの売れっ子に入っているのぉ?」と言ったのが耳に残った。
 初対面同様だから、私を指す言葉は、貴方や、お客さんや、おにいさんなどを使うか、本人を示す主語を省くか、それが当たり前だ。それに、私の名前を由美に印象づけるような会話は全くしていない。それなのに、由美が「××さん」と呼んだ。客を呼ぶ方策を聞かれたことも併せ、由美の応対のすべてが私の欲望を煽った。
 私はその日昼からの遊興で、陽の高いうちからセックスをするのは久し振りだ。ベッドに誘う頃合いではあるけれど、部屋に一つだけの窓が陽光に映えていて戸惑いを覚えた。
 由美は眼がくりくりしていて、肩は多少立ち気味だが幅は狭く、ウエストがかなり細い。その割にヒップがそこそこに張り出している。尻の両横がそげ落ちているのが難点だが、下腹が全く出ておらず、肌に張りがあり、目障りなふすべのようなものは全く見当たらない。
 ヘアースタイルは凝ったものではなく、化粧もそれほど入念に施しているようには思えない。風俗稼業をしている割にはセンスが良くないと思うが、一方では、その化粧下手とズベ公にはほど遠いしっかりした応対が素人っぽくて好感が持てる。
 ベッドに横たわった由美の、色白ではないが浅黒くもない肌がなめらかだ。
 私は胸を高鳴らせて由美の若々しい肌に唇を押し当てた。
 胸元から脇腹、鼠蹊部へゆっくりと唇を滑らせると、やはり由美は一年半前の初対面の時と同様に大層くすぐったがった。くすぐったがりようが尋常でないので、私はどう愛撫したらいいのかと戸惑った。
 クンニリングスならばくすぐったくはないと言うので、初会の時と同じだなと思い、早速とりかかろうと由美の脇から足の間に入った。
 由美はそれを待ち受けていたように膝を引きつけて股間を晒した。部屋の明かりを全く落としていないので、アナルの皺まで丸見えになり、たっぷり愛撫して下さいと訴えるような猥褻なポーズだ。
 私は、前回の由美のあっけないほどのオーガズムへの到達を振り返りながら、形について殆ど記憶が残っていない陰裂を確かめた。
 間近に眺めると、大陰唇には脂肪がのっているのにクリトリスも小陰唇も更に顕著に突き出している。女性器が成長しきった形をしており、感度がいいのがうなずけた。
 小陰唇の左右からアナルにかけて見事に除毛されて、細かな皺が浮いた着色地帯の地肌が完全に確かめられた。手入れが行き届いていることに感心した。当然、性器臭もない。多毛の性器は臭うことが多く、クンニリングスもしにくいから、私は好きではなかった。
 由美のクリトリスは日本人の女としてはかなり大きい。その根元を親指で押し上げて、張りのある肉色の丸みの大きさを確認してから、私は肉豆にこだわるオーラルプレイにかかった。
 肉の小突起を舌先で上下に左右に掃くように弄うと、由美はすぐに細かな震えを見せた。
 いつも私が梓にしている、肉芽を吸いしゃぶるやり方は由美には刺激が強すぎるようで、由美の注文に合わせてできるだけ優しく唇と舌を這わせた。
 これでクンニリングスと言えるのかと思えるような迫力のない動きだけれども、それでも由美は快感の波に耐えかねるように腰をよじらせて濡れそぼった。
 由美は「ああー」と「いいー」の悩ましいよがり声を何度か繰り返すと、さほど長くもない翻弄で、最後は続けざまの喘ぎ声を上げて一気に頂点まで上りつめた。
 由美がよがり声を響かせて早々とオーガズムに達し、気をやった後は、ちょっとでも乳房や秘部に触れると全く耐えられなくて、こそばゆがって躯が逃げる仕草に私は無性に惹きつけられた。
 初めて会った時には、由美が何も物事を考えていないちんぴら少女のように見えて、エクスタシーも即物的で三人称的な絶頂の感があった。
 再び会うと、親しくなってもいないのに劣等感を打ち明けられ、由美が初会と同様の鋭敏さを見せても、細身の躯を突っ張らせ、最後は身をよじるようにして屈ませるエクスタシーが、私は格段に女らしい二人称的な情緒のあるものに思えた。
 クンニリングスをしている間、由美がペニスに全く触れなくても、最初から最後まで下腹部に棒切れを支えている感触があった。我が身の充血の持続ぶりに、女の応対の仕方の違いでこうまで亢奮が昂まるのかと驚いた。
 由美がペニスにコンドームをつけた後、私は一段と昂然とした気分で合体した。
 コンドームを使って性交したことが殆どなくて、途中で萎えないかという不安が大いにあった。でも、ゴムに覆われて感覚が鈍くなったペニスを、濡れそぼった膣道に激しく往復させると、不要な懸念だった。
 抽送を受ける由美の表情は、互いに情交をしているという気分が湧く甘さと優しさがあった。私の目を見つめ返したりして、初会の時のような感情の入らないものではなかった。
 私は微笑みを浮かべた由美の顔を見ながら肉の摩擦を愉しんだ。由美の両足を抱えて激しいピストン運動の疲労感が心地よく、唸り声を上げて気をやった。
 由美がティッシュを取るため起きあがって腰を引いた時、私はシーツに大きな滲みを認め、眼を瞠った。
 息を整える私は、相方を誰にするか随分迷ったあげくの意外な成果に満足して、コンドームの精液溜まりを眺めた。

 私は数日後、由美に三度目の対面をした。そんなに早く続けて逢うのは、長年ソープで遊んでいるけれども初めてだ。由美もあまりに早い私の再来を驚いた。
 分身は由美に逢う前からやけに勢いづいていた。若くもないのに、起立する必要もないときから異常なほど元気な状態が続くので、一体どうしたんだろうかと思いもした。
 私は勃起したペニスを教材にして由美に男の扱い方を伝授した。客には中年も老人の男も多いし、ローションという便利なものもあるのだから、カリ首の愛撫はフェラチオでするものと思いこむ必要はないと教えた。
「男は皆長々とペニスを咥えられていたいと思っているに違いないけれど、フィンガーマッサージでも、指の動かし方が上手で、いやらしくて、ずーっと両手を複合的に動かし、しかも、ペニスを揉みながら囁く言葉や視線の送り方や身体のすり寄せ方が男の気をそそるものならば、男は女に感動するんだよ。それに、君がエロビデオを見たことがあるならわかるだろうけれど、男が最後に射精するとき、随分手の動かし方が激しそうだとわかるだろう? 男のあそこはなかなか強い刺激が必要なんだよ」
 そう言って、掌や指による刺激のテクニックを、特に、カリ首の柔肌とエラ、それに先端の二つの丸みを徹底して攻めることを説明した。
 ペニスを継続的に弄って起立させ続けて、それを楽しむ遊び心を教えた。カリ首を右手でこすれば、左手は必ず金的を揉んだりアナルをさすったりし、金的をパックリ咥えてマウスマッサージもしなさい、とマルチ愛撫を勧めた。
 由美は、まるで学校の生徒のように反応し、あまりに熱心なので、私はそんな淫らな講義をすることがとても愉快だった。
 怒張すればすぐにインサートをさせるのは、私のような吐精を一回としている男には必ずしも面白くないので、完全に勃起をしていても、しばらくは嵌めずにねちっこくカリ首の愛撫を続け、発射させないで長々と快感を愉しませるマットプレイもあることを説明した。
 梓がしていたことで由美にできそうなことは何か考えて教えた。
 由美は「私、今まで考え違いをしていたわ」と呟いて実技のおさらいをした。
 マットが終わった後の談笑の間、由美は私に甘えるような雰囲気で寄り添った。ヘネシーをロックで飲みながら、私は何とも言えぬ充実感があった。
 ふと由美の顔を見ると、パーマのかかった短い前髪が、湯気で形が崩れて持ち上がって、後ろにたたんだ髪もこんもりとし、額が目立って、唇が薄目で、マンガのサザエさんのようだ。
 サザエさんみたいだと冷やかし、ヘヤーを何とかしろよと言うと、由美は額に長い横皺を三つばかり作って眼を見開いた。
 犬が人の言葉を発するのを見たサザエさんのような顔になった。
「うん、何とかするわ」と答えて、それから次のように話し始めた。
「私ね、店長から私一人だけ呼び出されて、『おい由美、お前はちっとも指名が伸びない。これだけこの店にいて、それでも指名が取れないなら、もう、ここにいて貰ってもしょうがない。首にしてしまうぞ。お前に合った店を紹介してやるから』と言われちゃったの。とても悲しかったわ。だから、私、どうしても頑張りたいの。あの店長に文句を言われないようになりたい。青いりんごに行かされたくない。……梓さんにもいろいろアドバイスをして貰っているの」
 由美は少しべそをかいていた。
 由美のようにイキやすい女は人気が出る筈だが、恵里亜の客層は若い男が多くて、女に気をやらせるのが趣味の男はとても少ないようだ。
 接客の態度、視線、会話などで客の男の気を惹く方法などについての雑談が続き、そのうちコンドームが話題になった。
 私は、コンドームが大嫌いで、金津園の店がコンドームを使うことを決めた八ヶ月前からは、梓に会うといつも手技で発射している、と語った。
 由美は、そんな話に特に反応を見せず、聞き流している様子だった。
 ベッドに移り、私が熱烈にクンニリングスをすると、由美はまた早々に米のとぎ汁のような淫水をとろとろと流した。
 前回は、由美の脚の間に腹這いになって正面からクンニリングスをしたので、湧水の有様を見ていなかった。その日は正面ではなく腰の横から顔を差し出し、額と顎で股を割ってクリトリスを吸っているので、会陰を伝ってシーツに落ちる滴を横眼で追うことができた。
 滴は膣口からだけでなく周辺のピンクの肉壁からもしみ出している。ここまでしとどに濡らすのは親密感の表れだと思うと、私は嬉しくなった。
 開ききったラビアは妙に肉厚で高さもあった。由美が小柄で痩せていて、指だって細いのに、そのことからは連想できぬ、肉片の耳朶のような形と大きさ、特に厚みがあることが親近感をそそる。
 クリトリスの下から二又に分かれて伸びたラビアは、分岐点の近くで一気に最大の厚みと突き出しを示し、膣口の方に向かうと急に低くなって、肉厚も薄くなっている。
 由美が陰裂下部の陰毛を見事に処理し、また、ラビアが大陰唇を押しのけるように張り出しているので、濡れた陰裂の全貌がはっきり確認できた。まわりの毛が除かれていることもあって、愛液の流れが会陰からアナルの中央をまっすぐ渡っていた。
 私は愛液が三筋つたったのを認めると、由美の脚の間に移動して正面からのクンニリングスに変えた。
 柔らかな物を当てられて、下からすくい上げるような刺激に、由美は腰をふるわせ、何かにすがろうとするような手の動きを見せた。
 私は、女の忍ぶような表情も、会陰が濡れて光る猥褻な光景も、快感が炸裂する度にふるえる腰も、恥毛が処理してある女陰も大好きだから、視覚と口唇の接触による性的昂揚がこの上もない状態で続いた。
 由美のよがり声を聞きながら、最前のお喋りからベッドまで由美が何もかも私に任せている様子なので、思い切って防具なしのインサートを頼んでみようかと考えた。
 初対面の時は平成三年で、エイズ対策があれこれ言われる前だったからノンサックで交わったけれども、数日前の逢瀬は、由美がコンドームを取り出したので、不満を言わずに装着した。
 純生を頼んで嫌と言われたら互いに気分が良くないから、どうしようかと迷った。前年の五月から仲のいい梓が必ずゴムを使用していたし、その問題についての恵里亜の指導は、マスターズなどより毅然としていたから、由美も同じだろうと思った。
 私は、クンニリングスで由美が腰をふるわせて気をやった後、思い切ってその申し出を言葉にした。
 由美が嫌な素ぶりを見せたら、無理を言わず引き下がるつもりだった。前回のベッドと同様にコンドームを装着しても萎える恐れのないほどペニスが芯から張っていた。
 由美は気をやった後なのでとろんとした眼をして横を向いていたが、その願望を聞いたとたんに顔を私の方に向けた。眼を大きく見開き、私の眼を見つめ、二、三秒後、首を縦に振って眼を瞑った。
 返事が返るまで時間が長く感じられたのと、さっと顔を向けて眼を見開いたとき、ベッドサイドの明かりで瞳がキラキラと輝いたので、そのシーンは忘れることができない。そのときの表情が衝撃だった。
 たまらないほど由美が愛しくなった。
 私は由美の膝を立てた股の間に座って、激昂したペニスを指で下方に押し下げ、しずしずと没入した。充満したカリ首が濡れそぼった肉壁を押し開き、前進が止まると、由美は「ふっ」と吐息を洩らした。
 由美はあまり脂肪がついていなくて、仰向けになると胸から腹まで平坦に見えるけれども、それに続く陰阜がこんもりと盛り上がって見える。
 かなり恥毛を除去しているから、陰阜を僅かに覆う刈り込んだ茂みと、その下に長く突起した陰核茎部の稜線と、下端の小肉塊と、その尖りを頂点としたÅの字のような結合箇所の上部、全体を囲む除毛された土手の柔らかそうなふくらみ、それらすべてが私はよく観察できた。
 そんな全貌を見ると、Vの字に開いた女の足首を持って、突き立て突き立て一層激しく腰を動かすのが私の常だ。
 由美は迎えるように腰を動かすことはしなかった。叩きつけるように抽送しながら、静かに目を瞑っている顔を眺めると、由美が性経験もそれほどない少女のように見えた。
 私は由美の舌を吸いしゃぶって、薄い唇のその可憐な口も同時に舌で犯したいと思った。
 上体を倒して互いの腹を合わせても、由美の膣口はそれほど奥まっていないので、嵌まり具合はいっこうに変わらずしっかりしている。由美が終始両膝を引きつけて陰裂を上向きにするから、嵌めはずす恐れがなく深く深く抽送できる。
 純生の挿入は、若い女の肉の壁が直に感ぜられて、実に具合がいい。
 私は由美の腋に腕を滑らせ、胸を合わせて口を由美の唇に寄せた。
 長いディープキスをしながら、ヌルヌルの肉壷に抽送し続けた。甘いような温かいものが口腔に満ちる。由美のなめらかな腋に密着させた左右の二の腕で、胸の華奢な横幅を確かめた。
 なよやかな肉体の温かみを全身で感じながら、腹筋を存分に使って深く抜き差しすると、痺れるようなこすれが何とも快い。
 折っていた両脚を揃えて伸ばし、バネが弾むように腰を上下した。ヘアーをクッションにして恥骨に当たる抵抗感も、金的が会陰にぺたぺたと当たる感触も、至上の快感を呼ぶ前奏になっている。
 腰の中枢に何かの兆しのようなものが湧き上がると、私はまた両膝を由美の腰まで引き寄せた。そのまま上体を密着して、激しい呼気が由美の顔にかからぬように由美の頬の横に顔の向きを変えた。
 うねるように腰を送り、左の頬で由美の頬の温もりを探った。頬も腹も膣もすべてが温かく、柔らかい。一段とカリ首が力みかえるのを知覚したところで、顎で由美の肩を押さえるようにして最後のスラストに拍車をかけた。
 性器のぶつかり合いの感触を探っていると、腰の奥に津波がわき上がった。
 ぴしゃぴしゃという音のピッチを上げれば、一気の射精で、深い快感が腰の奥まで響いた。そのまま由美の身体の上でじっとして余韻にひたり、ザーメンまみれのペニスがやがて力を失って、ポロリと外れるのを待った。

 更に数日後、私は四度目の対面をした。
 由美はあきれていたし、私も自分にあきれた。今月三度も店に来て、しかも由美一辺倒で、フロントの男と顔を合わすのが気恥ずかしかった。
「僕の教えたことがちゃんと判っているか、フォローに来たよ」
 由美はにこっとした。
 相変わらず私のペニスは由美に会う前からやたらと勢いがあり、しかも、普通の世間話をしていても力みかえっていた。タラーッと先走り汁を流しまくり、元気が良過ぎるのが不思議だった。
 マットの支度をしながら由美が言った。
「××さんにマットを教えて貰ったでしょう。マットをして欲しいお客さんだと、やるぞと思って一生懸命したの。そしたらね、××さん、月に一回は必ず来てくれる常連のお客さんで、いつもマットをするんだけど、マットでイッたことがない人がこの間来たの。その人、そんなに歳をとっていないのに、いつもマットでは、なかなか勃たなくて、ベッドでも発射できないことがよくあるの。それでね、その人がマットでほんとにぴんぴんになっちゃったの。『おい由美、お前、ものすごく上手になったなぁ。一体どうしたんだ!』と、びっくりしていたわ。珍しくマットでイッちゃったの。それとね、フリーで入ったお客で、次の週にすぐに返ってくれた人がいたの。この店で何人かに入っているようだったけど、『あんた、上手だねえ』って言ってくれて、嬉しかったわ。本当に××さんのお蔭だと思ったわ。感謝してるわ」
「ふーん、そりゃー良かったね。そんなことを聞くと僕も本当に嬉しいよ。それで、マットでイッちゃった人は、ベッドでもイッたの?」
「うん、二回イッたわよ。私、びっくりしたわ。その人、そんなことは初めてだったもん。ほんとに気持ちよさそうにイッてくれたの。他にも『マットが上手だね』って褒めてくれたお客さん、沢山いたわ。私、仕事が楽しくなるわ」
 報告するのが嬉しくてしょうがないという気持ちが伝わると、由美が可愛くてたまらない。
「今日も元気ねえ」
 由美は含み笑いをしながら私の拡張を指先で確かめた。
「ふふっ、もう、いっぱいお汁を垂らしているんだからぁ」
 マットのテクニックはかなり身についていた。掌を巧く使ってカリ首をさすり、金的の吸い方にしても大胆で濃厚になった。
 私の開いた脚の間で、由美がマットに腹這いになって股間を攻めている間、ずーっと私の顔を見つめている。鋭敏だけれどもなかなか降参しない肉塊を右手で攻め立てながら、同時に睾丸を口に含んで引っ張り、上目遣いで私に視線を絡める。私のよがり具合を観察する由美の眼差しが心をかき立てた。
 キスを求めると、由美は私に舌を吸わせ、深い口付けに応じた。キスで私の欲望を煽りながら、同時に掌を使うペニスマッサージがとても上手くなった。
 私は十五分間勃起しっ放しで快楽に耽り、充分満足してマットプレイを終えた。
 それまでの由美の話ぶりから、ソープに来る前にかなり性体験があるようなので、尋ねた。
「ねえ、初めてのセックスはいつだったの。早かったんだろう?」
「うん、早かった。十八のときよ。高校卒業のちょっと前。でも、皆こんなものよ」
 照れたような顔で「……でも、皆こんなものよ」と言う歪めた口許が可愛い。
「好きだったんかい。同級生?」
「そんなに好きでもなかったんだけど、付き合っていて随分求めたから、上げちゃったわ。二つ歳上の人だったの」
「痛かった?」
「うん、痛かった。何でこんなことするんだろうと思った」
「舐めてくれなかったの?」
「うん。いきなり押し込んできた」
「その後は?」
「随分いろいろな男としたの。大学生の人も、三十ぐらいの人ともしたことがあるわ」
「へー、気持ち良かったの?」
「ううん、気持ち良くなったのは大分後のことよ。随分歳が離れていた男の人で、しっかり舐めてくれたから。もう、いろんな男の人とやりまくっていたの。誰かとするとその友達なんかともしていたの。しょっちゅう寝てたの。やるのが目的みたいな感じで」
「随分していたんだねえ。それじゃあ、あんた、まるでさせ子さんじゃあないの。皆、公衆便所と思っていたんじゃない?」
「そうよ。みんな面白がって、次から次へと寄って来たわ。私、それを勘違いしていたの。自分が持てているんだと、他の子とは私は違うんだと。……ちょっと押せばやらしてあげたから、皆、私に近づいてきたの。私にだけ寄ってくるから、いい気になってたの。皆、躯を求めていただけよ、馬鹿だったわ。私、店長に呼ばれて怒鳴られて、悲しくなってはっきり判ったの」
 由美はまたべそをかいた。ますます私は由美が愛しくなった。
 更に数日後、私は五度目の対面をした。
 二月の一ヶ月間に同じ女に四回も入ったのだ。そんな上気した通い方は初めてだった。
 四度ともその日の予約で、当日予約を四回して、四回とも先約なしですんなり入浴できるのは、梓なら金輪際あり得ないことだ。由美の予約が乏しいことがよくわかった。
 毎度百分だけの短い逢瀬だから、由美に逢う度に新しい発見があった。由美は気をやった後のインサートでも口唇愛撫で攻めているときと同じように気持ちよさそうな顔をした。それが私には愉しいけれども、そんな女は多くはいないので、どんな感触なんだろうと思って尋ねた。
「いつもなら、すれて痛くて異物を嵌められたような感じになることもあるけれど、豆でイッた後は、ズコンズコンされると、それがとっても気持ちいいわ。私、イッた後に嵌められるのがいいの」
 由美がそう言うから、イカせるのが大好きな私は一段と嬉しくなった。
 ブランデーを傾けながら喋っていて、私は由美の秘所が見たくなり、股を開くよう頼んだ。
 由美は恥ずかしそうな素ぶりも見せずに立ち上がり、ベッドに腰掛けて股を拡げた。
 着色の薄い、肉厚の扉を指先でかき分けると、割れ目がカパッと開いて、男の眼にはどうにも複雑な形をした紅い秘肉が見えた。自分でラビアを開き、腹に横皺を寄せてのぞき込んでいるのが、牧歌的で愉しい。観音菩薩のように男を慈悲の心で包む仕草が、どうにも猥褻で愛らしい。
 私が指先でクリトリスを包む皮を押し込むと、皮がすーっと後退した。付け根と包皮との境界の皺のようなものを認め、クリトリスが土台から生えている様が覗けた。クリトリスの根元、生え際を、生まれて初めて見ることができた。
 いや、私はクリトリスの薄皮を剥くことは大好きだから、それまでもクリトリスの生え際などは何度も見ているかもしれない。しかし、ピンクの丸みと満々とした張り具合にどうしても眼を奪われてしまうので、これがクリトリスの根元だと意識して眺めたのは、その時が初めてだった。
 クリトリスというものは、しっかり剥いても包皮が奥深くて、陰核亀頭と莢は完全に分離はせず、土台から盛り上がるその生え際などは見えはしない、と思っていたのだが。
 普段は包皮に隠れている弱々しい皮膚を見て、奥まったところにも恥垢が溜まっていないのを確認すると、私は、小学五年生の時、便所でおちんちんの皮がどこまで剥けるのかと試みたことを思い出した。
 包皮を引っ張って、僅かに穂先を覗かせて円形の開口を示す薄皮を、不安でありながらもそのまま引っ張ったら、皮膚が裂けるような痛みの中で、つるりと皮が反転した。黄色い滓のマフラーをつけた亀頭の根元を初めて見て、取り返しのつかない大失敗をしたような不安に襲われたのだった。
 あの時はペニスがすっかりがちんがちんになって、反転した包皮が元に戻らず、顔が青ざめた。
 初めて大気と接触した柔肌が隠れぬまま、かたわになってしまうのではないか、と恐怖におののいた。チーズ色の滓の異様な臭いにもあきれた。まだ自慰も夢精も知らない頃だった。
 クリトリスの全容は円錐形で、ピンク色が可愛らしい。普通はもっと丸っぽいし、また、先端を通る中心線も曲線となる、つまりクリトリスが下向きに垂れているのが多いけれど、由美の場合は結構先細りになっていて中心線が直線だった。
 要するに下から見上げると、肉芽が正三角形程度に尖って見えた。
 私が指を離すと、由美はまた股間を覗き込んだ。両脚を淫らに開き、自分の指で包皮の根元を押さえると、目一杯引っ張った莢の薄皮は影もなく後退し、原形を失って平野になった。その中に底面の狭いピンクの孤立峯が傲然と聳えていた。
 色の薄い、伸びの良い包皮に囲まれたこの小突起が、羨ましいくらい鋭敏で、由美がどんなに目眩くような性感を得ているのか、私はそれを知りたいと思う。
 感じの悪い偉そうな口をきく客が由美に入り、クリトリスを舐め出したので、こんな奴なんかに絶対にイクもんかと心に言い聞かせて我慢していたら、それでもイッちゃって大変悔しかったとか、若い男に腰を使われて、それまでの客でその日はいい加減きざしていたから、あっさりと気をやってしまい、恥ずかしいから男に抱きついて顔を見られないようにして、一生懸命にそれを気取られぬよう努力した、などと由美が語ると、私はペニスが勃ってしまう。
 由美とのベッドは、他の女の場合と少し違っていた。
 由美がベッドに仰臥すると、私はすぐに秘園の上部の小突起を攻めた。脇腹とか乳房に唇を這わせることを殆どせずに、直線的にその箇所を愛撫し、舐め技だけで指技は殆どしなかった。
 クリトリスは明瞭に突き出ていて、思わず吸いつきたくなる。でも、赤ちゃんが乳首を吸うように、唇をすぼめて吸引するような荒々しいやり方は控えた。また、69の形で逆さまに添臥して、由美に唇や指でカリ首を攻めさせながら、私もクリトリスを攻めるという相互愛撫をしなかった。
 由美は、そのようにすれば、より激しく燃える効果がなかった。
 由美が仰臥した脚の間に腹這いになって、膝を立てた両足の太腿を両手で押し開きながら、ソフトクリームを舐めるように舌を使い、クリトリスを正面から愛撫した。
 由美を深く快楽の淵に漂わせるには、由美に何もさせない方が良かった。
 正面から舌を這わすと、舌の先でクリトリスをすくうようにタッピングしても、舌の面全体でクリトリスの辺りを強く撫でても、由美の普段の地声は低い方だけれども、そのときだけは「いぃ、いぃ」と高い声が洩れて、同時にとろりと愛液が流れ出た。
 その「いぃ、いぃ」が何回か出ると「イキそーぅ」と喘いで叫び、最後は悲鳴に似た「イッちゃうー!」で身をよじった。地声とは異なる、澄んだ高音の、実に耳に響きの良い声だ。
 私は、いつもこの艶かしい終末の悲鳴と、細い腰がくねる仕草に、脳天から煽られた。若い女体がアクメにふるえるのを見て、毎度、由美に何も前戯をさせずに、昂然と怒張を果たして合体した。
 全てが済んで、私は身繕いをしながら由美に尋ねた。
「今月、由美ちゃんの所に四回も来たけれど、前、三回僕が来て、そのことは梓に教えた?」
「ううん、言っていない。だって、言いづらいもの。今月の最初、貴方が来たときのは、ちゃんと話したんだけれど……」
「言っておかなきゃ駄目だよ。僕は梓の常連なんだから。店の人なんかから聞いたりするよりは、君から教えておいた方がいいと思うよ」
「本当に××さんは、梓さんとは長い付き合いなのよねえ。私なんか出る幕ないわ」
「うん、長いんだよ。そんじょそこらの長さじゃあないよ。でも、君も素晴らしい女だよ」
「ありがとう。そんなこと言われたの、初めて」
 翌月の店のミーティングで、店長が、由美は指名が急に伸びた、と皆の前で褒めた。二月という比較的暇な月なのに、由美は本指名の数が三十本に達して、二、三ヶ月前より本指名が十本以上伸びていた。
 ミーティングの後で梓は、由美に「あんた、その内四本は××さんなんでしょ?」と囁いた。その話を私は両人から聞いた。梓に冷やかされたことを語る時、由美の笑顔がとても輝いていた。

 由美に続く。
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(千戸拾倍 著)